2019年1月8日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#294 感じる!読み解く!ロシア美術「ロマンティック・ロシア」展~ロシアの“モナ・リザ”《忘れえぬ女》謎多き名画が来日!~】の回をまとめました。
今回の記事はパート3になります。
前回のパート2はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《秋の朝》グリゴリー・ミャソエードフ
《秋の朝》1893年
グリゴリー・ミャソエードフ
トレチャコフ美術館蔵
こちらはロシアの秋を描いた作品です。
ロシアの秋はたいへん短く、秋になったと思ったらすぐに冬になってしまうといいます。
そんな短いロシアの秋ですが、日本の秋は紅葉に代表されるように”紅”をイメージしますが、ロシアでは黄色のイメージが強く「黄金の秋」と呼ばれます。
この作品は一目見て”ロマンティック”な感じが伝わりますね。
所々印象派の影響と思われる筆触分割の筆の入れ方をしているのも特徴です。
作者のグリゴーリー・グリゴーリエヴィチ・ミャソエードフ(Grigory Grigorievich Myasoedov、1834-1911)、没落貴族の出身です。
正統的な美術教育を受けて、アカデミーの会員にもなっていましたが、その後移動展覧会協会(移動派)の創設に携わります。
また美術だけではなく音楽にも才能を発揮しました。
移動派の友人たちが集う集まりでは、ヴィオラ、ヴァイオリン、ピアノを演奏して見せたと言います。
《樹氷》ワシーリー・バクシェーエフ
続いて、ここからはロシアの厳しい”冬”を描いた作品です。
《樹氷》1900年
ワシーリー・バクシェーエフ
トレチャコフ美術館蔵
1900年に描かれた作品という事で、印象派風のタッチで描かれています。
ロシアでは”冬の絵”はあまり好まれなかったといいます。
ただでさえ冬は長いし寒いのに、わざわざそんなの家に飾らないよ。
窓開けりゃそこに冬あるよ!
と言った所なのでしょうか(笑)
「樹氷」というタイトルがたいへんロマンティックな印象を受けるこの作品。
しかしロシアには「樹氷」という言葉はなく、全てひっくるめて”霜”と言うそうです。
空の色がどことなく印象派っぽい色をしています。
山田五郎さん曰く「これが冬のロシアの精一杯の青空」だそうです。
《雪が降った》ミハイル・ゲルマーシェフ
《雪が降った》1897年
ミハイル・ゲルマーシェフ
トレチャコフ美術館蔵
「ザ・雪景色」といった感じですね。
描かれているのはロシアの人にとっては、当たり前の日常の風景です。
当然そこに暮らす人は、そこに”美”があると思ってはいないのです。
その風景を画家が計算して効果的に描く事で、「自分たちの暮らしの中に、自分たちの知らない”美”があるんだ」とロシアの人々に気づかせることができるのです。
そしてそこから祖国愛が育まれていくのです。
この作品を描いたミハイル・マルキアーノヴィチ・ゲルマーシェフ(Mikhail Markianovich Germashev)は”ロシアの冬”という主題を好んで描きました。
ゲルマーシェフは存命当時から大変な人気を博しており、彼の作品の複製画や絵葉書が数多く作られました。
その中でも、この《雪が降った》は彼の冬の風景画の代表作です。
《トロイカ》ニコライ・サモーキシュ
《トロイカ》1917年頃
ニコライ・サモーキシュ
トレチャコフ美術館蔵
「トロイカ」というのは、この絵に描かれている3頭立てのソリの事です。
3人の人間が権力を持って物事を進めていく事を”トロイカ体制”と呼びますが、その語源にもなっています。
ロシアを訪れた外国人でトロイカに乗った者は皆「トロイカよりも速い乗り物はない」と口にするそうです。
頑丈で、重荷を運ぶことも出来、悪路も進める乗り物は他にはありませんでした。
ロシアは国土が広く、隣近所ともかなりの距離があります。
そういった距離間での移動の際には、このトロイカが使われます。
ですので、彼らにとって早く冬が来た方が移動が楽になるというメリットがあるのです。
この作品を描いたニコライ・セミョーノヴィチ・サモーキシュ(Nikolay Semenovich Samokish、1860-1944)は美術アカデミー付属高等美術学校の戦争画クラスの教授を務めた人物です。
教育活動に力を入れ、後進の育成に尽力しました。
サモーキシュが特に大事にしたのが、”動きの表現”でした。
「動きがなければ私もいない」と語っています。
画像出展元:wikipedia「Nikolay Samokish」より
確かにバリバリ「動き‼」って感じがしますね!
《鶴が飛んでいく》アレクセイ・ステバーノフ
さて、ここまではロシアの四季の作品を見てきましたが、ここからは「子供の世界」という事で、ロシアの子どもたちが描かれた作品を見ていきましょう。
《鶴が飛んでいく》1891年
アレクセイ・ステバーノフ
トレチャコフ美術館蔵
子供たちが空のかなたに飛んでいく鶴を見ています。
鶴が渡って行く=冬の訪れを意味しています。
子供の中には靴を履いていない子もいます。
おそらくこの子らは貧しい農家の子供たちなのです。
厳しい状況に置かれた子供たちは、飛んでいく鶴を見つめて「自分たちも飛んで行ってしまいたい」と思っているのかもしれません。
その中で一人、興味ゼロの子がいるのもこの作品の面白い所です(笑)
今回の記事はここまでです。
パート4へと続きます。
こちら☚からご覧頂けます。
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[…] 今回の記事はここまでになります。 続くパート3ではロシアの「秋」と「冬」の作品を見てまいります。 こちら☚からご覧頂けます。 […]