【2021ゴッホ展②】素描作品と《ジャガイモを食べる人々》【ぶら美】

ぶらぶら美術・博物館

2021年11月16日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#391 ゴッホが巨匠になるまでの全て!東京都美術館「ゴッホ展」〜世界最大のゴッホコレクター珠玉の名画が一堂に!傑作〈糸杉〉も!〜】の回をまとめました。

今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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ゴッホの素描作品

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ここからはゴッホが描いた素描の作品についてまとめていきます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

牧師の家庭に生まれたゴッホは、叔父が画商だった縁で、自身も画商として働くようになります。
しかし人付き合いが苦手なゴッホは仕事やプライベートが上手くいかず、結局画商をクビになってしまいます。

その後、父親と同じく牧師を目指しますが、ここでも上手くいきませんでした。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

そこで同じ画商に勤めていた弟のテオが、兄ゴッホに絵を描く事を勧めます。
こうして27歳から絵筆を取るようになります。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

画家を志したゴッホが最初に取り組んだのが、素描・デッサンでした。
それらが一番重要だと考えたゴッホは、最初の3年間素描に集中します。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ゴッホといえば、晩年の激しいタッチや色の絵がよく知られていますが、じつはそこに辿り着くまでには、コツコツと地道に素描に取り組む時代があったのです。
非常に真面目で、努力家の人物なのです。

山田五郎さん曰く、「ここだと思った時の集中力は驚異的な人なんだもん、この人は」。

《コーヒーを飲む老人》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ゴッホが素描で最初に取り組んだのが「人物画」でした。


《コーヒーを飲む老人》1882年11月
フィンセント・ファン・ゴッホ
クレラー=ミュラー美術館蔵

こちらはゴッホ29歳頃、オランダのハーグにいた頃の作品です。
描かれている人物はこの頃のゴッホのお気に入りのモデルで、近所の養老院に住んでいた老人です。

ゴッホは男性にわずかばかりの謝礼を払って、たびたび絵のモデルになってもらっていました。
ゴッホはこうして人物画の練習を独学で重ねていったのです。

しかし基本独学という事で、この作品も人物の描き方は一見上手いように見えますが、おかしなところも色々見受けられます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

例えばこちらの椅子。
遠近感がどこかおかしいです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

男性が手にしているコーヒーカップも立体感がなく平面的です。

さらに人物の周りをよく見てみると、”染み”のようなものが見えます。
じつはこの頃のゴッホ様々な画材や画法を試していた時期でもありました。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

例えば人物の衣服の黒色。
これは鉛筆だけではなく、版画用のクレヨンも使われています。

また鉛筆は描いてそのままだと擦れて色が落ちてしまいます。
そこで定着材というものが最後に使われますが、ゴッホはこの頃、とある本から「牛乳を少しだけ振りかけると定着液になる」ことを学びました。

さらにゴッホは、牛乳をかけることで鉛筆の黒の光沢が増す事も発見します。
それに感動したゴッホは、本で書いてある以上にたくさん牛乳をかけてしまうのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

結果として牛乳をかけすぎてしまい、それが染みのようになってしまったのです。

普通はスプレーみたいにして(定着液)を吹きかけるんだけど、これ染みちゃってるからね。一個気に入ると、そればっかりやる人だから。『牛乳や~』って思ったら…」(山田五郎氏)

《ジャガイモを食べる人々》

今回の展覧会では、一点のみリトグラフ(版画作品)が展示されています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらはゴッホオランダ時代の代表作である《ジャガイモを食べる人々》、その版画版になります。
このように《ジャガイモを食べる人々》はいくつかのバージョンがあります。

ゴッホは複数の人物で構成された絵を自分の代表作のような作品として描きたいと思っており、まず最初に習作として、油彩で《ジャガイモを食べる人々》を描きます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

その油彩版もクレラー=ミュラー美術館に収蔵されています。
(残念ながら今回の展覧会には出展されていません)

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

その油彩画を元にしたリトグラフが今回の展覧会の出展作品です。

さらにその後に、完成作として油彩の第2バージョンの《ジャガイモを食べる人々》を描いています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この第2バージョンの《ジャガイモを食べる人々》はオランダ・アムステルダムのファン・ゴッホ美術館に収蔵されています。

ゴッホは1枚目の油彩習作の《ジャガイモを食べる人々》が完成した時に、「みんなにこの作品を見て欲しい」と思い、版画にして友人に送ったのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

しかしその評判はあまり良くなく、特に画家仲間のアントン・ファン・ラッパルトからの感想は辛らつで、「真面目に描いているのか?」「人物の描写が下手」など散々な言われようでした。

当時はまずは絵というのは先ず写実的で、そして正確に描く事が必須の時代(いわゆる”味のある絵”が認められる前の時代)でしたので、尚更受け入れられなかったのです。

結果的にラッパルトとはそれがきっかけで絶縁状態になります。

まぁゴッホのキャラを考えたらそうなりますね…

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ゴッホはこの《ジャガイモを食べる人々》の人物のような、”人生が刻まれた顔”を好んで描きました。

実際にゴッホは手紙で次のように残しています。
埃だらけの仕事着を着た農民の娘は、淑女よりも美しい

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

民衆のための民衆の絵画を描きたい」「労働の尊さを表現したい
そういった思いからゴッホは絵を描いていくのです。

これについて山田五郎さんは一つ指摘をしています。
それは「そのように描かれる農民本人は嬉しいかどうか」という点です。

ゴッホ本人は良かれと思って努力するのですが、相手がどう思ってるかを分からないんだよ」(山田五郎氏)

ゴッホ自身が農民ではないので、彼の描く農民はあくまで”外からの視点”という事になるのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

そんなゴッホから見た、農民のポイントの一つが「手」だといいます。
ゴツゴツとしたその手は、描かれている農民が、その手で土を掘り、農作物を育て、その手で収穫物を食べるという過程を物語っています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらが《ジャガイモを食べる人々》の完成版になりますが、手はかなりゴツゴツとした印象です。

確かにゴッホの伝えたい事は分かりますが、
これを描かれた方が嬉しいかといえば「う~ん」ですね…

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

結局ゴッホは農民たちとも良い関係を築けず、最終的には「絵のモデルにはならない」と言われてしまいます。

今回の記事は一旦ここまでになります。
パート3へと続きます。
【ぶら美】2021年ゴッホ展③【美術番組まとめ】

コメント

  1. […] 今回の記事はここまでになります。 続くパート2では、ゴッホの素描作品についてまとめていきます。 【ぶら美】2021年ゴッホ展②【美術番組まとめ】 […]

  2. […] 今回の記事はパート3になります。 前回のパート2こちら☚からご覧いただけます。 […]

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