【ぶら美】京都・智積院の名宝④【仏教美術・東アジアの名品】

ぶらぶら美術・博物館

2023年1月10日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#424 寺外不出の国宝・重文!「京都・智積院の名宝」~長谷川等伯一門が描いた国宝障壁画ほか、多彩な名宝を一挙公開!~】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

こちらのページでは展覧会の『第3章 学山智山の仏教美術』と『第4章 東アジアの名品集う寺』の展示についてまとめていきます。

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第3章 学山智山の仏教美術

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

智積院は学問に優れた寺院であることから「学山智山(がくさんちさん)」という呼ばれ方をします。
そんな「学山智山」ならではの智積院に伝わる仏教美術についてまとめていきます。

国宝《金剛経》張即之

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらは智積院に伝わる書の名品、国宝《金剛経》です。
この書を書いたのは張即之(ちょうそくし、1186~1266)という、中国・南宋時代の活躍した書家です。

智積院に伝わるこちらの《金剛経》は、張即之が自身の母親の菩提を弔うために自ら写したものです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

一つの文字の中に、力強い太い線と繊細な細い線が共存しています。
これが張即之の文字の特徴であり、この《金剛経》が国宝に指定される所以なのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

それでいて文字のバランスが崩れていることもありません。
最初から最後まで集中力を切らすことなく書き切っているのがわかります。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

もともと『金剛経』というお経自体は禅宗で重んじるものです。
ですので真言宗のお寺である智積院に残っているの不思議な感じがします。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

元々こちらの《金剛経》は智積院の7代目住職・運敞(うんしょう)という僧侶が所有していました。
その運敞には禅宗の僧侶の友人がたくさんおり、その関係で智積院には様々な宗派の僧侶が出入りしていました。

その結果、智積院は真言宗の寺院でありながらも、宗派にとらわれず、「仏教」という学問に通じる場所になったのです。

《童子経曼荼羅図》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

続いては重要文化財の少し変わった曼荼羅です。

童子経曼荼羅図(どうじきょうまんだらず)》という作品で、密教の儀式の一つ「童子経法」の本尊として使われたと考えられています。
「童子経法」とは子供を病気から守り、安産祈願する目的のものです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

鎌倉時代の作品ですが、ここまでしっかり色彩が残っているのは非常に珍しく、たいへん貴重な作品です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

中央に大きく描かれているのは、栴檀乾闥婆(せんだんけんだつば)と呼ばれる仏様で、疫病や病を懲らしめる役割を持っています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

栴檀乾闥婆の衣服は金箔の上に白や朱色で細かい書き込みがされていますが、これは平安時代の仏画の技法です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

”15の鬼”が病気を持ってくるのですが、栴檀乾闥婆はそれら病から子どもたちを守ってくれるのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

そしてその”鬼”というのが、周りに描かれた動物たちなのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

それぞれの動物(=鬼)の横にはどういった鬼なのか、それに取りつかれるとどういった病気や症状が出るのか、説明書きが添えられています。

例えばこちらの牛の鬼は、取りつかれると「目が回る」「目まいの症状が出る」と書かれています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

鎌倉時代の作品ですが、今でも字が読めるくらいに綺麗に残っている貴重な作品です。

第4章 東アジアの名品集う寺

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

智積院は江戸幕府と密接な関係があり、中国や朝鮮といった東アジアの国々の作品も多く所蔵しています。

《瀑布図》


《瀑布図》南宋時代、13世紀
重要文化財
智積院蔵

こちらは《瀑布図(ばくふず)》と呼ばれる滝を描いた作品で、中国・南宋時代のものです。
作者が誰かは分かっていません。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

滝の流れのその真横に水の動きを表すように、すーっと線が描かれています。
これは水をたっぷりと含ませた墨で描いてるといいます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

そのまま画面下部に目を移していくと、滝つぼ付近では細い墨の線で水の泡立ちが表現されています。

墨だけで水の動きを表しているのがこの作品のポイントであり、重要文化財に指定されている所以なのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この《瀑布図》のような、岩の質感を表す山水画の技法を「斧劈皴(ふへきしゅん)」といいます。

《蓮舟観音図》徳川綱吉

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらはなんと、徳川五代将軍徳川綱吉が描いた《蓮舟観音図(れんしゅうかんのんず)》という作品です。

綱吉というと『生類憐みの令』を出した将軍ですね!

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

徳川歴代将軍が描いた絵の中でも、最もインパクト且つ有名なのがこちらの《兎図》という作品。
綱吉の父である三代将軍・家光の手によるものです。
(今回の『京都・智積院の名宝』の出品作品ではありません)

なかなか味わい深い作品ですね。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

徳川綱吉は徳川家光の四男にあたる人物です。
(四代将軍の家綱は家光の長男であり、家綱・綱吉は兄弟ということになります)

綱吉は徳川家に仕える狩野派の絵師から絵の手ほどきを受けていたといわれています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

『蓮舟観音図』という画題は、水面に浮かんだ蓮の上に観音様がたたずんでいる姿を描いたものです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

丁寧に描かれた観音様の表情や、髪から伸びる布の翻りの表現が見事です。

今回の記事はここまでになります。

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