2023年12月3日にNHKにて放送された「日曜美術館」の【まなざしのヒント 深掘り!浮世絵の見方】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
今回の記事はパート2になります。
この記事では「浮世絵の線」についてまとめていきます。
歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
次に見ていくのはこちらの作品。
歌川広重の《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この作品の見どころは何といっても”雨の表現”です。
線だけで雨の激しさを表しています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
橋の上には裾をまくり家路を急ぐ人々の姿が。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
よく見ると、雨は角度の違う2種類の線で表現されています。
また、角度だけでなく色の濃さも変えられています。
これにより雨にも奥行きが表されているのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
雨の線が少しでも太くなってしまうと、肝心の絵の部分が見づらくなってしまうので、線をできるだけ細く仕上げるのがポイントだといいます。
ではこの雨の線がどのように表現されているのか?
その版木を見てみましょう。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらがその雨の版木です。
浮世絵版画は、線の分を残してその周りを彫っていく(凸版)というものになります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
近くで見るとよく分かりますが、線の部分彫るのではなく、線の部分を残してその周りを彫っているのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
線も一つ一つが長い線ですので、一気に勢いよく彫らないと雨の激しさを表現できません。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
彫刻刀のような小刀を使って、彫り師が丁寧に彫っているのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》では2本の雨の線がありましたが、これらは一つの版木の両面を使っています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
表裏の版木を比較すると、線の太さによって彫り方を変えているのが分かります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
浮世絵の版木はこのように表裏で使われることが多かったといいます。
その理由として挙げられるのが、版木が貴重だったということ。
またコストの部分からも、無駄なく使うということが必要でした。
更には使われなくなった版木は、かんなで表面を削られ、また別の作品の版木として使われたといいます。
歌川国貞《東海道五十三次 白須賀 猫塚》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
それでは彫り師の技術が堪能できる作品を見ていきます。
歌川国貞の《東海道五十三次 白須賀 猫塚》です。
歌舞伎役者の三代目・尾上菊五郎が演じる化け猫です。
鋭い爪や大きな耳が特徴的です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
特に髪の毛の線の表現は彫り師の卓越した技術が見られます。
解説の日野原健司氏によると「1ミリという間の中に3本、4本の線が彫られている」と言います。
まさに超絶技巧ですね!
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
浮世絵版画の彫りの技術で、「毛割(けわり)」と呼ばれる、髪の毛の生え際の部分を彫る技術があります。
この部分をいかに細く彫るかが、彫り師の腕の見せ所でした。
この作品は当時から「すごい技術だ!」と話題になったといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この作品の彫り師は名前が残されています。
小泉巳之吉(こいずみ みのきち)という人物で、通称が「彫巳の(ほりみの)」でした。
さらに驚くべきことに、この作品を彫った当時18歳前後だったといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この作品がすごいのは、先ほどの雨の線と違い、一つ一つの線が曲線になっている部分です。
それらが隣の線と重なることなく、隙間も均等に彫られています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
髪の毛のふわっとした感じを残しながらも、この細さで曲線を彫るというのが、彫り師のテクニックあってこそと言えるのです。
今回の記事はここまでになります。