【新美の巨人たち】ヴァージナルの前に座る若い女性②【美術番組まとめ】

新美の巨人たち

2020年9月5日にテレビ東京にて放送された「新美の巨人たち」の【フェルメール『ヴァージナルの前に座る若い女性』】の回をまとめました。

今回の記事はパート2になります。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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フェルメール・センター

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

フェルメールの暮らした街、デルフトには「フェルメール・センター」と呼ばれる施設があります。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

ここにはフェルメール全作品の原寸大レプリカが一堂に展示されています。

夢のような空間ですね!
国立西洋美術館所蔵の《聖プラクセディス》もちゃんとありますね。

カメラ・オブスクラ

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

ここにはフェルメールが制作の際に使用したといわれる「カメラ・オブスクラ」の模型も展示されています。
カメラ・オブスクラ」とはレンズのついた暗い箱です。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

レンズを通して風景が手前のすりガラスに写り、レンズをずらすとピントが移動するようになっています。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

鏡の反射を利用しているので、見える画像は左右が反対になるのが特徴です。
フェルメールは当時の最先端だったこの「カメラ・オブスクラ」を使って、遠近感や光の見え方を研究したと言われています。

画像出展元:ホームページ「コクヨの公式 ONLINE SHOP SHOWCASE」より

文房具や事務用品でお馴染みの、コクヨ株式会社さんから”カメラ・オブスクラ”の模型が販売されています。

簡易版模型キットですが、当時と同じ構造で作られており、本格的な見え方や原理を体感することができます。

(*画像出展元のリンクから購入できます(アフィリエイトじゃないのでご安心ください笑))

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

この模型キットを通して見たものがこちらになります。

フェルメール作品の雰囲気になっていますね。

肉眼で見るのと比べて、対象物にピントが合い、後ろの背景がぼやける事で、柔らかな光の印象になっています。

《地理学者》と《天文学者》

フェルメール作品といえば、《ヴァージナル前に座る若い女性》のように「女の人が一人(ないしは二人)で部屋の中にいる様子」というのを連想する人も多いと思います。

しかし彼の作品の中に、2枚だけ男性一人が描かれている作品があります。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

それが《天文学者》と《地理学者》です。
じつはこの2つの作品には、モデルと考えられている人物がいます。


それが科学者の、アントニ・ファン・レーウェンフックです。
フェルメールと同時代(同い年で生まれた月も一緒!!)で、また同じデルフトの地に生まれました。

レーウェンフックは布地を扱う仕事の傍ら、ガラス玉を作って磨くことで球形レンズを作成しました。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

そこから高性能の単眼式顕微鏡を作り、1674年には世界で初めて微生物を発見します。
当時はまだ細菌やウイルスという概念すらない時代でした。

フェルメールレーウェンフック、この二人に交流があった事を示す確かな記録は残されていません。
しかしレーウェンフックは43歳の若さで亡くなったフェルメールの遺産管財人となった記録が残されている事から、何らかの交流があった事が推測されます。

対となる作品《ヴァージナルの前に立つ女》

天文学者》と《地理学者》が描かれたのは、1668-69年頃です。


ヴァージナル前に座る若い女性》が描かれたのは、この2枚が描かれた後の、1670-72年頃です。
構図やモチーフは、それまでの自身の作品を踏襲したものですが、一点大きく異なる点があります。


それが左側の窓にカーテンが引かれている点です。


《ヴァージナル前に立つ女(Lady Standing at a Virginal)》1670-1672年頃
ヨハネス・フェルメール
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵

じつはこの《ヴァージナル前に座る若い女性》には対となる作品があり、ロンドン・ナショナル・ギャラリーへ行くと、こちらの《ヴァージナルの前に立つ女》と2枚が並べて展示されています。

こちらの《ヴァージナルの前に立つ女》はフェルメールらしい明るい光に包まれた、いわば典型的なフェルメール作品といえます。
白い壁を背景に、キューピッドの絵の黒い額縁とヴァージナルの蓋の黒い輪郭を浮かび上がらせて、光の鮮やかさを効果的に演出しています。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

2枚を比較してみると、モデルは違う人物のようですが、衣装の袖の部分はよく似ています。

また各所が対になっているのが見て取れます。
画面の明るさは、立つ女》の方が”明”座る若い女性》の方が”暗”となる一方、顔の明るさは立つ女》の方が陰っていますが、座る若い女性》の方は明るい光が当たっています


それぞれの画中画も対照的です。
立つ女》の方はキューピッドが描かれていますが、これは「純愛」をイメージさせます。


一方《座る若い女性》の方は、『取り持ち女』という主題の絵がかけられていますが、これは「売春宿」の光景を描いたものなのです。


《取り持ち女》1622年
ディルク・ファン・バビューレン
ボストン美術館蔵

この画中画は実在するもので、フェルメールより一昔前の画家、バビューレンというオランダ人の画家が描いたものです。

立つ女》はどこか”純愛”のようなものを彷彿とさせる一方で、《座る若い女性》は”男女の火遊び”のようなものを表していると見る事ができるのです。

晩年のフェルメール

国立西洋美術館の主任研究員の川瀬佑介氏によると、晩年のフェルメール自ら作り上げてきたスタイルを打ち破り、新しい世界を目指していたのかもれないといいます。
ヴァージナル前に座る若い女性》はその第一歩だったのかもしれないといいます。

窓のブラインドが下ろされて、おそらく何か人口の光源によって、画面全体がボワーと柔らかく照らされています。
フェルメールはこの作品で注がれる光ではなく、生まれてくる光を描いたのかもしれません

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

レーウェンフックが微生物を発見した翌年の1675年、フェルメールは43年という短すぎる生涯に幕を降ろしました。

彼がもう少し生きていたら、《ヴァージナル前に座る若い女性》の向こう側、私たちの知らないフェルメール作品を見る事ができたかもしれないと思うと、残念でなりません。

今回の記事は以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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