【美術展レポート】ハマスホイの作品で気になった5作品

2020年

今回も前回に引き続き、「ハマスホイとデンマーク絵画」のレポートです。
この記事ではヴィルヘルム・ハマスホイの作品で気になった作品を5作品、感想や解説をまとめていきます。

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ヴィルヘルム・ハマスホイとは

ヴィルヘルム・ハマスホイ(Vilhelm Hammershøi、1864-1916)は、19世紀末デンマークを代表する画家です。

生まれは1864年。同い年の画家には、あのロートレックがいます。

コペンハーゲン王立美術アカデミーで絵を学び、1911年にローマの国際美術展ではあのクリムトと並んで一等賞を取るなど、生前は高い評価を確立していました。

北欧のフェルメール」と呼ばれるハマスホイですが、23歳のときにオランダを訪れています。
この時アムステルダム国立美術館には、フェルメールの《手紙を読む青衣の女性》が収蔵されていました。
恐らくこの時にフェルメールの作品を目にしていると考えられます。
ハマスホイの描いた《手紙を読むイーダ》からはその影響が見て取れます。


《手紙を読むイーダ》1900年
ヴィルヘルム・ハマスホイ
個人蔵

*「ハマスホイとデンマーク絵画」には出展されていません。


《手紙を読む青衣の女性》1662-63年
ヨハネス・フェルメール
アムステルダム国立美術館蔵

*「ハマスホイとデンマーク絵画」には出展されていません。

1916年に51歳でこの世を去るまで、残した総作品数は約370点
その内の約3分の1が「室内画」になります。

生前は国内外問わず高い評価を得ていたハマスホイですが、死後は急速な時代の変化もあって忘れ去られた存在でした。
その点は奇しくも、フェルメールと同じと言えます。
1980年代からは世界中で展覧会が開かれるようになり、徐々に世界的に人気が高まってきました。
日本では、2008年に国立西洋美術館で展覧会が開かれました。

今回の「ハマスホイとデンマーク絵画」では約40点の作品が来日しています。
日本の美術館が所蔵している彼の作品はわずか一点なので、日本で彼の作品が見られるのは貴重な機会といえるでしょう。

今回は私が気になった作品を5作ピックアップしていきます。
普通に5作選ぶと、全部室内画になってしまう可能性が高いので(笑)
幅広く選んでいこうと思います。

《背を向けた若い女性のいる室内》


《背を向けた若い女性のいる室内》1903-04年
ヴィルヘルム・ハマスホイ
デンマーク、ラナス美術館蔵
一番ビビッときたのはやっぱりこの作品ですね。
見ての感想は「とにかく美しい」でした。

左上の画中画や壁のライン、そして棚のライン。
全ての線という線が、垂直もしくは平行の直線だけで構成されています。

そんななか静物画のような存在感を放つパンチボウル。
丸みを帯びたそのパンチボウルが、直線だけの空間にアクセントをもたらしています。
それはどこか女性のシルエットと呼応するかのようです。

また、ハマスホイは画面全体のバランスを操作するために、パンチボウルは実際の大きさに比べて大きく、左上の画中画も拡大して、実際のサイズを変えて描いています

北欧のフェルメール」が最も感じられる、構成美が凝縮された一枚だと思いました。
見ていて何だか気持ちが良い作品です。

今回の展覧会のメインビジュアルにもなっているこの作品は、ハマスホイの代表作ともいえる作品です。
しかし画家の生前にはこの作品の存在はほとんど知られておらず、ブラムスンによって書かれた作品総目録にも書かれていませんでした
今は美術館に収蔵されていますが、20世紀半ばまで個人コレクターの一室にあったというのですから驚きです。

《画家の妻のいる室内、ストランゲーゼ30番地》

《画家の妻のいる室内、ストランゲーゼ30番地》1902年、デンマーク国立美術館蔵

画像出展元:展覧会公式図録より

こちらも構成美に溢れる気持ちの良い作品です。

他のハマスホイ作品には滅多に登場しない、原色(テーブルクロスの赤色)が画面にアクセントを与えています。

全体的に灰色っぽく、人物が後姿のものが多いハマスホイ作品の中で、この作品は色があり女性もこちらを向いているという事で、なぜか安心感のようなものも感じます。

あと、なんとなくフェルメールの《眠る女》をこの作品を見ていて思い出しました。


《眠る女》1657年頃
ヨハネス・フェルメール
ニューヨーク、メトロポリタン美術館蔵

*「ハマスホイとデンマーク絵画」には出展されていません。

女性の姿勢も似ていますし、赤色のイメージもどことなく近い感じがします。

《室内、蝋燭の明かり》

《室内、蝋燭の明かり》1909年、デンマーク国立美術館蔵

画像出展元:展覧会公式図録より

ハマスホイの室内画を見て思ったことがあります。
人がいない室内画は生活感が感じられないので、「空き家」みたいだなと。
人がいても後姿だと、生命感を感じられず「マネキン」みたいだなと。

なので、《画家の妻のいる室内、ストランゲーゼ30番地》はモデルがこちらを向いて本を読んでいるのを見て、
「あぁ、ちゃんと生活している人がいるんだな」と安心しました。

一方この《室内、蝋燭の明かり》には人は描かれていません。
しかし蝋燭に火が灯っている事から、人がいる、もしくはいたのは間違いなさそうです

これから誰かが席に着くのか、それとも皆が席を離れた後なのか。
それは分かりませんが、でも人の存在を感じます。

なぜだかこれを見てすごくほっとした気持ちになりました。
炎の揺らめきも、どこか生命を感じられます。

右側のテーブルの縦横のラインは、奥の壁の区切り線とそれぞれ平行になるように描かれています。
中央のテーブルと画面の枠の円が呼応しており、画面構成の妙を感じられる点でも好きな作品です。

《チェロ奏者、ヘンリュ・ブラムスンの肖像》

《チェロ奏者、ヘンリュ・ブラムスンの肖像》1893-94年、ブランツ美術館蔵

画像出展元:展覧会公式図録より
では続いては人物画から一枚ピックアップしたいと思います。

自画像や肖像画が何点かありましたが、その中でも私が一番良いなと思ったのはこの作品でした。

モデルはのちにデンマーク王立管弦楽団のチェロ奏者となる、ヘンリュ・ブラムスン(1875-1919)です。
彼はハマスホイにとって重要なパトロンであったアルフレズ・ブラムスン(作品総目録を書いた人)の息子にあたる人物です。
1880年代末から90年代にかけて、このパトロン一家の肖像画をハマスホイは描いています。

個人の肖像画というよりは、一人のチェロ奏者として描かれているようです。
ハマスホイ自身も、チェロのレッスンを一時受けていたといいます。

《農家の家屋、レスネス》


《農家の家屋、レスネス》1900年
ヴィルヘルム・ハマスホイ
デーヴィズ・コレクション蔵

5作品目、ラストは風景画から一枚ピックアップしました。

こちらも画面構成が美しいなと思いました。

画面をちょうど上下に2等分したところで、空と家屋に分かれています。
配置されている窓も、ある程度規則性を持って配置されており、画面にリズム感を与えています。

これは僕が実際に定規で測りながら、付けたものです(笑)
水色で示した線はミリ単位の差はあれど、ほぼ同じ長さです。
窓から窓、もしくは扉までの距離一定の長さで描かれているのが分かります。
これにより画面にリズム感を与えています。

まぁ、こじつけみたいなところもありますが・・・笑

タイトルにある「レスネス」というのはデンマークの地名です。
この作品が描かれた1900年、ハマスホイ夫妻はこの地で夏を過ごしました。
この作品はその時描かれた三点の油彩画作品の一つです。

最後までご覧頂きありがとうございました(*^-^*)

コメント

  1. […] ハマスホイの作品のレポート(パート2)は⇒こちらから ハマスホイ以外のデンマークの画家の作品(パート3)は⇒こちらから […]

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