2021年4月11日にNHKで放送された「日曜美術館」の【生中継!“鳥獣戯画展”スペシャル内覧会】の回をまとめました。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
イントロダクション
2021年4月13日から5月30日まで東京国立博物館・平成館で開催の『特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」』。
4月11日放送の日曜美術館では、”テレビスペシャル内覧会”と題して、開幕より一足早く、展覧会の様子が紹介されましたので、その内容をまとめていきます。
国宝『鳥獣戯画』の背景
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
『鳥獣戯画』は京都の栂尾(とがのお)の高山寺(こうさんじ)に所蔵されています。
日本最古の茶園がある他、数多くの国宝・重要文化財を所蔵している事でも知られる、歴史あるお寺です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
創建は奈良時代と伝わっていますが、鎌倉時代にこの寺を再興した明恵上人が実質的な開基(創立者)とされています。
明恵上人は和歌が得意で、動物や草木をこよなく愛したと伝わっています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
明恵上人は自身の夢を記録した『夢記(ゆめのき)』を書いたことでも有名です。
今回の「鳥獣戯画展」にはこちらの『夢記』も展示されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
『鳥獣戯画』は全部で四巻あり、それぞれ甲巻(こうかん)、乙巻(おつかん)、丙巻(へいかん)、丁巻(ていかん)と呼ばれています。
四巻開いた総全長は約44メートルに及びます。
『鳥獣戯画』の作者は分かっていませんが、平安時代から鎌倉時代にかけて描かれたと言われています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
私たちが『鳥獣戯画』と聞いて思い浮かべるウサギやカエルの場面は甲巻に描かれているもので、他の三巻には登場しません。
今回の『特別展「国宝 鳥獣戯画のすべて」』がこれまでの展覧会とは違うのは、四巻全て、絵巻を最初から最後まで開いた状態で展示されることです。これは史上初の試みだといいます。
『鳥獣戯画』甲巻
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
今回の展覧会で新たに導入されたものがあります。
それがこちらの「動く歩道」です。
秒速10センチメートルで動くこちらの歩道に乗って、甲巻は鑑賞する形になります。
『鳥獣戯画』が他の絵巻と異なっている点、それは2点あるといいます。
一つは通常の絵巻には、詞書(ことばがき)という物語の筋や内容を説明した文章があります。しかし『鳥獣戯画』にはその詞書がありません。
もう一つは白描画(はくびょうが)と言い、彩色がなく墨の線のみで描かれている点です。
色をつける事で、より分かりやすく、より上手く見せる事ができますが、それをやらずに線だけの描写でこれだけ見る人を惹きつける『鳥獣戯画』はやはり特別な絵巻物といえます。
『鳥獣戯画』乙巻
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
甲巻以外の乙巻、丙巻、丁巻も絵巻をすべて広げた状態で展示されています。
(*こちらには動く歩道はありません)
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
乙巻を楽しむためのワンポイントキーワードが、こちらになります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
「平安時代の動物図鑑」
乙巻は、甲巻と打って変わって、動物たちが擬人化されず、動物本来の姿で描かれています。
絵巻前半は身近にいる動物が描かれ、後半からは異国の動物や空想上の霊獣が登場します。
それでは、その乙巻を詳しくみていきましょう。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
乙巻の最初は馬の群れから始まります。
動物は動物らしく描かれているのが、乙巻の特徴です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
枯れ木に鷹がとまっています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
鷹の次には犬が描かれます。そのポージングも、普通に座る犬から、振り返っている犬など様々です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
喧嘩したり取っ組み合いをしている犬もいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
犬の次はニワトリです。
犬との比率を比べると、だいぶ巨大化している感じがしますね。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
次の水辺のシーンからガラッと変わり、ここから空想上の生き物が登場します。
まず見えてきたのは玄武です。
玄武は北を守護する四神の一つとして知られています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
玄武の次に登場したのは麒麟です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
続いては、当時日本にはいなかった動物が登場します。ヒョウとヤギです。
ヤギも当時は日本にいなかったんですね~
見ている人が海を越えて、異国を旅するようなイメージなのかもしれません。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
今度はトラが登場します。
こちらはトラの一家でしょうか。子トラは非常に可愛らしい表現になっています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
続いては唐獅子です。
狩野永徳の《唐獅子図屛風》でお馴染みの神獣です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
唐獅子の次は龍、そして白象と続きます。
龍と唐獅子は想像上の動物ですが、白象は実際にいる動物です。
「ゾウは確か日本には足利時代に初めてやってきて、江戸時代にも輸入されたりとかしています。
長崎に着いたゾウが、江戸までずっと歩いて旅をしたことがあるっていう話もあって、その時に人々は寄ってたかって見に行ったらしいんですけれども。(鳥獣戯画が描かれた)この時代とのまた数百年後にこんなことが起こったんだな、と思って」(片岡氏)
『鳥獣戯画』が描かれた平安~鎌倉期は、日本人にとって、ゾウは実物の存在ではなかったのです。
ですので、この白象はおそらく中国から伝わった図像などを元に描かれたのだと考えられます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ゾウの次の動物で、乙巻は終わりです。
最後の動物は夢と食べると言われる獏(ばく)、伝説の生き物です。
もしかすると、乙巻は夢の世界で「ここで夢が終わる」という意味かもしれません。
>>全解説:『鳥獣戯画』丙巻
コメント
[…] 今回の記事はパート2になります。 前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。 […]