【日曜美術館】大阪中之島美術館③【美術番組まとめ】

日曜美術館

2022年2月27日にNHKで放送された「日曜美術館」の【大阪中之島美術館〜蒐(しゅう)集もまた創作なり〜】の回をまとめました。

今回の記事はパート3になります。
前回のパート2はこちら☚からご覧ください。

番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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慈雲《不識》

山本發次郎が好んだ個性的な線の描写。
番組ではそんな發次郎佐伯作品との共通点を見出していたかもしれない、墨跡の作品も取り上げていました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらは慈雲(じうん、1718-1805)という江戸時代後期に活躍した僧侶の墨跡です。
線だけで表わされた達磨の頭上に「不識(ふしき)」という文字が描かれています。

發次郎はこの作品に見られる筆の動き、かすれ具合、スピード感が生み出す躍動感・生命感が好きだったのでは?と美術館館長の菅谷氏は言います。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

また作者が有名か無名かという基準ではなく、その個性や作品に現れているものを好きだった發次郎
展示作品を見ていくと、發次郎のコレクターとしての”心の動き”が見えてくるといいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

やっぱりコレクションというのは一点一点の作品の素晴らしさとかでもあるんですけれども、やはり一堂に並べた時にそこに立ち現れてくる個性というものも当然ある」(菅谷氏)

”作品の蒐集”という行為そのものが独自性を備えた行為であり、そういった意味でも「創造性のあるもの」だといえるのです。

發次郎の佐伯への思い

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

發次郎の邸宅の庭で撮られた一枚の写真。
發次郎を中心に、その周りを囲むのは大学で美術史を学ぶ学生たちです。

發次郎は「作品を見たい」とお願いされると、たとえ知り合いでなくともコレクションを見せてあげたといいます。

芸術は開かれたもので、個人が占有するものではない」と考えていた發次郎
「より多くの人に鑑賞して欲しい」という思いから、美術館の建設を目指すようになります。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

1937年には、發次郎自らが企画・作品選定をした佐伯祐三の展覧会が開催されました。
「より多くの人に見て欲しい」という思いから、入場料は無料でした。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

また發次郎は展覧会の開催に合わせて佐伯祐三の画集も自費出版するほど、熱の入れようでした。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

發次郎の次男である清雄さんは、發次郎佐伯への思いを口にしていたのを記憶しています。
おそらく父は佐伯祐三とめぐり合って、佐伯を世間に出す役割を自分が果たす、果たしたということを非常に自分の身に余る幸せという、滅多に言わん言葉を使っていました

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

本当に何のために生まれてきたかというと、佐伯を世に出すために生まれてきたと言ってもいいくらいの使命感を感じていたと思います」(發次郎の次男・清雄さん)

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

發次郎は美術館建設の構想を佐伯の家族にも話していました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

しかし戦争が激しくなるにつれて、美術館の建設どころか、作品の保管すらままならない状況になっていきます。
空襲から逃れるために作品を疎開させようとするも、輸送用のトラックでさえ手配できない状況でした。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そこで發次郎にあるアイデアを思いつきます。
それは輸送の名目を、自身が所有していた天皇直筆の和歌や手紙である『宸翰(しんかん)』を運ぶため、とすることでした。

發次郎は直筆ゆえに著した人の個性が伺い知れる宸翰を熱心に蒐集していたのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

宸翰を焼失させるなど、こんな不忠なことはない」として軍の司令部に輸送を嘆願。
こうして輸送用のトラックを手配することに成功したのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

宸翰を運ぶ名目で入手したトラックに、佐伯祐三をはじめ、モディリアーニなどコレクションの一部を積み込み、生まれ故郷の岡山に疎開させることに成功します。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

その3週間後、住まいのある神戸は空襲の被害に遭います。
發次郎の邸宅は全焼し、蒐集していた佐伯作品のおよそ8割の他、所有していたコレクションの多くが灰になってしまいます。

大阪中之島美術館のコレクション

大阪中之島美術館の収蔵作品にはコレクターからの寄贈によるものが多くあり、それが美術館建設の原動力となりました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

發次郎がなくなって32年後の1983年。
574点の美術品が遺族から大阪市に寄贈されました。

この寄贈がきっかけとなり、發次郎の夢だった美術館建設が再び動き出します

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

その5年後の1988年には、大阪の画廊経営者の高畠良朋(たかはた よしとも)佐伯作品が寄贈された事に感銘を受け、自身もコレクションを寄贈します。

その高畠コレクションを代表する一枚がこちらの《プリンセス達》という作品。

作者のマリー・ローランサンは20世紀初頭、まだ女性の画家は数少ない頃にフランスで活躍しました。
画家の特徴である柔らかなタッチが特徴的な一枚です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

コレクションの中には佐伯に強い影響を与えたモーリス・ド・ヴラマンクの作品も。

高畠はいつか大阪に生まれるであろう美術館の事を考えて、選りすぐりの作品を寄贈したといいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

日新製鋼の社長を務めた実業家、田中徳松のコレクションも1987年に寄贈されています。

生まれ育った大阪に役立てて欲しい」という彼の遺言に従い、遺族が絵画作品等19点を寄贈しました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

明治から昭和にかけて活躍した洋画家、岡田三郎助(おかださぶろうすけ、1869-1939)が描いた《甲州山中湖風景》。

パリに渡り、ラファエル・コランに師事した岡田は「西洋と和の融合」を信条に作品を描き続けました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

異なる性質を持った美術愛好家の個人コレクションが集まることにより、大阪中之島美術館独自の収蔵作品となっていったのです。

サントリーポスターコレクション

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

美術館建設の計画は2000年代に入り、財政悪化を理由に凍結されてしまいます。
しかしその間も寄贈や寄託が続きました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

2012年、大阪創業の飲料メーカーであるサントリーがポスターコレクションを寄託します。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

お酒や飲料を扱うメーカーという事で、生活に近い芸術であるポスターを収集したのです。

その総数約1万8000点。
古今東西、様々なポスターを網羅した世界的コレクションで、中にはピエール・ボナールアドルフ・ヘンシュタインなど著名な画家の作品も含んでいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

ポスターを芸術の域に高めたその第一人者、ロートレックの作品。
この『ムーラン・ルージュ、ラ・グーリュ』はロートレックが最初に手掛けたポスターで、美術史に残る傑作です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

この(ポスター)コレクションを見ていくとですね、まさにその視覚という、”見る”ということの発展とか、それの変遷とか、『何が私たちに訴えかけてきたのか』ということの歴史が分かる。それはまた次の創作につながる可能性もあるわけです」(大阪中之島美術館館長・菅谷富夫氏)

そして開館へ

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

そして2013年には美術館建設計画が再び動き出します。
計画を練り直していた大阪市がゴーサインを出したのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

当初、大阪に新しく美術館ができる事に対しては、否定的な意見もあったといいます。
しかし館長の菅谷氏は「美術館は必要である」と強く思い続けていました。

發次郎の時代から約100年を経て開館した大阪中之島美術館
菅谷氏は開館までの苦労よりも、この場所に美術館ができて、「ほら美術館って面白いよね」という形で伝えることができた事が喜びであり、当時の否定的な意見への回答になるのでは?と語ります。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

發次郎の孫である西園寺幸夫さんも美術館に足を運び、次のように語っています。

祖父が芸術とか美術というのは閉ざされたものではないと。広く一般に公開しないといかん、という風に言っていましたから。今日こうやって皆さんに見て頂いているところを拝見すると、私としてもたいへん嬉しいと思いますし、きっと祖父も願いはほとんど叶えられたという事じゃないでしょうか?

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

「(發次郎がこの光景を見ていたら?の問いに対して)難しい人ですから、きっと飾り方とか色々注文はあったかもしれませんね」(西園寺氏)

今回の記事はここまでになります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

コメント

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