【レポート】 テート美術館所蔵 コンスタブル展@三菱一号館美術館

2021年

こんにちは、masayaです。
美術ブログ「masaya’s ART PRESS」をご覧頂きありがとうございます。

今回は三菱一号館美術館にて2021年2月20日㈯から2021年5月30日㈰まで開催の「テート美術館所蔵 コンスタブル展」の感想レポートを書いていきたいと思います。

鑑賞日:2021年2月23日(火・祝)

展覧会名:テート美術館所蔵 コンスタブル展

鑑賞時間:60分
料金:1,900円(一般)
写真撮影:1作品のみ《虹が立つハムステッド・ヒース》
グッズ購入額:2910円(図録)

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展覧会の感想

三菱一号館美術館で開催中の「テート美術館所蔵 コンスタブル展」に行ってきました。
コンスタブルは19世紀イギリスで活躍した風景画家です。

今でこそ「風景画」というのは1つのジャンルとして確立されていますが、コンスタブル以前は”風景だけを描いた絵”というものは考えられないものでした。
「人間を描く事」こそ絵画の使命だと考えられていたからです。

そこでコンスタブル、そして彼より一歳年上のターナーは刷新された風景画を発表。
当時の国内外への流行や、富裕層による需要の高まりを受け、それまで低い地位とされてきた「風景画」の評価を押し上げたのです。

この展覧会はイギリスのテート美術館から来た60点の作品と、国内所蔵作品およそ20点、トータル85点の作品が展示されています。

masaya的おススメの鑑賞法


《虹が立つハムステッド・ヒース》1836年
ジョン・コンスタブル
テート美術館蔵
撮影:masaya

こちらは今回撮影OKだった《虹が立つハムステッド・ヒース》
という作品です。

個人的にこの展覧会でおすすめしたいのが、「作品横の説明を見ない」という鑑賞法です。

美術館で作品を見る際、作品よりも横の説明を見ている時間が長い、という人は結構いるのではないでしょうか?

僕も結構そうなってしまいがちですが…

例えば「神話画」だとその神話のストーリーが分からないと作品の世界に入っていけないですし、「人物画」や「肖像画」だと描かれている人がどういう人か理解したほうが理解が深まると思います。

しかし今回の展覧会はほとんど「風景画」なのです。
もちろんどこを描いているとか、どんな土地かというのも大事ですが、是非作品そのものと向き合う時間を多くとって頂くと、より楽しめるのではないかと思いました!

気になった作品

ここからは私が今回の展覧会で気になった作品を紹介していきたいと思います。

《自画像》コンスタブル


《自画像》1806年
ジョン・コンスタブル
テート美術館蔵

先ず展覧会の最初を飾るのは、コンスタブルの自画像です。
僕の知る限りでは、コンスタブルの自画像はこちら以外ほとんど見た事がなく、彼が紹介されるときに決まって出てくるのがこちらの自画像になります。

ちなみに青年時代のコンスタブルは”背が高くて美しく、顔立ちも整っていた”と残されており、イケメンと評判だったそうです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より

1776年にイングランド東部のイースト・バーゴルドで生まれたコンスタブル
彼は愛着ある故郷を描くことにこだわっていました。
この作品のような風景の思い出こそが、彼が画家を志すきっかけになりました。

時代的には「印象派」や「ラファエル前派」よりも一昔前の画家です。

《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》コンスタブル


《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》1816-17年
ジョン・コンスタブル
テート美術館蔵

こちらは展覧会のメインビジュアルになっていた作品ですね。
画面が明るく、緑も青々としていてすごく綺麗な作品だなと思いました。

この作品の制作が開始されたのが、コンスタブルが結婚を機にこの地を離れてロンドンに引っ越す直前、40歳の頃でした。
つまりこの作品は故郷に対する別れの気持ちを込めた描いた作品なのです。

馬に乗る少年は、この地で育ったコンスタブル自身を重ねているのかもしれません。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より

彼は目の前の風景を忠実に写した画家でした。
この習作は《フラットフォードの製粉所(航行可能な川の情景)》を制作する際に、透写図を使って描いたものです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より

キャンバスに転写する時には、正方形のグリッドを用いて一区画ずつ引き伸ばしました。


それにより、完成版は遠近法の正確さが際立っています。

1832年ロイヤル・アカデミー展での対決 コンスタブル vs ターナー

こちらは今回の展覧会の目玉の一つ「1832年ロイヤル・アカデミー展での対決」の作品になります。


《ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号》1832年
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー
東京富士美術館

イギリスを代表する風景画家ターナーがロイヤル・アカデミーに出展した作品です。
巨大な軍艦が銀色に輝く波の上を進んでいます。


水面には赤いブイが浮かんでいます。
実はロイヤル・アカデミーで展示された際に、同じ展示室に飾られていた作品を見たターナーが、競争心に駆られ、その場で新たに描き加えたものです。


《ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日)》1832年発表
ジョン・コンスタブル
テート美術館蔵

そのターナーが見たのがコンスタブルのこの作品でした。

これは1817年の夏に開通したロンドンのウォータールー橋の式典の様子を描いたものです。
コンスタブルは現地でこの光景を目にし、簡単なデッサンを残しました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より

ターナーコンスタブルの絵に観客の目を奪われることを恐れて、鮮烈な印象を放つ赤色のブイを描き加えたのです。

ターナーは若干24歳でロイヤル・アカデミーの準会員、そして26歳で正会員に選出されるなど、早くから評価されてきました。

一方コンスタブルはというと、ロイヤル・アカデミーの正会員になったのはターナーから遅れる事27年、52歳のときでした。
「遅咲きの画家」であったといえるでしょう。

《月光に照らされるネットリー・アビー》コンスタブル


《月光に照らされるネットリー・アビー》1833年頃
ジョン・コンスタブル
テート美術館蔵

個人的にこの展覧会で一番気になったのがこちらの作品でした。
コンスタブル作品の多くが、晴れ、あるいは曇りの日中の緑の多い風景を描いてたのに対して、この作品の場面は夜、さらに廃墟を描いているという事で、かなり異質に感じられました。

解説によると、この絵は詩集の挿絵として描かれた可能性が高いという事で。
「なるほど!道理で雰囲気が他とは違うのだな」と納得しました。

《雲の習作》コンスタブル


《雲の習作》1882年
ジョン・コンスタブル
テート美術館蔵

コンスタブルは空の表現にも関心を示しました。
光によって変化する様子や、雲の微妙な動きを捉えようと試みます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より

2年の間に約100点にも及ぶ空の習作を残しました。

《虹が立つハムステッド・ヒース》コンスタブル


《虹が立つハムステッド・ヒース》1836年
ジョン・コンスタブル
テート美術館蔵

こちらはコンスタブル晩年の一枚です。
この頃の彼の作品は、写実とは少し違った方向性を見せるようになります。

ここに描かれている風車小屋は、この地域には存在しません。


空には2本の虹がかかっています。
最愛の妻を亡くして以降、コンスタブルは虹をよく描くようになります。

この虹は、悲しみから希望を見いだそうとした彼の心の風景なのかもしれません。

いかがでしたでしょうか。
今回の記事はここまでになります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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