2020年3月21日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【ロンドン・ナショナル・ギャラリーの名品で巡る イギリス肖像画の世界】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それでけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーについて
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
先ず初めにロンドン・ナショナル・ギャラリーについてご紹介していきます。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーは1824年に創立された、ヨーロッパでは比較的新しい美術館になります。
ちなみにフランスのルーヴル美術館は1793年(フランス革命の4年後)に開館しました。
そのコレクションは質が素晴らしく、年代も幅広い事から「美術史の教科書」と称えられています。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、その基となった作品が王室のコレクションではないという特徴があります。
銀行家のジョン・ジュリアス・アンガースタイン(John Julius Angerstein、1735-1823)の38点のコレクションが創立の核になっています。
彼はロンドンの金融街で活躍した銀行家です。
画家の友人を持ち、特にトマス・ローレンスとベンジャミン・ウェストからの助言を元に美術作品を収集していきました。
彼の38点の作品があったおかげで今のロンドン・ナショナル・ギャラリーがあったと言えるのです。
その後も個人コレクターからの寄贈等によって幅広い時代のヨーロッパ絵画を有するコレクションに成長しました。
ロンドン・ナショナル・ギャラリー展(国立西洋美術館)
*開催状況などについては美術館公式サイトなどでご確認願います。
上野の国立西洋美術館で6月14日(日)まで開催されている「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」。
「世界初開催!」と銘打たれている本展覧会。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーはまとまった数の作品を貸し出す事に慎重な事でも知られ、これまでイギリス国外で所蔵作品展が開催された事はありませんでした。
こちらの作品を見覚えある方も多いのではないでしょうか。
2017年に開催された「怖い絵展」のメインビジュアルにもなった《レディ・ジェーン・グレイの処刑》です。
じつはこの作品もロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵の作品になります。
(*今回のロンドン・ナショナル・ギャラリー展には展示されていません)
中野京子さんによると、こちらの作品を借りるのもかなり大変だったとか。
(☛こちらで詳しくまとめていますので、よろしければご覧ください。)
全部で61点の作品が来日します。その全てが日本初公開です。
フェルメールやレンブラント、ゴッホなどビッグネームの作品を見る事ができます。
今回ほどの規模で所蔵作品展を開催するのは、200年近いロンドン・ナショナル・ギャラリーの歴史の中でも初めての事です。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーの館長も「日本に開館したロンドン・ナショナル・ギャラリーの凝縮版」と言っているほどです。
コロナウィルスの影響で開催未定になってしまったのが
本当に残念です(2020年4月12日現在)
《アンドリューズ夫妻》トマス・ゲインズバラ
さてここからはロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵の作品について見ていきましょう。
(今回開催される「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に出展されない作品もご紹介しています。ご留意の程よろしくお願い致します。)
イギリスにおいて、「肖像画」は独自の地位を占めるものといえます。
18世紀以降、多くの画家がその腕前を競いました。
《アンドリューズ夫妻》1750/52年頃
トマス・ゲインズバラ
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵
(*今回の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」には出展されていません)
まずご紹介するのは18世紀イギリス絵画を代表する画家、トマス・ゲインズバラの作品です。
彼の20代前半の作品《アンドリューズ夫妻》です。
木陰で身を寄せるカップル。
背景には穏やかな田園風景が広がっています。
モデルは、イギリス東部サバドリーの若き領主ロバートとその妻のフランシスで、二人の結婚を記念して注文されました。
新婚の二人の仲睦まじい姿が見て取れます。
新郎のロバートは猟犬を従えて猟銃を脇に抱えています。
この当時狩猟は上流階級だけが嗜むことのできる娯楽でした。
これにより彼が高い地位の人間である事が分かります。
一方の新婦のフランシスは、ベンチに腰掛けています。
爽やかな水色のドレスが、二人の生活が始まったばかりであることを表しています。
よくある肖像画のようにかしこまったポーズではなく、くつろいだ様子で描かれています。
この作品のように親密な家族の姿を描いた肖像画は、カンヴァセーション・ピースと呼ばれます。
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
このカンヴァセーション・ピースは当時のイギリスで流行していました。
ゲインズバラの《アンドリューズ夫妻》もその系譜にあると言えます。
しかし彼はそこに独自性も加えています。
作品をよく見てみますと、本来主役であるはずの新婚夫婦が端に追いやられ、田園風景が画面の大半を占めているのです。
画家トマス・ゲインズバラについて
若き日のトマス・ゲインズバラは(Thomas Gainsborough、1727-1788)、肖像画よりも風景画で成功する事を夢見ていました。
「肖像画はお金のために、風景画は楽しみのために」と言っていたほどです。
当時は風景画よりも肖像画の方が需要が高かったのです。
自分の描きたいものと求められるものの間で彼はある事を思いつきます。
「田園風景の中に人物を描いてしまおう!」と。
その結果カンヴァセーション・ピースに風景画を組み合わせた斬新な肖像画が出来上がったのです。
《朝の散歩》1785年
トマス・ゲインズバラ
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵
(*今回の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」には出展されていません)
その後、ゲインズバラは肖像画家の名手として知られていきます。
そして61歳で亡くなる晩年まで、700点以上の肖像画を残しました。
「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」出展作品
ここで東京国立西洋美術館で開催される「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」に出展されるゲインズバラの作品をご紹介していきます。
《シドンズ婦人》1785年
トマス・ゲインズバラ
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵
モデルのシドンズ婦人は当時の人気女優です。
彼女の纏っている衣服も当時の最先端のものです。
お洒落な洋服ですね~
横顔も綺麗です!
《水飲み場》1777年以前
トマス・ゲインズバラ
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵
水溜まりで山羊や牛が静かに水を飲んでいます。
その奥には牧夫、そして水溜まりの脇にも人の姿が見えます。
その内の一人は、暮行く夕陽を指しているようにも見えます。
この作品は、1777年のロイヤル・アカデミー展に出展されたと考えられています。
作家で好古家、政治家でもあったホレス・ウォルポールはこの作品を「これまでにイングランドで描かれた最も素晴らしい風景画だ」と称賛しています。
パート1は一旦ここまでです。
パート2へと続きます♪
こちら☚からどうぞご覧ください♪
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