2020年7月12日にNHKで放送された「日曜美術館」の【蔵出し!西洋絵画傑作15選(2)】の回をまとめました。
今回の記事はパート6になります。
前回のパート5はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《夜警》レンブラント
《夜警》1642年
レンブラント・ファン・レイン
アムステルダム国立博物館蔵
こちらも有名な作品ですね。
続いての作品は17世紀のオランダで活躍したレンブラント・ファン・レインの代表作《夜警》です。
この時代のオランダは海洋貿易で栄え、時代の先頭を走っていました。
豊かな市民が増え、王侯貴族ではなく市民が主役となる新たな社会が生まれていたのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そこで盛んに描かれるようになったのが「集団肖像画」でした。
経済的余裕が生まれた市民らは、それぞれにお金を出し合い、自分たちの姿を平等に描いてもらうようになったのです。
《夜警》も同じように”集団肖像画”として地元の自警団からの発注で描かれました。
しかしレンブラントはその他の集団肖像画のように、全員を平等に描くのではなく、一人一人を生き生きとした描写で画面全体を劇的に描いたのです。
中央に描かれている隊長の手は、強い光を受けてこちらに差し出され、まるで飛び出しているかのような表現です。
しかし発注した自警団の団員達にとっては、皆同じ金額を支払ったにもかかわらず、描かれ方が不平等だと取られ、以降レンブラントへの絵の発注が減っていったとも言われています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
今もレンブラントにちなんだ記念日やイースター祭に合わせて、市民たちが《夜警》に描かれている登場人物の姿に仮装して、街を練り歩くイベントが行われています。
(Rembrandt’s Painting Flash Mob)
「300年前のレンブラントが今でも慕われているのは素晴らしい。『夜警』のパフォーマンスは楽しみの一つ」と参加者は話します。
今も昔もオランダの市民を象徴する一枚である事が伝わってきます。
《牛乳を注ぐ女》フェルメール
《牛乳を注ぐ女》1660年頃
ヨハネス・フェルメール
アムステルダム国立美術館蔵
続いての作品はヨハネス・フェルメール作《牛乳を注ぐ女》です。
フェルメールは先のレンブラントと同時代、17世紀のオランダに生きた画家です。
収蔵先も《夜警》と同じ、アムステルダム国立美術館です。
40センチほどの小さなキャンバスに、ありふれた日常の光景が描かれています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
詩人の谷川俊太郎氏はこの作品を見ると、「とにかく綺麗だな」と見惚れて絵の前で呆然と立ち尽くしてしまうといいます。
他の絵画を見るときは、感想が言葉になって心の中に湧いてきますが、この絵に対してはそういうものがなく、胸がいっぱいになっていると話しています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
1632年にフェルメールはオランダのデルフトで生まれました。
43歳で亡くなるまでその生涯を僅か1キロ四方の街の中で過ごしたと言われます。
現存する作品はわずか三十数点と言われています。
《牛乳を注ぐ女》はなんと20代の頃に描かれた作品です。
硬いパンの質感は光を反射する砂を混ぜた絵具で再現されています。
1980年に番組に出演した谷川俊太郎氏は、「地味な絵だけれどもとても華やかなものがある」とこの絵について述べています。
画面がとても生き生きとしており、それに圧倒され、「とにかく美しい」という感想のなるのです。
《わが子を食らうサトゥルヌス》ゴヤ
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ここの描かれているのはおぞましくも我が子を食いちぎろうとする姿です。
描いたのはスペインの巨匠フランシスコ・デ・ゴヤ(1746-1828)。
スペイン王家の首席宮廷画家として活躍したゴヤ。
国王やその家族を描いた華やかな肖像画を数多く手掛けました。
そんなゴヤが晩年に描いたのが《わが子を食らうサトゥルヌス》です。
とても華やかな肖像画を描いていた宮廷画家の作品には見えません。
サトゥルヌスはローマ神話に登場する巨人です。
「自分の子どもに殺される」という予言に恐れを抱き、生まれてきた5人の子どもを次々と食い殺していったというエピソードがこの絵の題材にされています。
どうしてゴヤはこのような作品を描いたのでしょう?
黒い絵
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
1808年、ゴヤが62歳の時にスペイン独立戦争が始まります。
市民たちをも巻き込んだ泥沼の争いでした。
人々は理性を失い、怪物のようになっていきました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ゴヤは1819年にはマドリード郊外の別荘を購入します。
彼はその家に閉じこもり、壁に絵を描き始めます。
1820年から23年にかけて14枚の壁画を描きました。
それらの作品は暗い絵が多かったため、通称として『黒い絵』と呼ばれています。
《わが子を食らうサトゥルヌス》もその連作の中の一枚です。
『黒い絵』は生前発表されず、ほとんど人目に触れる事はありませんでしたが、その別荘がゴヤの死後取り壊され、壁画は現在全てプラド美術館に所蔵されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
画家の絹谷幸二氏はこの作品について次のように述べています。
「『人間というのは一皮むいてしまえば、こんな事もあるんだよ、こんな事もするんだよ』というのをゴヤはこの絵で見せ、指し示した。
そこにゴヤのヒューマニズム、人間を見つめる目が現れている。
見たところ非常に残酷な絵ですが、しかしこれは本当に心を洗ってくれる美しい絵なんです」
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
詩人の田村隆一氏は自らの戦争体験を踏まえ、1995年にこの絵について「人間自身の悲惨さ」を表現していると言っています。
人間そのもの、人間存在そのものの悲惨さを具象化している、いわば「人間が人間を知るための一枚」であり、”人間の自画像”なのです。
今回の記事は以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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