2019年7月23日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#315 国立西洋美術館「松方コレクション展」~ゴッホ、モネ、ルノワール…歴史に翻弄された奇跡の名画が大集結!~】の回をまとめました。
今回の記事はパート5になります。
前回のパート4はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
今回のパート5では松方幸次郎がパリで購入していった作品について見ていきます。
《貧しき漁夫》シャヴァンヌ
《貧しき漁夫》1887-1892年頃
ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ
国立西洋美術館蔵
ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(Pierre Puvis de Chavannes、1824-1898)は、19世紀フランスを代表する壁画家で、ギュスターヴ・クールベやエドゥアール・マネと同世代の画家になります。
フランスのリヨンの裕福な家庭に生まれたシャヴァンヌは、病気療養のために訪れたイタリアで画家を志します。
彼の作風は分類が難しく、あえていうと写実主義的な作品が多いのが特徴です。
この《貧しき漁夫》はパリのオルセー美術館に別ヴァージョンが収蔵されています。
《貧しき漁夫》1881年
ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ
オルセー美術館蔵
(「松方コレクション展」の出展作品ではありません)
こちらのオルセー版では、横長の構図に陸地が描かれ、花を摘む娘と眠る赤ん坊が描かれています。
オルセー版が描かれたのが1881年で、国立西洋美術館の方が1887-92年という事なので、松方コレクションの方が後に描かれた事になります。
記録によると、エミール・ポワヴァンという愛好家のためにオリジナルに変わるものとして制作されたと考えられています。
国立西洋美術館版の方は縦長に構図が変更され、より漁夫の精神性と静謐さが強調されています。
作品からは宗教画を思わせる要素が随所から感じられます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらに十字架が隠れていますね。
《母と子(フェドー夫人と子どもたち)》カロリュス=デュラン
《母と子(フェドー夫人と子どもたち)》1897年
エミール=オーギュスト・カロリュス=デュラン
国立西洋美術館蔵
エミール=オーギュスト・カロリュス=デュラン(Émile-Auguste Carolus-Duran、1837-1917)はフランスで活躍した画家で、主にサロンで人気を集めた画家でした。
パリの上流階級の人々の肖像画を、優雅なスタイルで数多く描きました。
印象派が既に一大勢力として勢いをつけていたこの時代、カロリュス=デュランは印象派の新しい表現を取り入れて、折衷的な画風の作品を残しました。
美術教師としての一面もあり、《マダムXの肖像》で知られるジョン・シンガー・サージェントの他、日本から留学していた藤島武二や有島生馬なども彼の門下でした。
この作品で描かれているのは、カロリュス=デュランの娘とその子どもたち(カロリュス=デュランから見た孫)です。
彼女の夫は絵画収集家としても知られる戯曲家のジョルジュ・フェドーです。
3人の親子の姿が三角形の構図の中に収められ、画面に安定感をもたらしています。
母と娘のドレスの色の対比も美しく、質感の描き分けも見事です。
足元に散らばる花びらが、この絵をどこかロマンティックな雰囲気に仕立てます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館より
今回の「松方コレクション展」では、このように変わった展示のされ方をしていました。
元々この作品は右側のオリジナルの額縁に入っていましたが、その後今付けられている左側の額縁で保管されます。
修復作業行った際に作品のサイズが5ミリほど大きくなってしまい、オリジナルの額縁に戻すことが出来なくなってしまったといいます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
額縁も装飾性に溢れ、素晴らしい出来栄えだったので、展覧会では絵画と並べて展示されました。
《アルルの寝室》ゴッホ
《アルルの寝室》1889年
フィンセント・ファン・ゴッホ
オルセー美術館蔵
ここからはパリで保管された400点の内、フランス政府が返還を拒否した20点の作品について見てまいります。
こちらのゴッホの有名な作品、じつは松方コレクションのものだったのです。
現在はオルセー美術館に収蔵されています。
この《アルルの寝室》は全部で3枚描かれており、こちらは第3バージョンになります。
(ちなみに1枚目はファン・ゴッホ美術館、2枚目はシカゴ美術館に収蔵されています)
学芸員の方も「この作品がもし返還されていたら、西洋美術館も違っていたかもしれない」といいます。
この作品はゴッホがアルルで芸術家仲間を集めようとして借りた”黄色い家”の寝室に飾った作品です。
結局ゴーギャン一人しかアルルには来ませんでしたが、彼が来る前にワクワクしながら描いたのがこの作品の一枚目のバージョンです。
椅子も枕も2つ描かれている事から、いかにゴーギャンが来るのを楽しみにしていたのかが分かります。
後に描かれた2枚目と3枚目はゴーギャンがアルルを去った後に、セルフコピーするような形で描かれました。
セルフコピー、《ひまわり》と同じですね!
《扇のある静物》ゴーギャン
《扇のある静物》1889年頃
ポール・ゴーギャン
オルセー美術館蔵
こちらも返還されなかった20点の内の1枚です。
ゴーギャンというと、南国の女性の絵のイメージが強いですが、意外にも静物画を数多く残しています。
この作品では、浮世絵のような平面性を作り出そうとしています。
右上に描かれているものは学芸員の方もよく分からないといいます。
ゴーギャンは自分で焼き物も作っていたので、その焼き物ではないかと一説には言われています。
今回の記事はここまでです。
パート6へと続きます。
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コメント
[…] と、今回の記事はここまでです。 続くパート5では、松方がパリで購入した作品について見てまいります。 こちら☚からご覧いただけます。 […]
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