2018年3月24日にテレビ東京にて放送された「美の巨人たち」の【ディエゴ・ベラスケス「セビーリャの水売り】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
ベラスケス《セビーリャの水売り》
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
ベラスケスはスペインを代表する画家で、ハプスブルク家の宮廷画家として活躍しました。
しかし、今回の作品はベラスケス作品を数多く所蔵するマドリードのプラド美術館にはありません。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
ロンドンの『アプスリーハウス』。
バッキンガム宮殿とハイドパークに挟まれたロンドンの真ん中にその建物はあります。
ここはイギリスの名門貴族であるウェリントン公爵家のロンドンにおけるタウンハウスです。
このアプスリーハウスは住居としても使われていますが、一部が美術館として一般公開されています。
ここに今回取り上げる作品はあります。
《セビーリャの水売り》1619-20年
ディエゴ・ベラスケス
アプスリーハウス(ウェリントン美術館)蔵
ベラスケス、20歳の頃の作品《セビーリャの水売り》です。
まず注目すべきは手前の大きな壺です。
素焼きの肌合いが見事に表現されています。
こぼれて滴る水滴も確認する事ができます。
中央に描かれているのは、水売りの老人です。
その老人が少年にグラスの水を渡す一瞬の場面を、画面左上からの光が浮かび上がらせています。
光と影、そして老人と少年という2つのコントラストが絵の中に表現されています。
分かりにくいですが、老人と少年の間にはコップの水を飲んでいる男が描かれています。
グラスの水は圧巻の描写です。
この水は「世界で一番美味しそうな水」と謳われました。
グラスの中にある黒い物体は、毒消しのためのイチジクです。
よく見てみると、少年の白い襟の反射や、外気温との差で生じるグラス表面の曇りまで表されています。
グラスの持ち手に目をやると、少年の白く柔らかな手と褐色でごつごつとした老人の手が。
とても20歳の若者が描いたとは思えない、見事な一枚です。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
今回はこの作品を3つのキーワードで紐解いていきます。
まず1つ目は”隠された放物線”です。
この《セビーリャの水売り》の中にはいくつもの放物線が隠されています。
これにはどんな意味があるでしょう?
2つ目は”視線と奥行きの魔術”。
巧みなモチーフの配置と、人物の視線により鑑賞者は知らず知らずのうちに視線が誘導されているのです。
最後のキーワードは”グラスの正体”です。
じつは描かれているグラスは、ものすごく高価なベネチアングラスです。
ベラスケスはなぜこの絵にベネチアングラスを登場させたのでしょうか?
スペインの至宝 ディエゴ・ベラスケス
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
ベラスケスは1599年、スペイン南部のセビーリャで下級貴族の家系に生まれました。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
11歳にして、当時セビーリャを代表する画家だったフランシスコ・パチェーコ(1654-1644)に弟子入りします。
若い頃から絵の才能に恵まれていたベラスケスは、18歳のときに師匠パチェーコの娘であるフアナと結婚。
翌年、長女のフランシスカが誕生しています。
ベラスケスの圧倒的な描写力
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
若き日のベラスケスは「ボデゴン(厨房画)」と呼ばれる、庶民の風俗を描いた作品を描きました。
《卵を料理する老女》1618年
ディエゴ・ベラスケス
スコットランド国立美術館蔵
そのボデゴン絵画の中でも、代表的な作品が《卵を料理する老女》です。
《セビーリャの水売り》を描く前年、19歳の時の作品です。
スポットライトのような強い光が、老女と少年に当てられています。
少年が抱えているのは、紐で縛ったメロンです。
描かれている小道具の一つひとつが非常にリアルに描かれています。
真鍮の器の鈍い輝きから、壺にかかった釉薬まで見事に表現されています。
陶器の鍋では目玉焼きが焼かれています。
油のはねる音が聞こえてくるかのよう、リアルな描写です。
まるで写実表現の博覧会のごとき一枚です。
ベラスケスのずば抜けた描写力は、ごく普通の人物や物でさえも”特別な力”を持っているように見せることができたのです。
そしてこの作品を描いた翌年、ベラスケスは《セビーリャの水売り》を描き上げます。
そこには、”ある野望”が込められていました。
隠された放物線
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
《セビーリャの水売り》を読み解く1つめのキーワードは「6つの放物線」。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
この作品には、6つの放物線が隠されているといいます。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
まず一つ目が三人の人物が織りなす山なりの放物線。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
2つ目が水売りの老人の放物線です。
そしてその放物線に呼応しているのが、手前の大きな壺の放物線です。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
更に老人の身体の放物線に対して、逆向きの放物線となっているのが、グラスの輪郭線の放物線です。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
さらにそのグラスの放物線は、少年の前の小さな壺の放物線に対応しています。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
その放物線もまた水売りの前の大きな壺の底の放物線と関係を作っています。
これらの放物線により、画面に安定感をもたらしているのです。
今回の記事は一旦ここまでになります。
パート2へと続きます。
【美の巨人たち】ベラスケス『セビーリャの水売り』②【美術番組まとめ】
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[…] 今回の記事はパート2になります。 前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。 […]