2021年1月3日にNHKで放送された「日曜美術館」の【新春スペシャル 「#アートシェア2021」】の回をまとめました。
今回の記事はパート3になります。
前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
漫画家 ヤマザキマリさん
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
続いての作品は漫画家のヤマザキマリさんが選んだ作品です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
アメリカ人アーティストのジョーダン・ベルソン(1926-2011)の作品です。
ビジュアル・ミュージック創世期に活躍し、禅や仏教哲学に触発された作品で知られています。
この作品は映像作品となっており、クラシック音楽をバックに抽象的な光や色彩が流れていきます。
様々な場面展開が音楽に合わせて繰り広げられていきます。
泡のような小さな光の粒が上昇していき、それが空の星と融合するシーンが、ヤマザキさんのお気に入りで、見ている内に”宇宙旅行”をしているような気持ちになるといいます。
ヤマザキさんにとっての”旅”は、必須栄養素とも呼べるほど不可欠なものだと言います。
この2020年のコロナ禍で、それが断たれてしまい、最初の頃は大丈夫だと思っていましたが、次第に気が滅入るようになっていったのです。
旅をしている時よりもこのコロナ禍の方が時間があるにもかかわらず、漫画制作の生産性が落ちていったと言います。
そこで出会ったのがジョーダン・ベルソンの作品でした。
この作品から”感じる旅”を体験する事で、”足を運ぶ旅”ができない状況を満たしていったと言います。
ミュージシャン 山口一郎さん
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
続いての作品は、ロックバンド『サカナクション』のボーカルの山口一郎さんが選んだアートシェア作品です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
写真家・松江泰司氏の作品《SPK44134》。
松江氏の写真は空から地表を写したシリーズで知られています。
こちらは冬の札幌を写した作品で、山口さんがデビュー前に暮らしていた土地でもあります。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
作品の中には山口さんが当時暮らしていたマンションが写っているといいます。
家賃は3万円。当時はお金が全然なく、電気もガスも水道も止まってしまったといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
松江氏は太陽の光が地表を均一に照らした瞬間にシャッターを切ります。
そこには影や地平線のない、そぎ落された風景が広がるのです。
現代はインターネットを使う事で、知らない土地や行った事ない場所でも簡単に情報が手に入ります。
更には様々な人のレビューや評価なども知る事ができます。
しかし松江氏の作品は、ただその場所をサンプリングするかのように切り取り、一切の感情が取り除かれたような風景が映し出されます。
その「何も感情の無いように切り取っている所」に、”違う感動”を得る事ができると山口さんは言います。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
山口さんもこのコロナ禍で、予定していたコンサートが次々に中止になりました。
楽曲制作の時は部屋にこもって作業することがほとんどでしたが、それ以外のタイミングで部屋にずっといる、というのは初めての経験だったと言います。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そんな時に部屋に飾っていたこの作品を眺めていたといいます。
山口さんは楽曲を制作する際、「少年時代に戻りたい、多感だった頃の自分がどんな音楽を作ろうとしていたのか」を考えているといいます。
この作品を毎日眺める事で、札幌で暮らしていたデビュー前の感情、それは「沢山のためではなく、誰か一人のため、あるいは自分のために音楽を作っていた頃」を思い出したのです。
デビュー前の不安な気持ちと、今回のコロナ禍での不安がリンクして、当時の気持ちに戻れたと言います。
感情のない「無」の作品のように見える松江氏の作品から、山口さんは「生」を感じたのです。
「Todayシリーズ(日付絵画)」河原温
最後の作品は、森美術館館長の片岡真美さんが紹介する作品です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
英語で「1966年1月4日」と表記されたこちらの作品。
「Todayシリーズ」と呼ばれる作品で、日本の美術家・河原温(かわらおん、1932-2014)によるものです。
河原温はニューヨークに拠点を置き、世界的に高い評価を受けました。
この「Todayシリーズ」はその日の日付を、その時に滞在していた場所の言語で表記したもので、1966年から描き始めました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
来る日も来る日も日付を描き続けた河原は、のべ3000点以上の作品を残しました。
片岡さんがこの作品を挙げた理由は、先ずこの放送が「新春スペシャル」という事で、新しい年、新しいカレンダーになるタイミングである事。
そして、パッと見は非常に無機質な作品に見えますが、見る人によってはその日付が誕生日であったり、何か記念日だあったりと意味を持つものになります。
人間誰しも自分にとって特別な日がありますよね。
数字や記号でさえ、それが持っている想像のきっかけに繋がると片岡さんは言います。
番組司会の小野正嗣さんも「日付は本当に興味深くて、一人一人の固有の独自の記憶なり体験なりっていうものが、作品とコンタクトする」と述べています。
作者の河原温は、このシリーズを始めて以降、公な場所にほとんど姿を出さなくなり、どんな顔なのかも知られていないまま、謎のアーティストとして2014年に亡くなりました。
数字と記号を使った「Todayシリーズ」でしか、河原温の生存を想像できません。
しかし逆に作品からは「今日を確かに生きている」というメッセージも受け取れるのです。
ゲストの芦田愛菜さんはこの作品を見た感想を次のように述べています。
「一日一日は意識しなければ、すぐ過ぎ去ってしまう。
こうやって(作品に)残していく事で、同じ日は二度と来ないんだなって思えるのが、素敵だなと思いました」
さいごに
片岡真美さんはアートは「時空を超える、時間と空間を超える」と思っていると言います。
今回の「#アートシェア2021」では、日常的な身近な所から宇宙まで広がり、時間という意味でも縄文から現代美術まで、様々な時代のものを取り上げました。
そういう意味では、まさに”時空の旅”ですね。
色々な時間と空間を見る事によって、新しい年を生きる力に繋がっていくと片岡さんは振り返りました。
今回の記事は以上になります。
最後までご覧頂きありがとうございました。
コメント
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