【美術展レポート】黒田記念館・特別室展示

2020年

皆さまは、東京国立博物館の「黒田記念館」をご存じでしょうか?
東京国立博物館(以下トーハク)の正門を向かって左側に進むと、道を一本隔てた所にその「黒田記念館」があります。

今回は2020年1月2日から1月13日まで開かれていた特別室のレポートを書いていこうと思います。

鑑賞日:2020年1月13日(月・祝)
「黒田記念館・特別室展示」
会場:東京国立博物館 黒田記念館
鑑賞時間:約30分
料金:無料(トーハクの半券等も必要ありません)
写真撮影:OK
(スタッフさんに確認し、SNSやブログ等に掲載する事も問題ないとのことです
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黒田記念館について

「黒田記念館」は、明治時代に活躍した黒田清輝(くろだせいき)の作品を展示している美術館です。
黒田清輝(1866-1924)は、フランスで絵画を学び、日本に明るく清新な洋画を持ち帰り画壇に新風を巻き起こしました。
日本近代絵画の父」と呼ばれています。
その彼の遺言に「遺産を美術界に役立てるように」という言葉があり、その彼の遺産の一部を使い建てられたのが、黒田記念館です。

建物の造りはクラシックな洋館造りとなっており、設計は大正・昭和を代表する建築家の岡田信一郎が手掛けました。
壁にはスクラッチタイルと呼ばれる、模様をつけたレンガが使われており、これは竣工当時に流行していたデザインです。

館内の天井は元々自然光を取り入れられるようにと、天窓がついていました。
しかし、自然光は絵画作品を傷めてしまうという理由で、後に人工照明に切り替わりました。

収蔵作品数は約300点。それらを定期的に入れ替えて展示しています。

特別室について

その黒田記念館の中に「特別室」と呼ばれる部屋があります。
ここからはその特別室に展示されている4点の作品を鑑賞した感想と解説をまとめていきます。

《智・感・情》

 

《智・感・情》重要文化財、カンバス・油彩、明治32年(1899)

何とも言えない神々しさと迫力のある作品でした。
他の絵を見ていても、どこか存在が気になるのは単に画面が大きいという理由だけではないと感じました。
近くでよく見ると発見があり、輪郭線が赤く描かれていました。

黒田は、フランスの美術学校の教育法を取り入れていきます。

具体的にその教育法は何かというと、「ヌードのデッサン」でした。
「人体描写」が基本であるとパリで学んだ黒田は、ヌードデッサンを自分が教わったように若い学生たちに教えます。
しかし、当時の日本に「ヌード」を芸術として捉えるような意識はなく、風俗を乱すものとされていました。
その概念を打ち破りたかったのでしょう、黒田は帰国してからまるで挑発するかのように、ヌードの作品を発表しています。

読み方は「ち・かん・じょう」と読みます。
「日本の洋画を世界に認めさせたい」という黒田の思いから、この作品は1900年のパリ万国博覧会に出品され、見事銀牌(ぎんぱい)を受賞しました。
日本人の顔と西洋人の理想的なプロポーションを融合させた作品です。

しかし、日本では「ヌードは風紀を乱すもの」とされ批判されます。
この作品が掲載された雑誌が発禁処分になったりしました。

《湖畔》重要文化財、カンバス・油彩、明治30年(1897)

 

《湖畔》重要文化財、カンバス・油彩、明治30年(1897)

思っていたよりも、色合いが薄くまるで水彩画のようでした。
ずっと眺めていると、女性の着物の立体感やが出てきたりと印象が変わってきました。
是非椅子にかけてじっくり見て頂きたい作品です。

黒田作品で恐らく一番に有名であろう作品、《湖畔》。
背景は箱根の芦ノ湖と彼岸の山です。そこで団扇を手に涼を取る女性の姿を描いています。
モデルは黒田の妻の照子夫人です。
実は元々の題は《湖畔》ではなく、《避暑》というものでした。

この作品は油彩で描かれていますが、その優しいタッチはまるで水彩画のようにも見えます。
軽やかな色彩で全体がまとめられています。
それまでの日本の油彩画とは一線を画す、明るい画風です。

黒田は西洋の美術をそのまま日本に持ってくるのではなく、日本人の感性に合うようにアレンジされた洋画を残しました。

《読書》

 

《読書》カンバス・油彩、明治24年(1891)

画面に静かな時間が流れる落ち着きのある作品、という印象です。

この作品《読書》は黒田が留学中にグレーという所で描いた作品です。
フランス芸術家協会にも出品され、初入選を果たします。
これは黒田が絵を学び始めて若干4年目での快挙でした。

《舞妓》

 

《舞妓》重要文化財、カンバス・油彩、明治26年(1893)

西洋の印象派の技法で、日本の着物の女性が描かれています。
筆触分割で描かれた着物の柄は、至近距離でみるとよく分かりませんが、離れて見ると抜群に綺麗な着物柄が見えてきます。
西洋で発祥した技法ですが、それで日本の着物を描くと抜群に美しい事が分かります。

この作品は黒田がフランスから帰国して、最初に仕上げた作品と言われています。
また《湖畔》にも見られる「女性」と「水」、これは黒田が好んで描いた組み合わせでした。

余談:黒田清輝が西洋画の他に日本に持ち帰ったもの

黒田がパリから持ち帰ったものは、西洋画の技法だけではありません。
もうひとつ黒田がパリから持ち帰って、日本に定着したものがあります。

それは画家が被る「ベレー帽」です。
パリの美術学生たちが、ベレー帽を被り作品を制作していたのに影響され、そのファッションを日本に持ってきたのが黒田なのです。
私たちが画家をイメージする時にもう割とセットで浮かんできますよね。

ドラえもんに出てくるジャイ子、漫画家を目指す彼女もベレー帽を被っていますね

次回の特別室展示

黒田記念館の特別室は、年間を通して三回新春・春・秋)に公開されます。
次回の開室もすでにきまっており、
2020年3月24日㈫から4月5日㈭
となっております。

是非今回見に行けなかった方は、こちらの機会に是非(^^♪

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