【過去美術展レポート】没後90年記念 岸田劉生展@東京ステーションギャラリー

2019年

*こちらは前ブログからのリライト記事になります。

鑑賞日:2019年10月14日(月・祝)
展覧会名:没後90年記念 岸田劉生展
会場:東京ステーションギャラリー
鑑賞時間:約30分
料金:1,100円(当日一般)
写真撮影:NG
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感想

僕の岸田劉生のイメージは、とにかく自分の娘(麗子)を沢山描いた人!でした。

でも今回の展覧会を通して、「麗子像」はあくまで画家の一部分であり、実は様々な画風を辿ってきた画家なんだという事を初めて知りました。

水彩画から始まり、印象派のようなタッチからゴッホのような厚塗りの作品。
更にそこから、フォーヴィスム古典ルネサンス、そして日本画への回帰と様々に画風が変化していくのが面白かったです。
「これは本当に一人の画家がすべて描いたのだろうか?」とさえ見ている内に思いました。

またほとんど全ての作品に日付が入っているのも面白いと思いました。
よほど神経質な人なのだな、というのがそういった所から伝わってきました。
展示の後半には、劉生が所持していた写真アルバムが展示されていましたが、そこでも几帳面にいつ・どこで撮った写真なのか事細かに書かれていました。

今回自分にとって新たな発見だったのは、劉生静物画が素晴らしいという事です。
「これぞ静物画!」というものを見せられた気がしました。
対象の本質とでも言うのでしょうか。その存在感までも描き切っているなと感じました。

あと、麗子像はやっぱり少し怖いなと思いました(笑)

気に入ったトップ5作品

ここでは私が良かったと思った作品を5つ挙げて、感想や解説を書いていきます。

《道路と土手と塀(切通之写生)》


《道路と土手と塀(切通之写生)》1915年
岸田劉生
重要文化財
東京国立近代美術館蔵
教科書や書籍などでは何度も目にした事のある有名な作品です。
しかし実物は、やはりテレビや印刷では伝わってこない圧倒的な迫力がありました。
紛れもない、本展覧会の個人的ナンバーワン!

これは是非実物を見て頂きたいですね。
実物を見てみないとその迫力は分からないな、と思いました。

一見本当ただの坂道の風景ですが、まるでこちらに坂道が迫ってくるようなそんな迫力があります。
他にも何点か風景画の作品がありましたが、この作品は別格だなと思いました。
重要文化財なのも頷けます

《麗子肖像(麗子五歳之像)》

《麗子肖像(麗子五歳之像)》1918年
岸田劉生
東京国立近代美術館蔵

麗子像」が苦手だと言ってもやっぱり実物が見られたのは嬉しかったですね。
この「麗子像」は唯一と言っても良い、可愛らしく描かれています

この作品以外の「麗子像」はちょっと怖いというか、苦手ですが。

実物を見てみると、ものすごく写実的に描かれている事に驚きました。
幼子の手の質感から、着物の布地まで見事に表現されています。

今回新たな発見だったのが、画面上部の赤いアーチにも陰影が付けれていて、且つそれがひび割れしていたことです。

成長していく我が子の五歳のその一瞬を描いているのに、どこかその一瞬が長く、永遠に続いている。
まるでその5歳の娘が昔からいて、この先もずっといるかのような、不思議な感覚になる、そんな作品だと感じました。

《静物(白き花瓶と台皿と林檎四個》


《静物(白き花瓶と台皿と林檎四個》1918年
岸田劉生
福島県立美術館所蔵

こちらは一目見て、「あ、いいな」と思いましたね。

今回は良い静物画が本当に多く、他の作品も素晴らしかったですが、個人的にはこの作品が格段に良かったです。

画像では分かりにくいですが、陶器の質感の表現が本当に見事でした。
ちなみに描かれている花瓶と台皿は、本展で肖像画が展示されていたバーナード・リーチが作ったものとの事です。

部屋に飾りたいな、と思える作品です。

《画家の妻》


《画家の妻》1915年
岸田劉生
岡山県、大原美術館蔵

岸田劉生が自身の妻を描いた作品です。
これもすごく良かったですね。

上部がアーチ状の額になっているのもお洒落ですし、横から人物を捉えた構図だったり、そのポージングもすべてが美しいと思いました。

「PORTRAIT OF SHIGERU」の文字の下に描かれた、盾形のエンブレムを洒落ています。

《満鉄総裁邸の庭》


《満州総裁邸の庭》1929年
岸田劉生
箱根、ポーラ美術館蔵

本展覧会の最後に展示されていた作品です。
色がすごく鮮やかで、見ていてすごく心地の良い作品でした。

ヨーロッパの印象派の画家たちが目指した、光だったり空気を描こうとしたその信念に通づるものを個人的には感じました。

様々な画風の変遷を辿ってきた最後に、また初期の印象派のような作品に戻ってくるというのは感慨深いものを感じました。

そのほか気になった作品

ここではトップ5には入りませんでしたが、個人的に気になった作品をタイトルだけメモしていきます。
*作品前の番号は展覧会の出展番号になります。

65.《古屋君の肖像(草持てる男の肖像)
すごくリアルでした。写真のようでもありますが、むしろ写真よりリアルに見えました。
「あぁ、きっとこんな人だったのだろうな」とその人となりも分かるような、そんな出来栄えでした。

67.《壺の上に林檎が載って在る
69.《林檎三個
72.《静物(青布と林檎四個)
125.《竹籠含春

東京ステーションギャラリーについて

展示の順路が若干分かりづらいなと感じました。
でも建物自体特殊な構造をしているから仕方ないのかな・・・

私が行った日はちょうど雨が降っていましたが、こちらの美術館は東京駅の中にありますので、雨に濡れずに美術館に行けるので良かったです。

グッズの購入はチケットがないとできませんでした。

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