2023年4月30日にNHKで放送された「日曜美術館アートシーン」の展覧会紹介の内容をまとめました。
*画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より
特別展『国宝・燕子花図屏風 光琳の生きた時代1658~1716』(根津美術館)
東京・港区にある根津美術館。
今年も美しいカキツバタが庭園に咲きました。
30年ほど前から少しずつ植えられ、今では4,000株ほどに増えました。
毎年、この開花に合わせて根津美術館所蔵の重要な作品が公開されます。
江戸時代中期に活躍した尾形光琳の国宝《燕子花図屏風》です。
総金地にリズミカルに配された燕子花。
粋で洗練された琳派を代表する作品です。
緑青と群青の2色の絵の具だけを使いながら、見る人に強烈なインパクトを与えます。
今回の展覧会は光琳が生まれた1658年から、亡くなる年の1716年までの59年間のスポットを当て、同時代の作品も紹介しています。
狩野探幽《両帝図屏風》
光琳が3歳の年の作品。
当時画壇に君臨していた狩野派の絵師・狩野探幽の屏風です。
古代中国の皇帝が、端正な筆致で描かれています。
画像出展元:テレビ番組「新・美の巨人たち」より
高級呉服商の家に生まれ、教養として絵を嗜んでいた光琳。
幕府の御用絵師だった狩野派のもとで筆遣いや構図、画題などの絵の基本を学びました。
喜多川相説《四季草花図屏風》
琳派の絵師・喜多川相説(きたがわ そうせつ)の屏風。
光琳が30代後半の頃、江戸の園芸ブームを先駆けた京都の朝廷では、このような草花図が人気を博しました。
花びらや葉脈に金泥を用い、華麗な草花を巧みに意匠化しています。
ユウガオの葉には”にじみ”の効果を利用した「たらしこみ」という技法が使われています。
この《四季草花図屏風》が描かれた頃の光琳は父親の遺産を使い果たし、生活の糧を得るため絵の道に進む決意をしました。
《四季草花図屏風》に見られる草花図の表現は、駆け出しの光琳を大いに刺激しました。
国宝 尾形光琳《燕子花図屏風》
国宝《燕子花図屏風》右隻、18世紀
尾形光琳
根津美術館蔵
狩野派や琳派の先達に学び、咀嚼して生み出したのが《燕子花図屏風》です。
豪華な金箔の上に整然と並ぶ構図には、幼い頃から培った抜群のデザインセンスがうかがえます。
一部の花の並びには同じパターンが繰り返されています。
呉服商の家に生まれた光琳が、着物の染色に用いる型紙から発想したのではないか?と考えられています。
「この作品の持っているオーラというのはもう本当に圧倒的です。絵画ということもちょっと超えてしまって、光琳にしか描かけない・作れない表現世界をこの屏風では実現してしまっている」
「今回の展覧会で見えてきたのは光琳がどんな絵を見て学んで、更にはどんな時代の空気を吸って絵を描いていたのか?そんなことが見えてきたんじゃないかなと思います」
晩年、光琳の作品はさらに変化します。
この頃、写生に基づく描写が重んじられ始めていました。
光琳のカキツバタも現実に近い姿に。
装飾性と写実が融合した表現は、円山応挙ら次の世代の登場を予感させるものでした。
この展覧会は東京・港区の根津美術館で5月14日まで。
今回の記事はここまでになります。
◉参考文献
仲町啓子著『もっと知りたい尾形光琳 改訂版 生涯と作品』東京美術