2020年7月21日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#353 三菱一号館美術館「画家が見たこども展」〜かわいいだけじゃない!不思議な世界 ゴッホ、ボナール、ヴァロットンら100点集結!〜】の回をまとめました。
今回の記事はパート3になります。
前回のパート2はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
今回のパート3ではナビ派の中でも特に子沢山で子煩悩だったモーリス・ドニの作品から見てまいります。
《赤いエプロンドレスを着た子ども》モーリス・ドニ
《赤いエプロンドレスを着た子ども》1897年
モーリス・ドニ
個人蔵
一目見て「可愛い」と分かる作品ですね。
女の子が来ているエプロンドレスは当時流行したファッションです。
点描を用いて描かれていますが、この当時点描は画家の間でブームとなっていました。
え、ちょ、18歳⁉( ゚Д゚)w
モーリス・ドニ(Maurice Denis、1870-1943)には9人の子どもがいました。
この《赤いエプロンドレスを着た子ども》では、長女のノエルをモデルにしています。
この作品のような”可愛らしい子どもの描き方”こそがナビ派のもたらした功績なのです。
写実的に描くのではなく、単純化され、ある種キャラクター化してる印象さえ感じます。
結果的に可愛くなったのではなく、「可愛さ」を積極的に受け入れて表現しようとしているのが新しかったのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この作品は絵具の付いている状態がだいぶ弱くなってきているとの事で、展示会場ではこのように平置きにして展示されています。
壁に縦に掛けると絵具が剥離してしまう恐れがあるのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ちなみに三菱一号館美術館の館長の高橋さんはドニ家と交流があるのだそうで、こちらの別荘にも招待されたとか。
《《開いた窓辺の母親》のための習作》モーリス・ドニ
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今回の展覧会はドニが手掛けた3枚の母子像が並んで展示されています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
その中の一枚《《開いた窓辺の母親》のための習作》です。
海が見える開放的な窓の前に、母親が赤ん坊を抱き寄せています。
描かれているのはドニの妻のマルトです。
ドニは熱心なカトリック教徒でした。
その信仰心からか作品にはどことなく聖母子像の雰囲気が漂います。
描かれている場所はブルターニュにある、海辺に面したドニの別荘だと思われます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この作品が描かれた1899年は既にカメラが普及し始めていた頃でした。
ナビ派の画家たちは皆カメラを持って、日常の光景を撮影していました。
その撮影した写真を元にして、スナップ的な構成の画面を作っていったのだと考えられます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今回の展覧会ではボナールとドニが実際に撮影した写真も展示されています。
画家フェリックス・バロットン
フェリックス・ヴァロットン(Félix Edouard Vallotton、1865-1925)はスイス人の画家で、ナビ派にも参加していました。
ピエール・ボナールが”日本かぶれのナビ”と呼ばれたのに対し、フェリックス・ヴァロットンは”外国人のナビ”と呼ばれました。
彼は不思議な印象の作品を残しました。
《ボール》1889年
フェリックス・ヴァロットン
オルセー美術館蔵
*今回の「画家が見たこども展」には出展されていません。
こちらの作品は一見すると、子どもがボールで遊ぶ可愛らしい絵です。
しかしどこか不穏な空気が漂います。
遠くでひそひそ話をする二人の女性。
女の子に迫る怪しげな影。
ヴァロットンのようにスイス出身の画家は、”ちょっと不思議で怖い絵”を描く人が多いようです。
《夕食、ランプの光》1889年
フェリックス・ヴァロットン
オルセー美術館蔵
*今回の「画家が見たこども展」には出展されていません。
こちらの作品では食卓を囲う家族の様子が描かれていますが、どこか不思議な緊張感に満ちています。
《可愛い天使たち》ヴァロットン
《可愛い天使たち》1894年
フェリックス・ヴァロットン
三菱一号館美術館蔵
こちらが今回の展覧会で展示されているヴァロットンの《可愛い天使たち》。
漫画調で一見楽しそうな雰囲気で、上2枚の作品とは違うようにも見えますが・・・
じつはこの作品、おまわりさんが犯人を連行する場面を描いているのです。
そこに無邪気な子供たちが興味本位で集まってきているのです。
子どもたちは声を上げている子やニコニコしている子どもなど様々な表情を見せています。
「犯人が捕まる」という状況を子どもが興味本位で捉える残酷さを、ヴァロットンは皮肉を込めて描いているのです。
この作品では特定の何かを風刺しているわけではないといいます。
「ちょっとした場面の中で、よく見ると裏の意味が含まれている」
ヴァロットンの作品にはそういったものが多いのです。
いかがでしたでしょうか。
今回の記事は以上になります。
次のパート4で「画家が見たこども展」の記事はラストです。
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