【ぶらぶら美術・博物館】ブダペスト展①【クラーナハ(父)の作品】

ぶらぶら美術・博物館

2020年1月7日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#334 ブダペスト展】の回をまとめました。

このパート1では、そもそもブダペストとは?という所からまとめていきます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。

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ブダペストについて

まず初めに「ブダペスト」についてまとめます。
ブダペストはご存じ、ハンガリーの首都になります。

昨年2019年は日本・オーストリア外交樹立150周年という事で、それを記念した展覧会が開かれたのは記憶に新しいと思います。
(ウィーン・モダン展やクリムト展、ハプスブルク展などがありましたね)

実はその外交が始まったときはオーストリアは「オーストリア=ハンガリー二重帝国」だったのです。
つまり、オーストリアと外交樹立150周年ということは同じくハンガリーとも外交関係開設150という事になるのです。
今回の「ブダペスト展」はそれを記念して開かれている展覧会となっています。

ビッグネームの画家の作品もありますが、今回の展覧会の注目はハンガリーの近代画家です
日本ではあまりハンガリーの画家が有名ではありませんが、これが実に面白いのです。

今回はハンガリーを代表する二つの美術館から来た作品が展示されています。
ブダペスト国立西洋美術館」と「ハンガリー・ナショナル・ギャラリー」です。
この二つの美術館は現在は一つの組織となっており、併せて約24万点の美術品を収蔵しています。
その中から今回は130点の作品が来日しています。

ブダペスト国立西洋美術館は、1906年に開館しました。
開館当初はヨーロッパとハンガリーの美術品を収蔵していましたが、1957年にハンガリー・ナショナル・ギャラリーが開館すると、そちらでハンガリーの美術を担当することになりました。
いわば、「ブダペスト国立西洋美術館」が古典中心で、「ハンガリー・ナショナル・ギャラリー」が近代の作品ということになります。

また「ブダペスト国立西洋美術館」はハンガリーの名門貴族であるエステルハージ家のコレクションがベースになっているので、優れた美術品が多数あります。

ハンガリーについての豆知識

ここでハンガリーの豆知識をいくつかご紹介します。
①ハンガリーにはマジャール人と呼ばれる人たちが住んでおり、ハンガリーの正式国名は「マジャールオルサーグ」と言います。

これは知ってたら自慢できる!(笑)

②そのマジャール人の方々は、東洋が起源だという説があります。
中央アジアあたりから出てきて、モンゴロイドの血が入っているという説もあります。
なので「蒙古斑」のある人がハンガリーにはいると言われています。

③ハンガリーは姓名の順番(苗字が最初で、名前があと)が日本と同じなのです。
(これも東洋が起源だという裏付けでしょうか?)

《不釣り合いなカップル 老人と若い女》ルカス・クラーナハ(父)

それでは早速作品を見ていきましょう。
まず初めは古典絵画の世界。ルカス・クラーナハ(父)の作品からご紹介します。

 
《不釣り合いなカップル 老人と若い女》1522年
ルカス・クラーナハ(父)
ブダペスト国立西洋美術館

こちらの作品は展覧会場入って一番初めに展示されている作品です。
16世紀ドイツルネサンスで、巨匠アルブレヒト・デューラーと並ぶ画家、ルカス・クラーナハ(父)(1472~1553)の作品で、代表作ともいえる有名な作品です。

ルカス・クラーナハ(父)には同名の息子がおり、彼も画家として作品を残したのでそれを区別するために「(父)」とついています。

ルカス・クラーナハ(父)は人気のある宮廷画家でした。
多くの注文に対応するために、大工房を経営する傍ら、出版・印刷業、薬局の経営、評議員の市長など画業以外にも幅広い仕事をしていました。

この作品は山田五郎氏曰く「エロじじい効果」だそうです(笑)
醜いエロじじいと対比させることによって、若い女性のエロティシズムが引き立つという効果を出しています。

タイトルにもある通り、年齢の差のあるカップルを描いています。
若く美しい女性に対して、歯も抜けた老人が嬉しそうにすり寄っています。
老人の手は女性の胸元を触っている一方で、女性の手は財布に伸びお金を取ろうとしています。

この作品の教訓は「若さや外見に騙されると危険ですよ」というメッセージが込められています。
現代でいう所のパパ活の危険性を暗に示していますね(笑)

この時代は宗教改革があり、プロテスタントは偶像の崇拝を禁止しました。
そうすると宗教画はどんどん描かれなくなり、その一方でこの作品のような風俗画が描かれるようになっていったのです。
その中でこの作品のように絵の中に教訓を込めることがブームとなりました。

《不釣り合いなカップル 老女と若い男》ルカス・クラーナハ(父)


《不釣り合いなカップル 老女と若い男》1520-22年
ルカス・クラーナハ(父)
ブダペスト国立西洋美術館蔵
先ほどの「老人と若い女」の逆バージョンです。
実はこの組み合わせは、クラーナハの絵としても珍しいですし、当時の他の画家もこの組み合わせはあまり描かれていません。
面白いのは二人の手元です。先ほどの作品とは逆で老女の方が自らお金を渡しています。
ここも構図としては現代と同じと言えるのではないでしょうか。

「老人と若い女」がパパ活だとしたら、こちら「ホスト」ですね
男性の冷ややかな視線がなんとも言えない二人の関係性を表しています。

この作品に込められた教訓は「愛はお金では買えない」というメッセージだそうです。

北方ルネサンス(ドイツやネーデルラント)の特徴、緻密な描写が現れています。
コインの枚数さえ近づいて鑑賞すると分かりそうなくらいです。

ところで、こういう教訓の絵って
誰が欲しがるの?

確かに家にこんな絵が飾られても嫌ですよね(笑)
それでもこのような作品は当時数多く描かれていました。
おそらくは中産階級の人たちは「こういう絵を理解できるだけの知力がある」というのを示すために描かれたと考えられます。
実際にクラーナハの工房では、この主題の作品が40点以上確認されています。

「老人と若い女」と「老女と若い男」のこの二枚が並んで鑑賞できるのは、
中々貴重な機会となっています。
今回の「ブダペスト展」の見どころの一つです。

パート1は一旦ここまでです。
続いてのパート2では、イタリア絵画とスペイン絵画についてまとめていきます。
【ぶらぶら美術・博物館】ブダペスト展②【イタリア絵画・スペイン絵画】

コメント

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