2023年2月21日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#428 夭折の天才“エゴン・シーレ”展~28年の生涯で生み出した唯一無二の絵画世界~】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
今回の記事はパート3になります。
シーレ《叙情詩人(自画像)》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらは1911年、シーレが21歳の時に”叙情詩人”と題して描いた自画像です。
シーレは20歳頃からクリムトの作風からは離れて、自らの画風を追求していくようになりますが、ちょうどその頃に描かれたものです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
絵の具の厚塗り感や筆の勢いなど、シーレの迫力を感じることができる一枚です。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
人物は首を横に曲げて窮屈そうな姿勢になっていますが、これは本人の”悩み”や”抱えているもの”を表現していると考えられています。
またこの作品は”計算された構図”で描かれています。
首を横に曲げているのは、正方形の形の中に人物をおさめるためなのです。
画面中央の白い部分はモデルの腹部になるのですが、これが斜めの軸線になっており、安定した構図をつくっているのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
構図は非常に緻密につくられていますが、そういった計算された部分よりも、作品から伝わってくるものは人物の心理的な不安定さであったり、葛藤といった内面の部分なのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
このように「不安」や「葛藤」が伝わる作品を描いたシーレは、どこか精神を病んでいるような印象を受けます。
しかし山田五郎さん曰く「シーレは病んでいない。病んでるように思われがちだけど、どう見ても病んでない。ものすごく順調」とのこと。
ただ自分から悲しくなるような場所に行っては、わざと悲しみにひたるような、そういった部分はあったのだとか。
またこの時代ヨーロッパでは社会全体に不安感があり、そういったものがシーレの作品にも滲み出ていたのかもしれません。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ウィーン分離派やクリムトのもとで学んだこともあり、シーレの作品には装飾的なバランス、デザイン性があるといいます。
自分の感情や勢いだけで作品をつくっていくのではなく、シーレはしっかりと計算した上で作品のバランスも取りながら、あるいは最終的にバランスの取れた形に持っていったのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
シーレは20歳頃からクリムトの作風とは離れ、自らの画風を確立していきます。
それ以降のシーレ作品は表現主義的なものとなり、描くテーマも「自画像」や「裸体表現」が増えていくのです。
続いてはシーレと同じウィーンで活躍した”先輩的存在”の画家と作品についてまとめていきます。
ゲルストル《半裸の自画像》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
次にご紹介するのがシーレの先輩的画家、リヒャルト・ゲルストルの作品です。
この《半裸の自画像》は有名な作品で、ゲルストルの代表作です。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
じっとこちらを見つめるその視線からは、どこか鬼気迫るような印象が感じられます。
シーレより7歳年上のゲルストルは、1898年、シーレより1歳早く15歳の時に美術アカデミーに合格。
シーレと同じグリーペンケール教授の元で学んでいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
またゲルストルは25歳の時に自ら命を絶っており、若くして美術アカデミーに合格した点や、夭折の画家である点などシーレとの共通点が多い人物なのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
劇的な人生を歩んだ画家でしたが、その作品にも自身の”感情”や”自らへの問い”が込められています。
このように感情が表されている絵画表現を”表現主義”と呼びます。
シーレも表現主義の画家にカテゴライズされますが、彼よりも先立ってウィーンで表現主義を取り入れたのがゲルストルなのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
オーストリアを含めたドイツ語圏では、20世紀初頭に「”自らの内面”を表現していこう!」という動きが出始めます。
「その流れの根本にあるのがゴッホだ」と山田五郎氏はいいます。
ゴッホ自身は「自分の見たままを描いているつもり」でしたが、結果的に画面が渦巻いているような現実には有り得ない光景になっており、これは即ちゴッホの内面が出ている、ということになるのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
そしてこのゴッホの表現を見て「内面表現とはこれだ!」と感じ取ったのが《叫び》で知られるムンクだといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ゴッホとムンクはドイツで非常に人気がありました。
その背景にはドイツ人のメンタリティーに合うものがあったのだといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ゲルストルの《半裸の自画像》はムンクの描いた《地獄の自画像》にどこか通ずるものがあります。
確かに上半身裸な点や独特な背景など似ていますね!
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ゲルストルはゴッホやムンクらの”表現主義”の流れに属する画家であり、またシーレもその系統を引き継いでいくことになるのです。
今回の記事はここまでになります。