2019年1月8日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#294 感じる!読み解く!ロシア美術「ロマンティック・ロシア」展~ロシアの“モナ・リザ”《忘れえぬ女》謎多き名画が来日!~】の回をまとめました。
今回の記事はパート4になります。
前回のパート3はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《楽しいひととき》アントニーナ・ルジェフスカヤ
《楽しいひととき》1897年
アントニーナ・ルジャフスカヤ
トレチャコフ美術館蔵
パート3でご紹介した《鶴が飛んでいく》と打って変わって、楽し気な雰囲気が描かれています。
作品からはアコーディオンの音色や、二人が楽しく踊り床を叩く足音までも聞こえてきそうです。
この作品を描いたアントニーナ・レオナルドヴナ・ルジェフスカヤ(Antonina Leonardovna Rzhevskaya、1861-1934)この時代ではたいへん珍しい女性の画家でした。
この作品が最初に展示されたのは、1897年の春に開催された第25回移動派展でした。
現在この作品には左下にサインが入っていますが、描かれた当初はサインはなく番号のみが記載されていました。
サインをしなかった理由は「女性が描いたという事」を隠すためでした。
この時代は男性中心の世界で、それは美術の世界も同様だったのです。
「女性が描いた」という時点で作品が正当に評価をされなかったのです。
もう一つ名前を書かなかった理由は、彼女が貴族の出であるという事でした。
特に彼女の姑が、上流階級の女性が「職業画家」になるなどとんでもないと考えていたのです。
しかし結果的にこの作品が多くの人々や批評家の注目を浴び、成功を収めた事によりルジェフスカヤは自信を得る事になります。
子供の動きはピョンと跳ねた、その可愛らしさが伝わってくるようです。
子供の足元には、かんなくずが見えます。
この子が躍るとこのかんなくずも一緒に舞う情景が浮かびます。
ロシアは他のヨーロッパ諸国に比べても、女性の画家が少ないと言います。
移動派の中にも二人(この作品を描いたルジェフスカヤともう一人エミリヤ・シャンクス)だけだったといいます。
ルジェフスカヤのお孫さんの家には《楽しいひと時》の複製画が飾られており、そこには『私の活動が認められた記念に』という一文が添えられていたといいます。
《月明かりの夜》イワン・クラムスコイ
《月明かりの夜》1880年
イワン・クラムスコイ
トレチャコフ美術館蔵
ここからは「ロシアの肖像画」作品を見てまいります。
こちらはイワン・クラムスコイの《月明かりの夜》という作品です。
個人的にこの「ロマンティック・ロシア」展で一番感動したのがこの作品です。
すごく綺麗で、神秘的な雰囲気に心惹かれたのを覚えています。
作者のイワン・クラムスコイ(Ivan Kramskoi、1837-1887)はロシアの肖像画家の第一人者とも言える人物で、同時代のロシアの著名な文化人を数多く描いています。
描いた時にはモデルを見て描きましたが、最終的には誰でもない誰かを描いた作品といえます。
ちなみに当初のモデルは、後に著名な科学者メンデレーエフの妻となるアンナ・ポポーワでした。
(メンデレーエフは、元素の周期表を作った人です)
画像出展元:wikipedia「周期表」より
水兵リーベ僕の船・・・のやつですね!
しかしこの絵の完成が近づき、トレチャコフ美術館がこの絵の購入を決めた際に、美術館創設者の弟であるセルゲイ・トレチャコフが自分の妻の面影を加えて欲しいと依頼し、現在の姿になりました。
どこか寓意をはらんでいそうな絵ですが、そういった意味合いはないと言われています。
この女性は誰かを待っているのか、それともただ物思いや回想に耽っているのか、想像の余地を含んだ作品といえるでしょう。
そういった意味でも”ロマンティック”な作品です。
クラムスコイは当初この作品に《魔法の夜》というタイトルを付けていました。
彼はこの作品で「何か幻想的なもの、魔法のようなもの」を表現したかったと言っています。
クラムスコイはロシア社会における重要で普遍的な問題(「何をなすべきか」、「誰に罪があるのか」、「人生でどのような道を道を歩むべきか」)に自分の芸術を通じて答えを見いだそうとしました。
その一方でこの作品のように叙情的な側面、ある種のロマンティックな要素を含んだ作品も残しました。
今回の記事はここまででです。
次のパート5でラストです。
パート5では同じくクラムスコイが描いた《忘れえぬ女(ひと)》、そしてそのクラムスコイの肖像画を描いたイリヤ・レーピンについてまとめていきます。
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コメント
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