2021年4月25日にNHKで放送された「日曜美術館」の【美人画の神髄〜歌麿の技の錦絵〜】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
『当時三美人』
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
喜多川歌麿と版元の蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)のゴールデンコンビが生み出した傑作、『当時三美人』。
この作品では、江戸の町で評判だった3人の美人が描かれています。
「ちょっと見ただけじゃ違いが分からない」という方もいると思いますが、微妙に各人描き分けられています。一人一人見ていきましょう。
中央に描かれているには、浄瑠璃の富本節の名取の豊(とよ)ひな。
つぶらな瞳に通った鼻筋が特徴です。
少し開いた口元は、まるでこれから話しかけるようです。
右に描かれているには、水茶屋(今の喫茶店)の「難波屋(なにわや)」の看板娘のおきた。
豊ひなに比べると、少し鼻が高く、目も切れ長な印象です。
左に描かれているのは、おきたと同じく水茶屋の評判娘の高島おひさ。
顔はややほっそりとして、すっきりとした目鼻が特徴です。
三人の顔は一見同じように見えますが、微妙に特徴が描き分けられているのです。
歌麿は3人一緒のもの以外にも、ソロショットも描いています。
こちらは高島おひさを描いたものです。
うちわを手に、振り向いたポーズを取っています。
この頃、まだ数えで17歳だったそう。
今でいうアイドルみたいな感じだったんでしょうね!
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらはおきたのソロショット。
水茶屋の娘らしく、お茶を持ち運んで振り向くポーズを取っています。
歌麿の絵はたちまち評判になり、モデルの娘見たさに水茶屋は大繁盛したとか。
大和文華館館長の浅野秀剛氏は、「歌麿は美人画も似顔絵にしようとしたのが、画期的だった」と言います。
この新しい試みは、当時の江戸の人々を驚かせました。
また、歌麿は三人の顔付きの違いは表現していますが、個性までは描き分けていないと浅野氏はいいます。
そんな歌麿は自分の考えを次のように残しています。
「似ていれば良いというものではない。そのことを理解するべき。(それよりも)美しくなければいけない」。
いわばこれは「歌麿の哲学」なのです。
「青楼の画家」としての歌麿
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
江戸時代、吉原は唯一の幕府公認の遊郭でした。
その賑わいはたいへんなもので、一日に千両(今の一億円以上!)のお金が落ちたといいます。
歌麿は吉原に足繫く通い、遊女たちのリアルな姿を描きました。
そこから「青楼(吉原の意)の画家」と呼ばれるようになります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
歌麿は遊女たちの表の顔だけでなく、日々の暮らしの様子、いわば裏の顔までをも描きました。
青楼十二時 続 未ノ刻
タイトルにある未の刻(ひつじのこく)は、お昼過ぎ、午後2時ごろを指します。
早い時間ですので客もおらず、遊女たちはくつろいだ様子です。
真ん中の女性はまだ若く、位の低い遊女で、「振袖新造(ふりそでしんぞう)」といいます。
右側にいるのは見習いの少女「禿(かむろ)」です。
中央の振袖新造が禿の手相を見ているのです。
一方、左側にいる上級の遊女「花魁(おいらん)」は何をしているのかというと、画面の外にいる人に占ってもらっている最中なのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
よく見ると花魁の前には、筮竹(ぜいちく)と呼ばれる占いに用いる竹の棒や、御礼のおひねりが置かれています。
青楼十二時 続 戌ノ刻
こちらは午後8時頃。
店先で客を待つ花魁が長い手紙をしたためながら、見習いの少女である禿に、なにやら耳打ちをしています。
膝立ちし、小首をかしげる禿のその仕草は、あどけなさが感じられ、なんとも可愛らしく描かれています。
青楼十二時 続 丑ノ刻
今度は真夜中、午前2時頃。
客が眠りについた床を立って、寝巻姿の遊女がお手洗いに行くところです。
眠たそうな顔なのか、もの悲しさの表情なのか、うつむき加減の遊女。
左側の屏風の後ろに床が敷かれ、そこに男性客がいるのが想像できます。
右手に懐紙を、左手に明かりを持って、足元の草履を探しています。
青楼十二時 続 寅ノ刻
この作品の時間帯は夜明け前の午前4時頃。
二人の遊女が火鉢のそばで話し込んでいます。
右側の女性がまとっている羽織は、そのサイズ感から男性物に見えます。お客のものでしょうか?
お客の噂話でもしているのでしょう、二人の表情はどこか楽し気です。
大和文華館館長 浅野氏の考察
『青楼十二時』で歌麿は、その時間時間で起こる日々の様子を描き分けました。
これは画期的な試みでした。
歌麿くらいの絵師になると、吉原には客としてではなくても入る事はできたと推察できるといいます。
そういった状況で歌麿は、遊女の一挙手一投足を細かく観察し、この『青楼十二時』というシリーズを描いたのです。
寄辻君恋
歌麿は、憧れの存在の吉原の花魁だけではなく、道端で客を引く遊女の姿まで描いています。
こちらは「夜鷹(よたか)」と呼ばれる最下層の遊女。
夜な夜な町の辻に立って客を引き、なんと敷物一枚で男性客の相手をしていたといいます。
黒い着物をまとい、手ぬぐいの端をくわえています。
「夜鷹」は悲惨な境遇ともいえる存在ですが、歌麿の絵からは品の良ささえ感じられます。
北国五色墨 川岸
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらの遊女はなかなか迫力のある風貌です。
描かれているのは、吉原でも堀沿いの小さな見世にいる下級の遊女です。
着物がはだけていますが、「そんなのお構いなし」といった表情で、ワイルドに爪楊枝をくわえています。
その表情はふてぶてしさえ感じられます。
日本画家の宮崎優さんはこの作品について、「か弱さとか儚さは感じられない。すごくたくましく見える」と言います。
そう見えるポイントとして、宮崎さんは女性の眉を指摘しています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
もしこのように眉を隠してしまうと、少々表情が和らいだ印象になります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この眉毛が描かれることで、”強さ”や”たくましさ”がより強調されているのです。
「本当にここの目元から、強い生命力を感じる」(宮崎氏)
歌麿は、華やかな花魁の世界で生きる遊女から、どん底の環境の中でもたくましく生きている女性まで、当時の様々な環境を生きる女性の魅力を全て引き出して、作品にしているのです。
今回の記事はここまでになります。
パート3へと続きます。
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