2020年7月14日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#352 ぶらぶらプロデュース!夢の特別展④~世界の美術館を旅しよう!山田五郎「もう絶対、日本に来ない名画」展~】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
イントロダクション
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今回は山田五郎さんの解説で放送された「もう絶対!日本に来ない西洋名画展」、こちらをまとめていきます。
「日本に来ない」と聞くと寂しい感じもしますが、言い換えれば「現地に行かないと見られない世界の名画」とも言えるでしょう。
来日しない・できない理由は様々あります。
例えば、教会の壁に描かれているのでそもそも持ち運びができないといったものから、あるいはルネサンス期の絵画ですと、木の板に描かれているものが多く、湿度変化により板が伸び縮みして絵具が割れてしまう恐れがあるというのも理由としてあげられます。
今回はそういった名画をご紹介し、「世界の美術館を旅行している気分」を味わえる内容になっています。
ルネサンスの名画
まずは「ルネサンスの名画」から見てまいりましょう。
中世では、古代ギリシャやそれを踏襲したローマの遺跡の発掘がされるようになります。
それらを見た中世の人たちは、古代にリアルな人体表現が存在したことに気づくのです。
その文化、すなわち「古代の文化を復興させよう!」というのが”ルネサンス”なのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ですので”ルネサンス”は「古代復興」と訳されます。
しかし山田五郎さんによると、ただ復興しただけではなく、古代ギリシャ・ローマ文化とキリスト教の世界観が融合したという点が一番のポイントだといいます。
ルネサンスの画家といえば、レオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロ、ラファエロなどの芸術家が良く知られています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この3人を合わせて「ルネサンス三大巨匠」と呼ばれ、彼らが活躍した時期は”盛期ルネサンス”と言われます。
レオナルドとミケランジェロはフィレンツェの出身です。
そしてラファエロはウルビーノの生まれでしたが、フィレンツェで活動して、そこからローマに行きました。
ルネサンスは14世紀から16世紀の初めにかけて起こった芸術運動ですが、この3人が生まれたのは15世紀の後半になります。
つまり”盛期”というよりも”ルネサンスのフィナーレ”を飾った三人と言えるのです。
では、フィナーレではなく本当の意味でのルネサンスのピークの時に活躍したのが誰だったのでしょう?
それが次の作品を描いた画家です。
《春(プリマヴェーラ)》ボッティチェリ
《春(プリマヴェーラ)》1480年
サンドロ・ボッティチェリ
ウフィツィ美術館蔵
それがこの作品を描いたサンドロ・ボッティチェリ(Sandro Botticelli、1445?-1510)です。
ボッティチェリは画家であり彫刻家でもあったヴェロッキオとコラボして作品を制作したりしていました(ボッティチェリがヴェロッキオの弟子だったいう説もあります)。
ちなみにレオナルド・ダ・ヴィンチはヴェロッキオの弟子でした。
では、この《春(プリマヴェーラ)》という作品は何を描いているのでしょうか。
そのヒントとなるのが、画面上部にいるクピド(英語読みだとキューピッド)です。
クピドはローマ神話に登場する愛の神で、弓矢を持っているのがその特徴です。
ここでちょっと余談ですが、「クピド(キューピッド)」と「天使(エンジェル)」は実は全く異なる存在です。
クピドはローマ神話に登場する”愛の神”ですが、天使は天界からやって来る”神の使い”なのです。
クピドと天使の見分け方は、弓矢を持っているのが「クピド」という事になります。
ちなみにこの弓矢はよく”恋心を芽生えさせるモチーフ”として表現されますが、それは金の矢の場合のみで、2種類あるもう片方の”鉛の矢”を放つと、当たった相手は金の矢とは反対の”憎悪の気持ち”を持ってしまうのです。
鉛の矢、怖いですね~(笑)
そしてそのクピドは美の女神であるヴィーナスの子どもなのです。
つまりクピドがいて、その近くに女の人が描かれていた場合は”ヴィーナス”という事になるのです。
つまりこの中央の女性はヴィーナスなのです。
そしてここで描かれているのは「神話の世界」という事になります。
ヴィーナスの横に描かれているのは、三人の女性は三美神と呼ばれる神様です。
左から順に「愛」「貞淑(ていしゅく)」「美」を表しています。
三美神を描く際に、それぞれの女神の顔を前・横・後ろとそれぞれ違う方向から描くことができる、という理由から西洋絵画には人気のモチーフでした。
画面一番右に見えるのが、西風の神ゼフィロスです。
風の神様という事で、どことなく日本の風神雷神の風神を彷彿とさせます。
そしてそのゼフィロスが手を伸ばしている相手というのが、木の妖精クロリスです。
その隣が花の女神のフローラです。
つまりこの絵では「春の風が吹いてきて、木の妖精が風を吹きかけられると、花が咲く」というのを表しているのです。
この作品は教科書にも載るような有名な絵ですが、その理由は「それまでキリスト教の宗教画しかなかったのに、古代ギリシャ・ローマ神話を題材にした絵が描かれるようになった」からなのです。
しかし、山田五郎さんは「これは単なる古典復興(の作品)ではない」と言います。
それはこちらの女性です。
お腹の所を見ますと妊娠しているように見えます。
これには「春の訪れ」や「実りの季節」という事を表しているという説があります。
しかしヴィーナスだと言われていますが、マリア様に見えなくもないのです。
これこそが、キリスト教的な世界観と古代ギリシャ・ローマ文化の融合であり、この作品では聖母マリアとヴィーナスの融合なのです。
《ヴィーナスの誕生》ボッティチェリ
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらも同じくボッティチェリの作品《ヴィーナスの誕生》です。
この作品でも《春(プリマヴェーラ)》と同じ、西風の神ゼフィロスが描かれています。
そのゼフィロスと一緒に描かれてるのも、同じ木の妖精クロリスだと考えられます。
右側に描かれているのは、春の女神のホーラです。
この神様は《春(プリマヴェーラ)》で描かれていた花の女神のフローラに対応すると言います。
つまりこの《ヴィーナスの誕生》も「春が訪れてヴィーナスが誕生した」というのを表しているのです。
では《ヴィーナスの誕生》の中で、”この女性がヴィーナスだ”と分かるモチーフはなんでしょう?
それがこの「貝殻」です。
ヴィーナスは貝殻から生まれたとされているので、ここからヴィーナスだと分かるのです。
どうして恥じらっているのか?
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ヴィーナスは美の女神です。
また古代ギリシャ・ローマ文化は「人間の体は美しい」として、多くの堂々とした格好の裸の彫刻が作られました。
ですので、「古典復興」とするならばこのヴィーナスも古代ギリシャ・ローマ文化のように堂々と立っていても良いはずなのです。
しかし、このヴィーナスはどこか恥じらいのあるポーズをしています。
この裸を恥じらうのは、アダムとイヴのイヴに着想を得ていると山田五郎さんは言います。
つまり、《春(プリマヴェーラ)》に聖母マリアが投影されたのと同じく、この《ヴィーナスの誕生》にはイヴが投影されているのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
となると、この2つの作品が対の関係にもなり、「もしかしたらそういう含みも込められていたのでは?」と考えられるのです。
よくルネサンスといえば「古典復興」と言われますが、実際に描かれている絵画はほとんどキリスト教の宗教画の世界なのです。
ルネサンスのポイントは、古代ギリシャ・ローマ文化の人体表現をキリスト教の世界観に落とし込んだという事なのです。
日本に来ない理由
この2つの作品はウフィツィ美術館というフィレンツェにある美術館に所蔵されており、両作品並んで展示されています。
《春(プリマヴェーラ)》は木の板に描かれているため作品の移動が難しいのと、やはりウフィツィ美術館に行って、この目玉の作品がないと来場者をがっかりさせてしまうというのが理由です。
今回の記事はここまでになります。
続くパート2ではレオナルド・ダ・ヴィンチについてまとめていきます。
こちら☜からご覧いただけます。
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