【ぶら美】エゴン・シーレ展④【自画像と女性像】

ぶらぶら美術・博物館

2023年2月21日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#428 夭折の天才“エゴン・シーレ”展~28年の生涯で生み出した唯一無二の絵画世界~】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

今回の記事はパート4になります。

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《ほおずきの実のある自画像》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

続いては今回の展覧会のメインビジュアルにもなっている一枚です。

まっすぐこちら見つめるシーレの視線が印象的です。
その眼差しには色々な意味が込められているようです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

画面構成も計算してつくられています。
人物は頭と体が違う方向に向いており、ねじれが強調されています。

ほおずきの赤色は画面全体のアクセントになっており、人物の顔の色も青・赤・黒・茶色など様々な色を使っていますが、それでいて写実的な描かれ方をしているのが特徴です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

自画像だけでも100枚近く描いたシーレ
それだけ自画像を描いたことからも分かるように、ナルシスト的側面があった人物だといいます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

また写真もたくさん撮っており、そのどれもがバッチリとポーズを決めているものだとか。

単に”自分が好き”ということだけではなく、自分を見つめる事で「自己を問う」ということもしていたのかもしれません。

でも個人的には自分が好きって感じがするな~

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

もともと自画像というのは、画家がモデルを雇うことができない場合や、何か画家自身が実験的に描いてみたい時に描くものでした。

しかしシーレの頃は自画像の意味も変わってきており、「自分を見つめ、自分の内面を見つめる」という目的を持ったものになっていたのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ほおずきの実のある自画像》は実はこちらの女性を描いた絵と対(ペア)になっている作品なのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらはシーレのモデルであり、恋人でもあったワリーという女性を描いたものです。

カップルだから2枚で対になっているのですね!

ワリーはもともとクリムトのモデルをしていましたが、彼からの紹介でシーレと知り合うことになります。
最初はモデルと画家の関係でしたが、次第に恋人関係になっていきます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

シーレは21歳の頃までウィーンで活動していましたが、都会での生活に疲れて、実母の故郷クルマウにワリーを連れて移住します。
しかし周りの住民となじめず、3か月ほどで街から追い出されてしまいます。

一旦ウィーンへと戻り、その後叔父さんの別荘があったノイレングバッハに移り住みます。
そこでアトリエを構え、後の代表作を手掛けていくようになるのです。

《母と子》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらの《母と子》と題された作品は、シーレが22歳の時に描いたものです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

母親が子供を抱きかかえる構図は、西洋美術でよく見られる”聖母子像”のようです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

しかしシーレの描く『母と子』は他の画家、それまでの西洋美術で描かれたものとは違います。

母親は子供を慈しむような表情のように見えますが、子どもは目を見開いてこちらを見つめており、まるで何かに怯えているような表情にも感じ取れます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

一般的に母親が赤ん坊を抱きかかえるような絵というのは、穏やかで安らかななものが多いです。しかしシーレの作品からはそれとは真逆の「不安」や「死」というものを予感させます。

親子関係について何かトラウマのようなものがシーレにあったわけではないといいます。
シーレは一般的な感情としての「不安」や「死」を描いているのです。

《悲しみの女》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

続いては《悲しみの女》という作品です。
女性は表情が暗く、ゲッソリとしているようで、どこか不穏な空気が感じられます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

絵のモデルは恋人のワリーといわれています。

自分の恋人をこんな風に描くんですね!

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

女性の背後、後頭部にはこちら見つめる不気味な顔が。
なんとこれはシーレの肖像だといいます。

解説の小林明子さん曰く、「(女性の)悲しみの原因がシーレにあって、それをシーレ自身が描ているっていう。そういう風に解釈することもできる」とのこと。

なんだかすごく複雑な背景の絵ですね。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この《悲しみの女》を描いた同年、シーレの元に一大事が起こります。
それが「ノイレングバッハ事件」と呼ばれるものです。

とあるシーレファンの14歳の少女が家出をして、シーレの元にやって来ます。
シーレはその少女を保護してあげたのですが、それが明るみになり「未成年誘拐の疑い」で勾留されてしまいます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こうして警察がシーレの元にやってきますが、そのアトリエから大量のヌード作品やヌードデッサンが発見されます。
それらを少女に見せたのではないかということで、「猥せつ画の流布」の容疑をかけられ、有罪判決を受けてしまいます。

そして24日間にわたり、勾留されてしまうのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

これはシーレにとっては非常にショッキングな出来事で、彼自身かなり落ち込んだといいます。
この事件以降、作風にも変化が現れるようになっていきました。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

今回の展覧会のメインビジュアルである《ほおずきの実のある自画像》は、この「ノイレングバッハ事件」の後に描かれたものです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この事件で落ち込んだシーレを支えたのがワリーでした。
この2枚の対の作品が描かれたのは、シーレワリーに対する感謝の気持ちだったのかもしれません。

今回の記事はここまでになります。

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