2021年8月10日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#382 まるで国宝展?! 三菱一号館美術館「三菱の至宝展」~奇跡の茶碗、国宝「曜変天目」が登場!刀剣に俵屋宗達、東方見聞録も~】の回をまとめました。
今回の記事はパート4になります。
前回のパート3はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
東洋文庫
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今回の記事では第3代社長の岩崎久彌が設立した東洋文庫、そこに所蔵されている古典籍についてまとめていきます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらは東洋文庫の中のモリソン書庫と呼ばれる施設になります。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
モリソン書庫のモリソンとは、オーストラリア出身のジャーナリスト、ジョージ・アーネスト・モリソンに由来します。
彼は「ロンドン・タイムズ」の記者として、中国・北京に駐在していました。
さらに中華民国建国の際には、袁世凱(えんせいがい)の政治顧問になるなど活躍しました。
解説の東洋文庫の学芸課長・主幹研究員の岡崎礼奈さんは、
「当時の欧米人の中で、おそらく一位二位を争う、ずば抜けたアジア通、情報通だった人物です」と言います。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
久彌は大正6年、当時北京にいたモリソンから、書籍等およそ2万4000点を一括購入します。
このモリソン文庫が東洋文庫のスタートでした。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
『三菱の至宝展』ではモリソン書庫の雰囲気を写真で体感することができます。
『東方見聞録』
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
モリソンが特に力を入れて収集していたのが『東方見聞録』です。
教科書にも載ってるあの有名なやつですね!
『東方見聞録』は13世紀のヴェネツィアの商人マルコ・ポーロの旅行記です。
ヨーロッパからアジア・中国までの旅の様子と、滞在時の出来事が書かれています。
かなり過酷な旅だったといわれており、同行した宣教師も逃げ帰ったというエピソードがあります。
また、モンゴル軍との戦いである元寇の記述もありますが、「日本の武士の中に魔法の石を埋め込んだ人がいて、その人には刃物の攻撃が効かない」といったファンタジー的な記述もあります。
今聞くと「そんなバカな」と感じますが、当時の人にとっては、それが好奇心を刺激し、魅力的なものに映ったのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
『東方見聞録』はマルコ・ポーロ自身が書き記したものではなく、彼が話した内容をルスティケッロ・ダ・ピサという人が本にしたものです。
『東方見聞録』発表当時はまだ印刷技術がなく、手描きの写本しかありませんでした。
さらにそこから他言語に翻訳されたりする過程で、本文の内容も少しずつ変わっていき、いくつかの系統(バリエーション)が生まれていきます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
その後印刷技術ができると、さらに多くのバージョンが生まれていったのです。
東洋文庫のコレクションの特色は、印刷出版された東方見聞録の様々なバージョンを収集している点にあり、その数は約80種にのぼります。
これは非常に大きなコレクションで、世界的にも有名だといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今回の展覧会では、1485年にベルギーのアントワープでラテン語で出版されたもの、1556年にフランス・パリで出版されたもの、1664年のオランダ・アムステルダム版が展示されています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
その中でも、1485年のアントワープ版が最も貴重だといいます。
これは印刷された東方見聞録の中でも、5本の指に入るほど古いものとされています。
1455年頃にドイツ出身の金細工師・印刷業者のグーテンベルクが活版印刷技術を発明します。
そこから1500年くらいまでに出版された本の事を”インクナブラ(ラテン語:ゆりかご、産着)”と呼ばれます。
いわば活版印刷技術がヨーロッパで確立したその最初期のもので、インクナブラになると希少価値がぐんと上がります。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
文中には一部赤色が見えますが、これは手描きされた部分で、黒い文字の部分が印刷です。
完全に全てを印刷にするのではなく、一部を装飾文字にしたりしています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
東方見聞録といえば、「黄金の国ジパング」の記述が最も知られています。
しかし、翻訳された言語によって微妙に表記が異なっています。
こちらのラテン語版では、”チャンパグ”と書かれています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
フランス語版では、”ジパングリ”と書かれています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
同じ東方見聞録でもバージョンによって、文の長さや本の厚みが異なります。
ですので、そういった多くのバージョンを系統立てて収集し、比較・研究することに意義があるのです。
東洋文庫では、モリソンから購入したあともコレクションを拡充しており、東方見聞録だけでも約80種類、東洋文庫の蔵書全体も100万冊以上にのぼります。
珠玉の漢籍コレクション
ここからは東洋文庫が所蔵する『珠玉の漢籍コレクション』を見ていきます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらは『古文尚書』と呼ばれるものです。
儒教のテキストの一つで、伝説上の王である堯(ぎょう)と舜(しゅん)の時代から紀元前7世紀頃の周王朝までの記録が書かれています。
今回展示されているものは、唐時代(7~8世紀頃)に中国で書き写されたもので、現存する「尚書」の中でも最古級のもので非常に貴重です。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
儒教の創始者である孔子が、主となり編さんしたものと伝えられています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
続いての漢籍は『春秋経伝集解』です。
孔子は春秋時代に魯(ろ)と呼ばれる場所で生まれます。
その故郷で起きた出来事をまとめたのが『春秋』という歴史書です。
春秋戦国時代という言葉は、歴史書『春秋』が扱う年代であることからそのように呼ばれます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
『春秋』は非常に重要なものなので、古くから多くの学者が研究をしてきました。
その解釈を著したものの中でも主要になっていくのが、『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』と呼ばれるものです。
そしてその『春秋左氏伝』にさらに解釈を付けたものが、今回展示されている『春秋経伝集解』なのです。
つまりは注釈の注釈という事ですね!
『春秋左氏伝』は古来より読まれており、三国志に登場する関羽も愛読していたと伝わっています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
続いての作品は、司馬遷の『史記 夏本紀』。
こちらも国宝に指定されています。
紀元前1世紀頃、中国前漢時代の歴史家である司馬遷が編さんした歴史書です。
全130巻の中に中国の2000年以上の歴史が書かれています
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
展覧会前期は夏(か)と呼ばれる時代について書かれたものが展示されています。
夏王朝は、紀元前2000年頃に成立したといわれている中国最古の王朝です。
王朝が出来るまでから、滅びるまでの約500年間の出来事が書かれています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
多くの人が中国の王朝の始まりは殷(いん)と学校で習ったことでしょう。
じつは夏王朝は伝説上のものとされ、『史記』には書かれているものの、実在しなかったと考えられていたのです。
しかし近年、発掘調査や科学的分析の進歩等により、かなり高い確率で夏王朝は実在していたと考えられているのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
展覧会後期には、始皇帝で知られる秦(しん)の時代について書かれたものが展示されます。
今回の記事は以上になります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。