2021年1月10日にNHKで放送された「日曜美術館」の【李 禹煥(リ・ウファン)わたしと雪舟】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1の記事はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
国宝《破墨山水図》雪舟
国宝《破墨山水図》室町時代・1495年
雪舟
東京国立博物館蔵
作品の読み方は「はぼくさんすいず」です。
後方には遥かに霞む山、その手前にはぼんやりと何かが浮かんでいます。
「破墨」とは、薄い墨で描いた後にそれが乾く前に濃い墨を乗せ、ぼかしやにじみを表現する技法です。
「琳派」でいう所の”たらし込み”の技法に近いものです。
76歳の雪舟が極めた究極の水墨山水画と言えるでしょう。
まるで現実の向こう側、遥かな世界へと観賞者を誘うかのようです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
現代美術家の李 禹煥(リ・ウファン)さんは、この作品を見ると、”雪舟の自然との対話”が感じられると言います。
日本は湿気が多く、霞みや霧が良く起こります。
桃山時代の絵師、長谷川等伯も《松林図屏風》で霧深い情景を表しています。
そういった日本ならではの光景を、この《破墨山水図》も表しているのです。
さらに李さんはこの作品には、足し算ではなく、引き算の絵だといいます。
ほとんど多くの絵画作品は、描き込んで描き込んで、足し算のように描かれます。
しかし雪舟は、周りの空白の部分や空白に溶けていく部分を画面に表現して、”描かない”、引き算のような描き方をしているのです。
中国から帰国後の雪舟
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
雪舟が中国・明から帰国したのが、1469年。
この頃京の町は応仁の乱により、焼き尽くされていました。
日本に戻ってきた雪舟は、戦火を避けながら各地を巡ります。
その後再び山口に戻り、同地にて87歳で没したと伝えられています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
雪舟がアトリエとして使ったと伝わる「雲谷庵(うんこくあん)」。
代表作、国宝『山水長巻』もここで製作されたと言われています。
国宝《四季山水図巻(山水長巻)》雪舟
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
67歳の雪舟が全身全霊をかけて描いた《四季山水図巻》。
全長16メートルに及ぶ大作で、「山水長巻」と呼ばれています。
それにしても長い巻物ですね!
雪舟の庇護者であった大内氏に献上されたものと考えられています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この絵巻には四季の移ろいが描かれています。
こちらはその一番初め「春」の場面です。
一人の男が山道を進んでいます。
行く手には、現実ではありえないくらいの険しい山々が、ダイナミックな表現で表されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
夏になると、水辺の風景になります。
水面はうっすらと藍色で彩色されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらの場面では、右側に洗濯物が干してあります。
左側にはのんびりと過ごす人の姿が。
のどかな人々の暮らしは、雪舟が中国で目にした光景なのかもしれません。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
秋の場面では、山中にある村の風景が描かれています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
村の人々が生き生きと描かれています。
着物は彩色され、動きや仕草も描き分けられており、臨場感たっぷりに表されています。
カラフルで見ていて楽しいですね!
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そして最後は「冬」です。
壮大な雪山をバックに、城壁と家々が連なります。
秋の場面で描かれていた村人たちの姿は全く見えなくなりました。
日本美術史家 島尾新さんの分析
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
学習院大学教授の島尾新さん。
雪舟研究の第一人者です。
島尾教授は雪舟の優れた点として、以下の3点を挙げています。
- 絵が面白い
- 人生が面白い
- 社会と関わりが面白い
先ず1つめが、「絵が面白い所」だと言います。
国宝に指定されている6点を見ても、全てタイプが違います。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
確かに人物を描いたもの、屏風、巻物と様々ですね。
雪舟は一つのパターンで作品を描くのではなく、作品ごとに色々な事を考えて描いているのです。
それでいて「雪舟らしさ」は失われていません。
2つめは「人生が面白い所」です。
島尾教授は「室町時代にこれほど動き回った画僧は他にはいない」と言います。
岡山で生まれ、京都へ行き、そこから山口、更に中国へ。
帰国すると大分、そして京都・天橋立へ行き《天橋立図》を描いています。
最後は「社会と関わっている点」です。
雪舟はアトリエに籠って、ただ絵を描くようなタイプの人ではありませんでした。
歴史との関わりが深い人間だったので、「雪舟の目を通して、その時代の歴史が見える」のだと島尾教授は言います。
そちらの記事もまとめておりますので、あわせてご覧ください!
【京都国立博物館】2017年国宝展③【ぶらぶら美術館】
国宝《天橋立図》雪舟
国宝《天橋立図》16世紀・室町時代
雪舟
京都国立博物館蔵
作品の読み方は「あまのはしだてず」です。
82歳の雪舟が実際にこの地に足を運び、スケッチをして描いたと言われています。
かなり高い視点から見下ろすように描かれたこの風景ですが、このように見える場所は存在しません。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
2005年のNHKの番組で島尾教授は、ヘリコプターに乗り《天橋立図》の描かれた視点について検証しました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
上空から見た景色と作品とを見比べました。
地上500メートルの高さからでも、絵の視点に比べると低いといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
地上900メートルからの景色です。山も随分と下の方に見える高さになりました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
島尾教授の検証によると、山は地上500メートルから、そして橋立と海は900メートルくらいからの視点を組み合わせたものだという結論に至りました。
山の姿はデフォルメされているものの、全体の形はよく似ている事がわかります。
ヘリもドローンもない、この高さから地上を誰も見た事のない時代にこんな絵を描くなんて…
やっぱり雪舟という人はすごい画家だったのですね!
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
雪舟を長年研究し続ける島尾教授にとって、「天橋立とヘリコプター」は”一つの夢だった”と言います。
島尾教授はじつは高所恐怖症なのだそうですが、それでも「天橋立を空から見られる」という思いの方が勝ったのだとか。
今回の記事はここまでです。
この続きはパート3にて!
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