【新美の巨人たち】ヴァージナルの前に座る若い女性①【美術番組まとめ】

新美の巨人たち

2020年9月5日にテレビ東京にて放送された「新美の巨人たち」の【フェルメール『ヴァージナルの前に座る若い女性』】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

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イントロダクション

光の魔術師」と呼ばれる画家、ヨハネス・フェルメール(1632-1675)。
今から400年前のオランダの町・デルフトで生涯を過ごしました。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

43年間の生涯で残した作品は30数点
今回取り上げる《ヴァージナルの前に座る若い女性》は、その中でも最晩年に描かれた謎めいた一枚です


《ヴァージナル前に座る若い女性》1670-72年
ヨハネス・フェルメール
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵

薄暗い部屋の中で、女性がピアノのような楽器を弾いています。
突然の訪問者に驚いたのか、嬉しかったのか。
その手を止めてじっとこちらを見つめています。

黄色のスカートの鮮やかさや、青い衣装の柔らかさまで、その質感を見事に描ききっています。
細部まで緻密に、丁寧に描かれており、その構図もフェルメールらしさに溢れています。


しかしこの作品には、それまでのフェルメール作品とは決定的に違う箇所があります。
それはお馴染みの画面左側の窓
いつもですと、この窓から室内に柔らかい光が射しこみますが、この作品では閉じられています

そんな暗い室内にもかかわらず、女性の顔は輝いて見えます。

フェルメールの生きた時代

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

フェルメールが生涯を過ごしたデルフトは、「オランダの真珠」と呼ばれる美しい町です。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

この街の500メートル四方の中で、フェルメールは生まれ、結婚し子どもを育て、亡くなりました。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

彼の生家は街の中心であるマルクト広場の裏手にあった「空飛ぶキツネ亭」という宿屋兼酒場でした。

フェルメールが20歳の時に、資産家の娘のカタリーナと結婚しています。
二人の間には11人の子どもがいました。
妻の実家で暮らしながら、そこで絵の制作に励みました。

フェルメールがこの作品を描いたのは40歳頃と考えられており、43歳で亡くなる彼の一番最後に完成された作品ではないかと言われています。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展

本日取り上げる作品《ヴァージナル前に座る若い女性》は、2020年10月18日まで東京・上野の国立西洋美術館で開催されている(この後大阪に巡回予定)「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」で来日しています。

出品作品の61点すべてが日本初公開です。
その中にはイタリア・ルネサンス絵画からフランス近代絵画の名品まで、西洋美術を代表する巨匠たちの作品が一堂に会しています。

描かれているモチーフ

それでは、ここから《ヴァージナル前に座る若い女性》に描かれているモチーフを見ていきましょう。


先ずはタイトルにも入っている「ヴァージナル(virginal)」です。
チェンバロの一種で、一説にはその語源は”ヴァージン”とされ、「純愛の象徴」とも言われています。

では、ここでヴァージナルの実際の音色を聴いてみましょう。

「ブリューゲル展」で古楽器を演奏


そのヴァージナルの横、画面左端に見えるのは、ビオラ・ダ・ガンバという楽器です。
せっかくですので、ビオラ・ダ・ガンバの音色も聴いてみましょう。

ビオラ・ダ・ガンバでバッハ 小池香織さん

実際の楽器の音色を聴いてから、作品を見ると、また違った印象になりますね。

フェルメールもこの音色を聴きながら、この作品を描いていたのかと思うと、一気に作品との距離が縮まった気持ちになります。

フェルメールの技巧


《牛乳を注ぐ女》1658-60年頃
ヨハネス・フェルメール
アムステルダム国立美術館蔵

こちらはフェルメールの代表作《牛乳を注ぐ女》です。
描かれているのは、王侯貴族の女性でなければ、聖書の登場人物、神話の女神でもありません。
市井の人が、質素な室内の中でただミルクを注いでいる、ただそれだけです。

何気ない日常の風景のこの作品に、フェルメールは驚異の技巧を発揮しました。

ポワンティエ

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

ミルクの入った容器の縁や、カゴの取っ手やその中のパンに用いられているのが、「ポワンティエ」と呼ばれる技法です。

点描で表された絵具が生み出すその質感は、まるで本物のような輝きを放っています。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

ウェット・イン・ウェット

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

女性の白い頭巾の部分には、「ウェット・イン・ウェット」という技法が使われています。
この部分はよく見ると筆の跡が残っているのが分かります。

これは塗られた絵具が乾かないうちに、更に別の絵具を重ねることで、細かい凹凸が生じて光が複雑に反射する効果をもたらしているのです。

今回の記事は一旦ここまでです。
パート2へと続きます。
こちら☚からご覧いただけます。

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