2018年2月23日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#260 東京都美術館「ブリューゲル展」~「バベルの塔」だけじゃない!150年続いた画家一族 栄華の秘密!~】の回をまとめました。
今回の記事はパート3になります。
前回のパート2はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《地上の楽園》ヤン・ブリューゲル2世
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ヤン・ブリューゲル1世の長男、ヤン・ブリューゲル2世の作品です。
すごくややこしいですが、基本は”長男が2世”になるんですね。
タイトルにある”地上の楽園”とは、アダムとエヴァがいた”エデン”の事を指します。
けれどもこの作品の中にアダムとエヴァは描かれていません。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
じつはこの作品と同じ構図(左右は逆)の作品を父親のヤン1世が描いています。
そちらの方には遠くにアダムとエヴァ(赤い丸の中)が小さく描かれています。
それではなぜアダムとエヴァはヤン2世の作品では描かれなかったのでしょう?
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
それはこの絵が「多様な動物を描く事」を目的としているからです。
ですので、もうアダムとエヴァは描く必要がなかったのです。
この頃のヨーロッパでは大航海時代によって、世界各地のヨーロッパでは見られない動物が数多く持ち込まれました。
画中にはゾウやライオンなども描かれています。
《ノアの箱舟への乗船》ヤン・ブリューゲル1世
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
続いての作品は父親のヤン1世の作品です。
聖書のテーマである『ノアの箱舟』を主題としつつも、こちらも「沢山の動物を描く事」に重点を置いた作品です。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この作品では人間(ノアの家族)も描かれています。
ヤン・ブリューゲル1世は貴族との親交があり、彼らはヨーロッパでは見られない種を集めた動物園や植物園を持っていました。
ヤン1世はそこで様々な動植物を見る事ができたので、このような作品を描く事ができたのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
息子のヤン2世の作品では、遠くの方で自信なさげに描かれていたゾウも、この作品ではしっかりと描かれています。
恐らくはヤン2世は父親の作品をコピーして描いたため、必ずしもその珍しい動物を実際に見る事ができなかったと考えられます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ですのでヤン1世とヤン2世の作品を比べると、父親の作品の方が生き生きとして迫力があるのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ヤン1世は1625年に57歳で亡くなります。
死因は、一説には当時の流行り病である「コレラ」だったといわれています。
ヤン1世が亡くなったとき、息子のヤン2世は祖父や父親と同様にイタリアで絵の修行をしていました。
父親の死の報せを聞いたヤン2世は急遽帰国し、父親の工房を引き継いでいくのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
工房を引き継いだ際に一番最初の着手した仕事が、父親の未完の作品を仕上げることでした。
ヤン2世のこちらの作品も、父親の未完のものがベースになっている考えられています。
もう一人のピーテル・ブリューゲル?!
ヤン1世はコレラで亡くなったと考えられていますが、彼の子どもたちも同じコレラに感染して亡くなってしまいます。
ヤン2世はイタリアに留学していたので、感染せず助かったのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
じつはヤン・ブリューゲル1世の子ども(ヤン2世の兄弟)の一人に”ピーテル・ブリューゲル”という名の子がいました。
この場合、こちらのピーテル・ブリューゲルがもし画家だとしたら、どのように呼ぶべきか非常に難しいといいます。
すでにピーテル2世の子どもでピーテル3世は使われてますしね。
《嗅覚の寓意》ヤン・ブリューゲル2世
《嗅覚の寓意》1645-1650年頃
ヤン・ブリューゲル2世
個人蔵
こちらはヤン・ブリューゲル2世の《嗅覚の寓意》という作品です。
『寓意画』というのは、抽象的な概念や実体のないものを、目に見える形に表した絵の事です。
この作品では”嗅覚”という、人間の五感で”目に見えないもの”を、絵画という目に見える形で表しているのです。
作品の中には、嗅覚・匂いの関連するモチーフが描かれています。
中央に座る女性は「嗅覚の擬人像」です。
その横に見える犬は、”鼻が良い動物”として登場しています。
花も良い匂いのするものなので、画面全体に描かれています。
こちらには香水の瓶や、香水をつくるための蒸留器が描かれています。
こちらの丸まっている動物はジャコウネコの一種だと考えられています。
ジャコウネコは独特な匂いを発する動物なのです。
《聴覚の寓意》ヤン・ブリューゲル2世
《聴覚の寓意》1645-1650年頃
ヤン・ブリューゲル2世
個人蔵
こちらは『聴覚』の寓意画です。
一目で「聴覚がモチーフ」だと分かるくらい、これでもかと楽器が描かれています。
聴覚の擬人像、その人も楽器を弾いています。
横にいるシカは”耳が良い動物”として登場しています。
先ほどの作品の犬と同じ立ち位置ということですね。
鳥はそのさえずりが、聴覚と関連しています。
ヨーロッパの古くからの伝承で「白鳥は死ぬ時に美しい声で鳴く」と言われており、その事からこちらには白鳥が描かれています。
寓意画と時代背景
この時代はこれらの作品のような『寓意画』が非常に流行していました。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ヤン2世の祖父にあたるピーテル1世が描いた『鳥罠』の頃から”寓意的なメッセージ”が込められていたのです。
ここでは「鳥罠の鳥」と「氷の上でスケートをする人々」が同じである、という意味が込められています。
つまり鳥罠の鳥は捕まって死んでしまいますが、スケートを楽しむ人たちも氷が割れれば落ちて死んでしまう、という意味で「鳥も人も命は一つである」というのを表しているのです。
なるほど!でも分かりにくいですね…
それが時代が進むにつれて、”より分かり易い寓意画”になっていくのです。
『寓意画』が流行した背景の一つには、画家自身が「関連する様々なものを描く事ができた」というのが挙げられます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
《聴覚の寓意画》では時計だけでも3種類も描かれています。
人の顔のようなもの?!
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
《聴覚の寓意》では柱の部分に人の顔のようなものが描かれています。
まるでアルチンボルドみたいですね!
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今回の『ブリューゲル展』では《聴覚の寓意》以外にも、人の顔に見える作品が展示されていました。
《ウェルトゥムヌスに扮するルドルフ2世》1590年頃
ジュゼッペ・アルチンボルド
スコークロステル城蔵
*「ブリューゲル展」の展示作品ではありません
アルチンボルド(1526-1593)は16世紀の画家で、ヤン・ブリューゲル2世(1601-1678)はアルチンボルドより後の時代の画家です。
アルチンボルド時代の名残りや人気が、後の時代にもあった事を伺わせます。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
ヤン2世の父のヤン1世は、プラハでアルチンボルドと会っていた可能性もあります。
もしかするとヤン2世は父親からアルチンボルドの話や作品を聞いていたのかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
今回の記事はここまでになります。
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