【日曜美術館】李 禹煥(リ・ウファン)氏と雪舟①【美術番組まとめ】

日曜美術館

2021年1月10日にNHKで放送された「日曜美術館」の【李 禹煥(リ・ウファン)わたしと雪舟】の回をまとめました。

番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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イントロダクション

昨年2020年は雪舟の生誕600年に当たる年でした。
画聖」と呼ばれた雪舟は1420年、備中国(今の岡山県)に生まれます。

現在国宝に指定されているのは6作品ですが、これは日本絵画史上最多であり、雪舟ただ一人です。


国宝の《慧可断臂図(えかだんぴず)》。
2メートルに及ぶ大きな画面には、自らの決意を示すために腕を切り落とす、という衝撃的な場面が描かれています。


国宝《天橋立図(あまのはしだてず)》。
股のぞきで有名な観光名所を、雪舟上空900メートルからという、この時代では見る事のできない視点から描きました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらも国宝の《山水図》は、雪舟の絶筆だと考えられています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そして《四季山水図巻》、通称「山水長巻」。
全16メートルにも及ぶこの絵巻物には、四季折々の人々の姿が描かれています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そんな雪舟に強く惹かれているのが、現代美術家の李 禹煥(リ・ウファン)さんです。
韓国で生まれ20代で来日、以降日本を拠点に活動している李さん。
世界的な評価も高く、2014年にはフランス招聘され、ベルサイユ宮殿の前に作品が展示されました。

2020年には東京・六本木の森美術館で開催された「STARS展:現代美術のスターたち」に参加しました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらの《関係項》という作品では、自身が1969年に発表した作品の再現を行いました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

1960年代から彫刻や絵画等、幅広い分野で活躍してきた李さん
現在84歳ですが、今でも一作ごとに新たな挑戦を続けるその姿は、晩年に大作を多く生み出した雪舟と重なるものがあります

李さんは”雪舟が見た自然観”に強く惹かれると言います。
今回は李さんの言葉と共に雪舟の魅力についてまとめていきます。

国宝《秋冬山水図》

冬景 秋景
国宝《秋冬山水図》室町時代・15世紀
雪舟
東京国立博物館蔵

李さんは数ある雪舟作品のなかでも、この《秋冬山水図(しゅうとうさんすいず)》が一番のお気に入りだと言います。

元々は春と夏の風景もあり、4作で1セットだったと考えられていますが、現在の残っているのはこの2枚です。


冬景』では雪の降り積もった木々や岩山が表現されています。
よく見ると、手前には坂道を歩く男の人の姿が見えます。


画面上部には天に伸びる力強い線が描かれます。
大胆な描写はまるで抽象画のようです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

李さん雪舟のみならず水墨画の歴史から見ても、この絵は珍しく、また非常に面白いといいます。

上は異形 下は情景

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

李さんはこの《秋冬山水図》の『冬景』は画面上部と下部では全く性質が異なると言います。

下の情景は山水画によくある風景が表されています。
一方上部にいくにつれて、異様な起伏の山であったり、不思議な線が描かれています。

李さんは「どうしてこのような画面構成になったのだろう」と考えました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

李さんは右の画像のように、雪舟は画面の下部の情景を描いた所で、一旦筆を置いたのでは?と考えました。

この状態ですと、いくら冬の図といえども上部が空きすぎなのです。
「何かちょっと締まりがないな」と考えている内に、雪舟の中に狂気が走ったのでは?と言います。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

画家は白い部分を見ると、無意識が働くのだそう。
そこで雪舟は「何か空間を割ってみたい」という思いから、縦に伸びる岩の線を描いたのです。

本来であればその周りの岩山の部分にもう少し筆が入っても良い所を、あえて雪舟は描かない事で、縦の太い線が強調され、まるで空間が割れているかのような表現にしているのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

さらにその横の白い不思議な形をした凸凹。
このような光景は現実にはあり得ません。
これは雪舟の想像による表現だと李さんは言います。

もし雪舟がシュールレアリスムの時代の画家であれば、ここに幽霊のような、全然違うものを描いたかもしれません。
そこで雪舟は、”どこかあり得そうだけど違う”、”現実ではないけれども現実に近いようなものを描く”という想像力を働かせているのです。

つまり上の景色は異形(非現実)で、下の形は情景(現実)であり、その両面性がある事がこの時代の絵画において偉大である、と李さんは考えているのです。

>>雪舟の生涯について

コメント

  1. […] 今回の記事はパート2になります。 前回のパート1の記事はこちら☚からご覧頂けます。 […]

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