《Game Changer》と《Dismaland》【パート4】

新美の巨人たち

2020年7月18日にテレビ東京にて放送された「新美の巨人たち」の【「今こそアートのチカラを」⑩ バンクシー「Game Changer」】の回をまとめました。
こちらの記事はパート4、今回のバンクシーの記事のラストになります。
前回のパート3はこちら☚からご覧頂けます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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バンクシー最大の問題作「Dismaland」

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

バンクシー最大の問題作と言われた「Dismaland(ディズマランド)」についてご紹介します。
2015年に約5週間の期間限定でオープンした遊園地と美術展を合わせたような施設です。

「Dismaland(ディズマランド)」という名称は、某夢の国の名称をもじったものであり、さらには「Dismal=陰鬱な」というダブルミーニングが込められています。
この当時のバンクシーの集大成ともいえる作品です。

観客は入場料を払って園内に入ります。
「陰鬱な」という名称の通り、スタッフは皆愛想が全くなく、不機嫌な接客をしていたといいます。
園内には有名アーティストの美術作品やインスタレーションが展示され、観客はさまざまな展示物やアトラクションを見る事ができました。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

夢の国をモチーフにした城の前に置かれたプリンセス。
しかしその姿は幻であると言わんばかりに歪んでいます。

見ているうちに脳みそが混乱してきそうです・・・

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

こちらでは魔法の馬車が事故で転倒。
シンデレラは馬車から身を乗り出し倒れ、そこをパパラッチが囲います。
その様子はまるで「ダイアナ妃の事故死」を連想させます。

「ディズマランド」のテーマは、普通のテーマパークだと忘れさせてくれる”現実”を、あえて観客の眼前に突き付ける事で、自身で考える事を促す目的だったのです。

カゴの中のヒーローたちが表すもの

バンクシーの新作《Game Changer》に話を戻しましょう。
この作品を見た人が一番に気になるもの、それは・・・


カゴの中に無造作に置かれた(あるいは捨てられた?)ヒーローたちではないでしょうか。


おそらく男の子はヒーローの人形でも遊んでいたのでしょう。
しかし、今はそれに飽きて看護師の人形で遊んでおり、ヒーローたちは乱雑な扱いです。

バンクシーがわざわざこのヒーローを描いた意味、それは「結局は飽きてしまえば捨てられる」というメッセージであり、「今は医療従事者を称えてもいずれ忘れてしまう」という強烈な皮肉なのです。

バンクシーは「今の社会のあり方」に我慢がならないのです。
それをバンクシーなりのウィットに富むやり方で表現しているのです。
そして彼の作品を見た人が刺激され、議論が起き、その結果良い社会に向かっていく起爆剤にしようとしているのです。

街中の描かれるグラフィティや、ベツレヘムの分離壁に作品を描くことにもそういう意図があるのです。

《Game Changer》の本当の意味

ナースの人形で無邪気に遊ぶ男の子。
バンクシー本人を知る鈴木沓子氏は、男の子のモデルはイギリスのジョンソン首相だといいます。

画像出展元:テレビ番組「新美の巨人たち」より

ジョンソン首相は国民の熱い支持を受けて、EU離脱を実現した人物です。
しかしその後の支持率は低下の一途をたどっていました。

そんな中2020年3月、新型コロナウイルスに感染して、見えない敵と彼自身が戦う事になります。

手厚い看護を受け無事に生還すると、彼は政策を急転向しました。
これまで予算を削ってきた医療福祉の充実に力を入れるようになったのです

ジョンソン首相自身のコロナの最前線で戦う医療従事者への感謝は本物でしょう。
「しかし今後本当に予算があてがわれていくのか注意して見なければいけない、もしかすると首相もまた、それまで大事にしていたヒーローのように医療の現場を使い捨てしてしまう事になるかもしれないよ」
このようなバンクシーのメッセージが《Game Changer》にはあるといいます。

そしてその問いかけは見ている私たち自身にも突き付けられているのです。

タイトルの《Game Changer》が指すのは描かれている男の子でもなければ、看護師の人形でもないのです。
見る人一人一人が自分にできる事をやっていこう、一人一人がゲーム・チェンジャー(物事の流れを大きく変える人)になる時だよ」と問いかけているのかもしれません。

この《Game Changer》はサウサンプトン総合病院に飾られた後、競売にかけられる事が決まっています。
その売上金は全額、イギリスに医療事業に寄付されます。
バンクシーはその寄付までも含めて自らの作品と考えたのです。

今回の記事は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。

「新美の巨人たち」のこの回以外の記事もアップしています!
こちら☚から一覧をご覧いただけますので、是非ご覧ください(*^-^*)

コメント

  1. […] 今回の記事は以上になります。 続くパート4でラストです。 一体《Game Changer》でバンクシーが伝えたかった事は何なのか、そして彼の最大の問題作である「Dismaland」についてもまとめます。 こちら☚からご覧いただけます。 […]

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