【ぶらぶら美術・博物館】「ハマスホイとデンマーク絵画」展④

ぶらぶら美術・博物館

2020年3月3日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#339 東京都美術館「ハマスホイとデンマーク絵画」展〜幸福の国が生んだ巨匠“北欧のフェルメール”その静謐な世界〜】の回をまとめました。
今回の記事はパート4になります。
前回のパート3はこちら☚からご覧いただけます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

今回のパート4では、ハマスホイの妻の兄(義理の兄)にあたるピーダ・イルステズ、そして今回の展覧会の主役の画家、ヴィルヘルム・ハマスホイの作品をまとめていきます。

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《縫物をする少女》イルステズ

デンマークでは19世紀後半に”ヒュゲ”を感じさせる室内画が数多く描かれました。
しかし温かく家庭的な幸福感に満ちたものから、次第に雰囲気が変わっていきます。


《縫物をする少女》1898-1902年
ピーダ・イルステズ
リーベ美術館蔵

こちらの作品、どこか今まで見てきた室内画と雰囲気が違うと思いませんか?
家庭的で温かい雰囲気というよりは、無機質でどこか寂し気な雰囲気を感じます。

描かれているのは窓際の椅子に座る画家の娘の姿です。
そこで彼女が縫物をしているという、愛らしい姿を描いています。

しかしよく見ると、椅子と机には距離があります。
椅子もこの子が座るには少し高すぎるような印象があります。

おそらくイルステズの関心は、この「部屋」そのものにあると考えられます。
そのため生活の一場面としての室内ではなく、子供をモデルとして椅子の上に”配置”し構成を作っているのです。

”ヒュゲ”や”愛らしい我が子”を表現しよういうよりも、”美しい室内”を描きたいという意図を持った作品です。
子供はあくまでその中の”モチーフの一つでしかない”という発想です。

ピーダ・イルステズの他の作品

今回の展覧会ではピーダ・イルステズの作品が《縫物をする少女》を含めて3点展示されていました。
個人的にも好きな作品だなと思ったので、ご紹介させていただきます。


《ピアノに向かう少女》1897年
ピーダ・イルステズ
アロス・オーフース美術館蔵

縫物をする少女》と同じ女の子が、同じ青い服を着てピアノを弾いている作品です。


《アンズダケの下拵えをする若い女性》1892年
ピーダ・イルステズ
デンマーク国立美術館蔵

個人的に今回の「ハマスホイとデンマーク絵画」展で一番好きな作品がこちらでした。
ハマスホイよりも、イルステズの方がフェルメール感が強いなと感じた一枚です。

過去の記事でピーダ・イルステズについて、詳しくまとめていますのでよろしければこちらもご覧ください☟
【美術展レポート】気になった作品【ハマスホイ以外のデンマークの画家】

イルステズハマスホイの親戚(ハマスホイから見て義理の兄)にあたる人物なので、どこか作品にも共通する部分を感じられます。
ただイルステズの作品の方が子供が描かれていたりする事もあり、まだどこか”ヒュゲ”の要素を感じられますが、ハマスホイの作品はここから更に”ヒュゲ感”が無くなっていきます。

では、そんなハマスホイの作品を見てみましょう。

《室内》ハマスホイ

展覧会の第4章は『ヴィルヘルム・ハマスホイ—首都の静寂の中で』と題し、ハマスホイの作品だけで約40点展示されています。


《室内》1898年
ヴィルヘルム・ハマスホイ
スウェーデン国立美術館蔵

これまで見てきたデンマーク絵画、そしてそこで見られた”ヒュゲ”な光景とはまったく異質な世界が描かれています。

描かれている女性はハマスホイの妻のイーダです。
ハマスホイの作品に描かれている女性はほとんどがイーダで、それも後ろ姿がほとんどです。

じつはこの後ろ姿を描くというのが、ハマスホイの作品を見る上で大事になっていきます。
もしモデルが正面を見ていたならば、その表情から様々な物語が想像されます。
しかし後ろ向きだと、そういう物語性を排除して、匿名性を出すことができるのです。
そうする事で時間や個別性を越え、永遠感が出るのです。

ハマスホイの色調はこの作品のように、灰色系の色が使われています。
カラフルな色、原色系の色はあまり見られません。
実際にハマスホイのパレットを見た画家の言葉として、「白と灰色の4つの絵具の塊が載っていた」というのが残されています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

実際に使用していたパレットはデンマークの美術館に収蔵されており、ほとんど白から灰色にかけての色と、わずかな黄色と青が少し確認できる程度です。


この《室内》ではあえて輪郭をぼかして描いています。
粗いタッチではっきりと描かないことで、作品全体に不思議な雰囲気を出しています。


その一方、テーブルクロスのしわの表現は緻密に描かれており上手いです。

くっきり折り目が入って、「今出しました」感が表現されてますね。

このように細かく描くところと、ぼかして描くところのバランスが見事な作品です。

この作品では1897年10月から翌年の5月末まで滞在したロンドンの仮住まいの部屋を舞台に描いています。

《ルーヴル美術館の古代ギリシャのレリーフ》ハマスホイ


《ルーヴル美術館の古代ギリシャのレリーフ》1891年
ヴィルヘルム・ハマスホイ
ニュー・カールスベア彫刻美術館蔵

こちらの作品、一見すると「浮彫りの彫刻作品かな?」なんて思いますよね。
じつはこちらはハマスホイが描いた絵画作品になります。
平面上で彫刻の立体感を表しているのです。

陰影の表現が見事で、ハマスホイの上手さがよく分かる一枚です。
光の捉え方の感覚が卓越しているのです。

この作品も全体的にぼやけたタッチで描いていますが、光の捉え方が的確で、非常にリアルな表現になっています。
ハマスホイが色数をそれほど用いないというのも、逆にそれだけの色の方が光の微妙な違いを表現できると考えたのかもしれません。

今回の記事はここまでになります。
続くパート5がラストになります。
パート5では、ハマスホイの室内画作品を一挙ご紹介します。
こちら☚からご覧いただけます。

コメント

  1. […] 2020年3月3日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#339 東京都美術館「ハマスホイとデンマーク絵画」展〜幸福の国が生んだ巨匠“北欧のフェルメール”その静謐な世界〜】の回をまとめました。 今回の記事はパート5になります。 前回のパート4はこちら☚からご覧いただけます。 […]

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