【ぶら美】ビュールレ・コレクション③【ルノワール】

ぶらぶら美術・博物館

2018年4月17日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#266 世界的収集家の慧眼!「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」~ルノワール、モネ、ゴッホ、ピカソ…誰もが知る傑作が勢揃い!~】の回をまとめました。

今回の記事はパート3になります。
前回のパート2はこちら☚からご覧いただけます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

今回の記事では「絵画史上最強の美少女(センター)」、展覧会のメインビジュアルにもなっているルノワールの作品から見てまいります。

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《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》ルノワール


《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》1880年
ピエール=オーギュスト・ルノワール
ビュールレ・コレクション

すごく綺麗な作品ですね!

僕もこの展覧会に実際に足を運び、生でこの作品を見ましたが、実物はより美しかった記憶があります。

番組解説の深谷克典氏によると、特にこの作品は、例えばポスターやカタログの作成の際に色の調整などを行いますが、どうやっても本物と同じような色合いは出せないといいます。
独特な肌の質感や、髪の毛の描写は印刷では出せないだそう。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

モデルになっているのは、裕福な銀行家の令嬢であるイレーヌ・カーン・ダンヴェールというお嬢さんです。
ダンヴェール家には三人の女の子がいましたが、このイレーヌ長女で当時8歳です。

ルノワールに描いてもらうなんて、相当な家柄だろうな~

と今の私たちなら思いますが、実はそうではありません。

この作品が描かれた1880年当時、印象派の知名度は上がってきてはいましたが、画壇の中ではまだ下位の存在でした。
ですので、カーン・ダンヴェール家のような大貴族であれば、ルノワールには注文せず、もっと有名でアカデミックな画家に肖像画を描いてもらう方が普通だったのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

たまたま注文主の妻と親しい美術評論家がルノワールを推薦したので、この肖像画を描くことになったのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ルノワールはこれより以前に《シャルパンティエ夫人と子供たち》という作品で、サロンに入選を果たしていました。
それを機に、当時のセレブの間で「ルノワールいいんじゃない?」という声があがっていたのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ちょうどこの頃から、ルノワールは印象派的な技法だけでなく、古典的な技法も取り入れるようになっていきます
サロンに入選する事を考えた場合、印象派的な描き方だけでは通用しません。よりアカデミックで古典的な描き方をしなければ、サロンでの入選は叶わなかったのです。

この《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》を描いている頃がまさに、印象派から古典寄りな方に方向転換している時期なのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

それが鮮明に分かるのが顔の部分の表現です。
筆跡は残っておらず、滑らかな質感になっています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

一方、手やドレスの表現は、筆跡がくっきりと残る印書派的な描かれ方をしています。


印象派的な技法と古典的技法がミックスされており、その点がルノワールの数ある肖像画作品の中でも群を抜いて素晴らしい理由になります。

顔の角度も説妙です。
真横ではなく、そこから少しこちらを向いたアングルから描いています。

当時8歳のイレーヌですが、作品からは8歳とは思えない品格を感じられます。
その大人っぽさを一番表現できる角度として、ルノワールはこのアングルにしたのかもしれません。

イレーヌの両親は出来栄えの満足しなかった?!


まさに「名画」と呼ぶに相応しいこの作品。
こんな素晴らしい肖像画を描いてもらって、さぞカーン・ダンヴェール家も嬉しかったかと思いきや…

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

イレーヌの両親はこの出来栄えに満足しませんでした
そればかりか、イレーヌ本人も気に入っていなかったといいます。

当時の肖像画というのは、絵の中に社会的なステータスを表すのが普通でした。
この肖像画でいえば、「どれだけお金持ちの令嬢であるか」が伝わるように、背景や着ているもので表現する事が求められました。
そういう部分まで考えて、事前にセッティングして描くのが普通なのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらはそのイレーヌ母親・ルイーズの肖像画です。
当時のいわゆる”正しい肖像画”というのはこのような作品のことをいいます。

正面を向いて、お金持ちであれば「いかにもお金持ち」というのが伝わるようなポーズやモチーフを配します。
写真のようにはっきり、そしてくっきり描いて、プラス”ちょっと盛って”描くのが求められたのです。

これはこれで魔女みたいなので、どうかと思いますが…

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

お母様はこうやってちゃんと描いてもらっているのに、どうして私の絵はこんななの?」と8歳のイレーヌちゃんは思ったのかもしれません。

今の私たちの感覚すると、《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》は素晴らしい作品のように思えますが、当時としては筆跡が残って、ぼやけているような表現が「雑な描き方」と受け取られてしまったのです。

両親からも本人からも不評な作品でしたが、その後もイレーヌの手元に作品は残り、ビュールレ氏はイレーヌ本人から直接購入をしています。

その後のイレーヌ


イレーヌ・カーン・ダンヴェールは19歳で結婚し、二人の子供をもうけます。
しかしその後不倫に走り、別のイタリア人の男性と結婚することになるのです。

この作品だけみるとすごく清楚な印象ですが、大人になってからはなかなか奔放な人生だったようです。

この話はちょっと知りたくなかったな~(笑)

コメント

  1. […] 続くパート3では、今回の展覧会のメインビジュアルにもなっている、ルノワールの《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》についてまとめていきます。 こちら☚からご覧いただけます。 […]

  2. […] 今回の記事はパート4になります。 前回のパート3はこちら☚からご覧いただけます。 […]

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