TOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」内のコーナー【葛飾北斎コーナー】にて取り上げられた作品をまとめました。
今回の記事では2019年6月と7月に取り上げられた内容についてまとめていきます。
番組内容に沿って、それでけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
『富嶽三十六景 相州梅澤左』
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
作品の読み方は「そうしゅううめざわのひだり」です。
「梅澤庄(うめざわのしょう)」もしくは、「梅澤在(うめざわのざい)」とも呼ばれます。
描かれているのは雄大な富士と鶴。
鳥と富士だけが描かれた作品は、富嶽三十六景の中でもこの作品だけです。
日本画の伝統を踏襲した、シンプルな画面構成です。
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
富士も鶴も、日本のシンボル的な存在、また吉兆の象徴でもあります。
ですので、より日本人の琴線に触れやすい作品かもしれません。
青を基調とした色彩にも清々しさを感じられます。
鶴の羽の部分も細かく、丁寧に描かれています。
「北斎の作品は一度見て終わり、というものではありません。名画と言うのは”情報の集積”なんですね。色々と発信してくるのです」(美術監修・藤ひさし先生)
『富嶽三十六景 相州江の島』
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
作品の読み方は「そうしゅうえのしま」です。
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
この作品では人々は歩いて江ノ島に渡っています。
じつは北斎の頃は、干潮の時には片瀬海岸から江ノ島まで歩いて行く事ができました。
フランスのモン・サン=ミシェル修道院みたいな感じですね。
当時から江ノ島は、江戸の人にとって手近な行楽地でした。
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
江の島では弁財天に信仰が集まりました。
芸能・音楽・幸福・財産の神様として、詣でる人が沢山いたといいます。
北斎にしては珍しく、構図をデフォルメすること無く、見たままの情景が描かれています。
今でもここから見る富士の景色は、外国からの観光客に人気のスポットです。
昔も今も”富士と江ノ島”は、文字通り”絵”になるのです。
『富嶽三十六景 相州箱根湖水』
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
作品の読み方は「そうしゅうはこねのこすい」です。
タイトルにある「箱根湖水」は神奈川県足柄下郡に位置する芦ノ湖のことです。
右側の大きな山は、現在ロープウェーがある駒ヶ岳です。
主役である富士山は画面左側に、駒ヶ岳の方が目立つように描かれています。
恐らくこれは北斎が作り上げた風景だと考えられます。
この地域は箱根八里の難所であり、また厳しい検問で有名な関所がある、心身ともに疲弊する場所でした。
そこを越え、解放感に満ちた旅人が目にした風景は、このように穏やかなものだっただろう、という心象風景を北斎は描いたのです。
いわば”厳しくない箱根”を描きたかったので、そこに高くそびえる富士は不釣り合いだと考えたのかもしれません。
穏やかといえば、芦ノ湖の水面はまるで鏡のように静かです。
あの有名な『神奈川沖浪裏』とは、様子が全く異なっています。
あの激しい波を描いた北斎が、さざ波一つないこの絵の湖を描いたというのも面白い点です。
『富嶽三十六景 東都駿臺』
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
作品の読み方は「とうとすんだい(とうとするがだい)」です。
描かれているのは今の神田駿河台(東京都千代田区の町名)です。
北斎の頃は武家屋敷が軒を連ねる場所でした。
行交う人々を見ると、様々な人がいるのが分かります。
北斎は人物一人一人を描き分けているのです
一番右側で、担いだ棒の両端に荷物をかけて運ぶ人は「棒手振り(ぼてふり)」と呼ばれます。
富士は広い空に小さく描かれていますが、この作品を見る人は自然と富士に目が行く構図になっています。
「さりげないなけど、しっかり見せる」
北斎の技量が伺えます。
当時、ここからの富士の眺めの良さは有名で、あの歌川広重もこの辺りから富士を描いているといいます。
その名残として、近くには「富士見坂」という坂も残っています。
今回の記事はここまでになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!