2020年5月31日にNHKで放送された「日曜美術館」の【#アートシェア 今こそ、見て欲しいこの一作】の回をまとめました。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
イントロダクション
2020年春、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、多くの美術館が臨時休館となりました。
関東の美術館では2月の終わり頃から各館休館となり、今まで当たり前だった「美術館に足を運び、作品を鑑賞する」という事ができなかった約3カ月でした。
改めて”美術”というものが、いかにかけがえのないものであったかを私自身も痛感しています。
今回は「#アートシェア」という事で、多くの著名人の方々が挙げた”今だからこそ見て欲しい一枚”をまとめていきます。
《象と鯨図屏風》伊藤若冲
《象と鯨図屏風》1797年
伊藤若冲
滋賀・MIHO MUSEUM蔵
こちらの作品は日本美術研究の第一人者である辻惟雄(つじのぶお)さんが挙げた作品です。
辻さんと言えば、著書『奇想の系譜』を執筆したことで知られています。
こちらの《象と鯨図屏風》は、2019年に東京都美術館で開催された【奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド】にて公開されていましたので、目にされた方も多いのではないでしょうか?
若冲晩年の作品です。
若冲と言えば、鮮やかな色彩の鳥の絵が有名ですが、この作品では墨だけのモノクロの世界が表現されています。
辻さんは、新型コロナウイルスが人々の心を脅かしているこのご時世に”なぐさめ”や”なごみ”になるものをと考え、この作品を選んだといいます。
若冲は82歳の時にこの作品を描きました。
江戸時代の82歳ですから、今の感覚でいう100歳くらいのイメージでしょうか。
作品からは程よい脱力感が感じられ、見ている人を和ませてくれます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
一番のポイントは和やかな雰囲気の中、まるで挨拶をするようなゾウとクジラの表現です。
まるで「やあ✋」なんて具合に挨拶し、互いにエールを交換し合っているように見えます。
未知の脅威や我慢の連続の日々に神経をすり減らすのではなく、描かれているゾウやクジラのようにおおらかな気持ちでいる事が大切だと教えてくれているようです。
《SELF AND OTHERS》牛腸茂雄
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらは日本を代表する写真評論家の飯沢耕太郎(いいざわ こうたろう)さんが挙げた作品です。
《SELF AND OTHERS》と題された写真集。
写真家の牛腸茂雄(ごちょうしげお)が自費出版で1977年に刊行しました。
牛腸茂雄(1946-1983)は36歳という若さでこの世を去りました。
新潟県の加茂市に生まれた牛腸は3歳でカリエスという病気にかかり、その後遺症で体にハンディキャップを抱えます。
周囲からは「二十歳までは生きられない」と言われていましたが、その魂を削るようにして3冊の写真集を自費で出版します。
その中でも《SELF AND OTHERS》は牛腸の代表作です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
牛腸がカメラを向けたのは母親や親しい友人、近所の子どもたちなど自分の身の回りの人々でした。
そこには被写体になった人と自分の関係性を見つめたいという牛腸の思いがありました。
この作品を選んだ飯沢氏は、「人とのつながりが問われているこの時期だからこそ、改めて自分の身の回りにいる人と自分との関係性を考える、その一つのヒントのようなものが詰まった写真集」だと、この作品を選んだ理由を述べています。
《Game Changer》バンクシー
《Game Changer(ゲーム・チェンジャー)》2020年
バンクシー
このバンクシーの作品を選んだのは作家のいとうせいこうさん。
イギリスを拠点に活動する覆面アーティストのバンクシー。
こちらの作品はニュースなどでも取り上げられた彼の最新作です。
タイトルの『ゲーム・チェンジャー』には、「変革をもたらす者」という意味があります。
新型コロナウイルスと戦う、イギリス南部にあるサウサンプトン病院に贈られました。
この病院では秋まで飾られ、その後は医療サービスに関わる資金を調達するためにオークションにかけられる予定になっています。
子供は看護師のフィギュアを掲げているに対して、バットマンやスパイダーマンといったアメコミヒーローはかごに入れられています。
バンクシーらしい鋭い皮肉とユーモアが感じられます。
《星月夜》ゴッホ
《星月夜》1889年
フィンセント・ファン・ゴッホ
ニューヨーク近代美術館蔵
ゴッホの代表作を”今見て欲しい一枚”に挙げたのは、作家の原田マハさんです。
原田さんは作家になる前は、学芸員として美術の世界に関わっていたという経歴があります。
この作品を描いた頃のゴッホは、精神のバランスを崩しサン=レミ=ド=プロヴァンスの病院に入院をしていました。
人生最大の困難に直面していたともいえる時期にゴッホが描いたのは、病室の窓から見た夜明け前の空でした。
孤独の中で自分自身と向き合い、感性を研ぎ澄ましていったゴッホ。
どのような逆境にあっても絵を描き続ける事で、自分を肯定し、生きた証を残していきました。
「左側にそびえる糸杉は、孤高の画家の存在そのものに見える」と原田氏は述べています。
今回の記事は以上になります。
この続きはパート2にて!
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