2017年11月24日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#253 英国の至宝が初来日!「怖い絵」展~名画に潜む“恐怖”を、ベストセラー著者・中野京子さん解説で!~】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。
今回のパート3では「母の愛情」にまつわる怖い作品をご紹介します。
《ソロモンの判決》ジャン・ラウー
《ソロモンの判決》1710年
ジャン・ラウー
フランス、ファーブル美術館蔵
これはここまでの作品と違い見るからに怖そうな作品ですね。。。
赤ん坊が逆さ吊りにされ剣で斬られようとされる一方、床には息絶えた赤ん坊の姿が見えます。
これは一体全体どういう場面なのでしょうか。
元祖・大岡裁き
この作品に描かれている場面とよく似たエピソードが日本の江戸時代のお話にあります。
それは「大岡裁き」です。
一人の赤ん坊に対して「この子は私の子だ」と母親を名乗る二人の女性が現れます。
どちらかが本当の母親で、もう一方が嘘をついているのです。
そこで大岡越前が「互いにその子の手を引っ張り合いなさい、それに勝った方が本当の母親だ」と言います。
二人の女性は引っ張り合いますが、実母の方は痛がる我が子を見て手を放してしまいます。
そこで大岡越前は「手を放した方が実母だ」と判決を下します。
ソロモンの判決のストーリー
《ソロモンの判決》もこの「大岡裁き」と同じようなストーリーです。
(こちらの方がもっと酷いですが。。。)
椅子に腰かけ命令しているのが、古代ユダヤの三代目の王様ソロモンです。
彼は良き王で賢人として知られていました。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館 #253」より
ここでも二人の女性が「生きている子が自分の子で、死んだ子は自分の子ではない」と主張します。
そこでソロモン王が「わかった」と。
「それならばその子を半分に切ってしまえ」と命令をします。
そうすると左側の女性が「はい、分かりました」と言って自分の前掛けを広げます。
一方右側の女性は王に駆け寄り、「あの女にやってください!殺すのはやめてください」と懇願します。
ここまで来ると話が分かりますね!
我が子を殺さないで欲しいと懇願した右側の女性が、本当の母親だったというのがこのストーリーのオチになります。
しかしどうしてそこまでして赤ん坊を自分の子にしたかったのでしょう?
この時代、女性はまだ本当に働き口がありませんでした。
生まれてたら父親に養ってもらい、結婚したら夫に、そして老後は息子にと、女性は一生を通じて男性に養ってもらわないと生きていく事ができない時代だったのです。
酷い時代ですね。。。
なので息子という存在が非常に大事だったのです。
なのでどうしても息子が必要で、その子を巡って必死の争いになるわけです。
しかし、この話で納得のいかない点が。
半分に切られて亡くなった子供をもらってどうする気だったのでしょう。
その子をもらっても養ってもらえはしないのに・・・
もしかすると我が子を既に亡くした方の母親は半分に切られた子供が欲しいのではなく、息子が生きている母親が恨めしくて同じ運命に陥れようと考えたのかもしれませんね。
そう考えるとまた違った怖さがこの作品から感じられます。
この「ソロモンの判決」といい「大岡裁き」といい、これとよく似た話は世界中にあるようで、中国でも同様のものがあるそうです。
どちらが先でどちらが後かは諸説あるようですが。
画家:ジャン・ラウー
《ソロモンの判決》の作者ジャン・ラウー(Jean Raoux、1677-1734)は18世紀前半のフランスで活躍した画家です。
ローマ賞を獲得してローマへの留学を果たしたのち、10年ほどイタリアに滞在します。
帰国後も国王付きの画家になるなど、エリート街道まっしぐらな画家でした。
残念ながら自画像などは残されていないようです。
こちらは彼の代表作《手紙を読む若い女性》です。
(*「怖い絵展」の出展作品ではありません)
この作品はあの「ルーヴル美術館」に収蔵されています。
いかがでしたでしょうか。
続くパート5ではイギリスの「荒廃した街」を描いた怖い作品をご紹介します。
こちら☚からご覧いただけます。
コメント
[…] いかがでしたでしょうか。パート2はここまでです。 続くパート3では「母の愛情」をテーマにした作品をまとめていきます。 こちら☚からご覧頂けます。 […]
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