2017年9月30日にテレビ東京にて放送された「美の巨人たち」の【誰もが知っていた!東郷青児『望郷』昭和の風雲児CGのような油絵】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧ください
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
女性を描く画家に変貌
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
パリに留学していた頃、東郷はあのピカソとも会っています。
東郷の絵を見たピカソは次のように言ったといいます。
「自分の絵を見るような気がする」
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
初期の東郷作品は、キュビスム風の前衛的なものでした。
しかし、次第に女性ばかりを描くようになっていったのです。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
パリから帰国して間もなく事件が起きます。
東郷は妻子がありながら、愛人と心中未遂を起こすのです。
皮肉なことに、この事件がきっかけで東郷の名は広く知られるようになりました。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
東郷のモテ男っぷりは止まりません。
驚く事に、彼はこの事件を取材に来た小説家の宇野千代とすぐに同棲を始めるのです。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
東郷は自身が愛した女性を次々に描いていきます。
彼にとって女性の美しさこそ”至高の美”だったのかもしれません。
俯く少女のポーズの意味
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
東郷は《望郷》以降、少しうつむいた女性像を描いていきます。
このポーズに込められた意味とは?
学芸員の中嶋啓子氏は次のように話します。
「『望郷』の女性の身体を前屈みにして、S字型にしているのは、日本文化の土壌の中から探してきたのかな、と思います」
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
この俯くポーズは浮世絵でよく見られるものです。
流れるような曲線で細い身体を描くところから、イメージを汲み出しているのです。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
東郷は自身の女性像を「美人画」と呼びました。
しかし「美人画」というのは、本来、日本画で使われる言葉なのです。
確かにフェルメールやルノワールの絵を見て、美人画とは言わないですよね。
なぜ東郷は西洋画では使われない呼び方を、自身の作品に使ったのでしょう?
日本画を意識した洋画
東郷は元々洋画家でしたが、《望郷》を描いた頃は、日本画の技法を学んでいました。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
滑らかな画面に仕上げるために使った刷毛も、日本画で用いられるものでした。
「油絵の具を載せた上に、刷毛でなでていく作業をしているんじゃないかな、と僕の目には見えました」(山田啓貴氏)
西洋の刷毛よりも日本製の方が毛質が柔らかく、画面をよりなめらかにする事ができたのです。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
古典的技法で描かれたものと比べると、滑らかさの違いは一目瞭然です。
ずばり東郷は”日本人の油絵”を目指したのです。
洋画の前衛画家である東郷が、女性を描いていく中で到達した境地。
それは日本の伝統を取り入れたものだったのです。
では、どうして東郷は”日本らしさ”にこだわったのか。
そこには彼の、日本人に向けての強い思いがあったのです。
デザイナーとしての才能
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
東郷青児は油絵のみならず、食器や書籍の装幀など、幅広く美人画を描きました。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
昭和8年創業、東京・自由が丘にある洋菓子店モンブラン。
店内には東郷の壁画が飾られています。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
包装紙やパッケージには今でも東郷式美人が使われています。
人々に芸術を広めるために…
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
敗戦から復興へ向かう日本の街中を彩った東郷青児の美人画。
そこには、”芸術に興味のない人”への必死の訴えが込められていたのかもしれません。
学芸員の中嶋啓子さんは、東郷の思いについて次のように話しています。
「東郷は美術界や画壇からの評価だけでなく、普段は展覧会や美術書を読まないような、一般の人の心にも、すっと入るような絵画を目指していたと思います。間口の広いキャッチーな絵を作ったのかな、と」
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
《望郷》はその追求の果てに到達した一枚だったのです。
画像出展元:テレビ番組「美の巨人たち」より
《望郷》は第5回日本国際美術展で大衆賞を受賞します。
「大衆賞」とは、一般来場者の投票によって選ばれる賞でした。
ちなみに評論家や審査員が選ぶ大賞は別の作品が受賞しています。
いかに東郷の作品が、一般の人の心を捉えたか。
それがよく分かるエピソードですね!
日本の人々は何を”美しい”と感じるのか?
そして、どんな”美しさ”に憧れるのか?
大衆賞こそ、東郷が目指した芸術に到達した証だったのです。
最後に東郷の言葉をご紹介します。
「理屈があって、絵がない絵じゃなくて。理屈がなくても絵である絵。
誰が見ても『これは綺麗だ』とか、『やさしい』とか、『わびしい』とか、すぐに分かる絵を描きたい」
今回の記事はここまでになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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