2019年7月23日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#315 国立西洋美術館「松方コレクション展」~ゴッホ、モネ、ルノワール…歴史に翻弄された奇跡の名画が大集結!~】の回をまとめました。
今回の記事はパート7になります。
前回のパート6はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《嵐の海》マネ
《嵐の海》1873年
エドゥアール・マネ
国立西洋美術館蔵(番組放送時はベルン美術館蔵)
こちらは松方の部下である日置釭三郎(ひおきこうざぶろう)がやむを得ず、売却したマネの作品です。
マネは意外にもこのような海景画の作品を残しています。
若い頃には海軍兵学校を目指していた時期もあり、船や海に対する関心を持ち続けていました。
この作品は松方コレクションから離れたあとも数奇な運命を辿っています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
松方コレクションから離れた後、画商たちによる転売の末、ナチス・ドイツの協力画商であるヒルデブラント・グルリットの手に渡ります。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ヒトラーは印象派を好みませんでしたが、ナチス・ドイツの幹部のゲッベルス(ナチス・ドイツの大臣)やゲーリック(ヒトラーの後継者といわれた指導者)らは印象派を好んでいたといいます。
彼らは略奪した美術品を密かに自分の懐に入れていたのです。
そして画商であるグルリットもまた、相当数の絵画を隠し持っていたと言われており、それらの所在は長らく分かっていませんでした。
ところが半世紀以上経った2013年に事態は急展開します。
グルリットの息子であるコルネリウス・グルリットが、スイスとドイツの国境で検問を受けます。
大金を所持していた彼には脱税の疑いがかけられ、アパートに家宅捜索が入ります。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
そこから行方知れずだった美術作品が1000点以上見つかったのです。
これが「グルリット事件」と呼ばれるものです。
この《嵐の海》もその事件がきっかけで見つかった作品なのです。
《嵐の海》というタイトルの通り、この作品もまた画中の船のように時代の荒波を乗り越えてきたのです。
戦争と略奪された美術品
このマネの作品のように戦争の中で略奪されたり、行方不明になってしまった美術品は、ここ10年の間で関心が高まっている分野だと言われています。
戦争が終わって70年以上経った今でも、新しく出てくる作品があるといいます。
2015年に公開された映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』では、ナチスに奪われたクリムトの名画《アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I》の返還を求めてオーストリア政府を訴えた女性、マリア・アルトマンの実話が映画化されました。
この一件以降、同様の返還訴訟も増えているといいます。
「西洋美術の世界では、第二次世界大戦は終わっていない」と言われています。
戦争で行方不明になっていた作品が出てくる一方で、その所有を巡って裁判が起こされるという状況が現在も続いているのです。
《長椅子に座る女》マティス
《長椅子に座る女》1920-21年
アンリ・マティス
バーゼル美術館蔵
当初、ロダン美術館に保管されていた松方コレクションの中には、アンリ・マティスの作品が、こちらの《長椅子に座る女》を含めて6点ありました。
しかし、作品を疎開させる費用の捻出のために、その6点はすべて止む無く売却されてしまいます。
ですので、戦後1959年に「松方コレクション」がフランス政府から返還された際には、マティスの作品はなく、モダン・アートには関心がなかったように思われていました。
しかし、実は相当数作品は持っていたのです。
《アルジェリア風のパリの女たち(ハーレム)》ルノワール
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらのルノワールの作品は、戦後フランス政府が返還に難色を示していた所、日本政府の粘り強い交渉の末、返還に至った作品です。
現在は国立西洋美術館に所蔵され、常設展示の中でも中心的な存在になっているといいます。
第一回印象派展が開かれたのが、1874年なので、それより前の時代に描かれた貴重な作品です。
当初のルノワールが付けた作品のタイトルは《ハーレム》であり、現在の名称は後から付けられたものです。
《アルジェの女たち》1834年
ウジェーヌ・ドラクロワ
ルーヴル美術館蔵
(*「松方コレクション展」の出展作品ではありません)
フランス・ロマン主義の画家、ドラクロワの代表作《アルジェの女たち》から着想を得ているのは明らかです。
ドラクロワは実際にアルジェリアに足を運び、現地の女性の姿を描いています。
ルノワールの作品も東方風のエキゾチックな雰囲気に溢れていますが、彼はアルジェリアには行っておらず、描かれている女性もルノワールの恋人のリーズでありパリの女性です。
作品のサイズが大画面(156×128.8cm)なのは、印象派以前のサロンに挑戦していた時代だからこそです。
ルノワールの作品の中でも大切な作品で、「フランス政府が返還を渋ったのもよく分かる」と山田五郎さんは言います。
今回の記事は以上になります。
次のパート8で「松方コレクション展」の記事はラストです。
最後は展覧会の目玉作品だった、幻のモネ《睡蓮、柳の反映》についてまとめていきます。
こちら☚からご覧いただけます。
コメント
[…] 今回の記事はここまでです。 続くパート7では、その日置さんがやむなく手放した作品についてまとめていきます。 こちら☚からご覧いただけます […]
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