2021年1月10日にNHKで放送された「日曜美術館」の【李 禹煥(リ・ウファン)わたしと雪舟】の回をまとめました。
今回の記事はパート3になります。
前回のパート2の記事はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
国宝《慧可断臂図》雪舟
国宝《慧可断臂図》室町時代・1496年
雪舟
斉年寺
愛知県・斉年寺蔵
続いてご紹介するのは《慧可断臂図(えかだんぴず)》という作品です。
画面奥で岩壁をじっと見つめるのは、禅宗の始祖・達磨(だるま)です。
その後方には達磨に弟子入りを志願する慧可(えか)の姿があります。
日本絵画でも数多く描かれている達磨ですが、その中でも非常にユニークな描かれ方をしています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
現代美術家の李 禹煥(リ・ウファン)さんは、《慧可断臂図》について、「非常に素晴らしく、圧倒される絵だ」と述べています。
達磨はがっつりと目を開けて岩に向かい、もう一人の慧可は自らの腕を切り落とし、いわくありげにしています。
画面上部の岩の表現は、まるで目玉のような大きな穴があり、こちらを見ているようにも感じられます。
画面全体が気迫に満ちているようです。
パート2で取り上げた《破墨山水図》と比べると、筆の使い方や墨の表現が随分と異なります。
同じ画家として李さんは、《慧可断臂図》は下描きがあり、その上からなぞって描いた、なぞり描きによるものだと考えます。
決して自分の気の向くまま本番に挑んだ作品ではないというのです。
達磨の顔はまるで外国人のように彫りが深く表されています。
また、色の塗り方やひげの描き方はテンペラの技法だと李さんいいます。
ひげの部分も普通の筆では描けないもので、西洋画で使われる硬い毛の筆によるものだそう。
いずれにしても、全体の構図、そして描き方が普通ではなく、気迫があり、綿密であり、それらが組み合わさってできている「恐るべき絵」だといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
学習院大学の島尾新教授は、《慧可断臂図》について、特徴的なのは”達磨の衣の線”だといいます。
まるでマーカーを使って線を引いたかのような、均一な太さで描かれています。
その線を途切れないように、つなぎながら描いているのです。
さらにその太い衣の線の外側には、ぼかしが入っており、これがまるでオーラのように見え、達磨の存在をより不思議なものにしているのです。
しかし、この衣の線の描き方は水墨画のルールから見れば”ルール違反”だといいます。
普通衣の線は細い部分と太い部分とで描き分け、それにより陰影や立体感を表していくのです。
しかしこの達磨はまるでグラフィックデザインのように平面的です。
これは雪舟の”水墨画の常識”に対する反逆であり、また本場の中国でこの線の表現はありえないといいます。
雪舟はいわば線の実験を行い、これまでにない表現を生み出したのです。
そちらの記事もまとめておりますので、是非ご覧ください!
【京都国立博物館】2017年国宝展③【ぶらぶら美術館】
李 禹煥さんのベルサイユ宮殿でのアートプロジェクト
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
70代の時、李さんはベルサイユ宮殿の巨大アートプロジェクトを手掛けました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この作品では白い砂利を敷き詰めて、7つの石を北斗七星のイメージの元、配しました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ベルサイユ宮殿の前に造られた、30メートルのステンレス製のアーチ。
こちらも李さんの作品です。
太陽の光の下、輝きを放っています。
李さんはとある田舎のまっすぐ長い道を歩いているときに、そこに大きな虹がかかっているのを見て、そこから着想を得たといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
このベルサイユ宮殿の前の通りもひたすら真っすぐ長い道が続いている事から、「そういうアーチを掛けたい」と思い制作したのです。
いかがでしたでしょうか。
今回の【李 禹煥(リ・ウファン)わたしと雪舟】の記事はこれで以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!