【日曜美術館】シン・芦雪伝②【美術番組まとめ】

日曜美術館

2023年11月26日にNHKにて放送された「日曜美術館」の【シン・芦雪伝】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

今回の記事はパート2になります。
前回のパート1の記事はこちらからご覧ください。
【日曜美術館】シン・芦雪伝①【美術番組まとめ】

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芦雪と応挙

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

長沢芦雪は江戸時代中期、1754年に現在の兵庫県に生まれたと伝わります。
しかしその後どこでどのように育ったのか、詳しくは分かっていません。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

正確な記録が残っているのは芦雪が20代の頃に、当時の京都で随一の人気を誇った絵師・円山応挙に弟子入りしたということです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらは応挙が描いた孔雀図です。

応挙写実的に描くことを得意としました。
対象を細かく観察したことで、真に迫る表現がなされています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらは長沢芦雪が描いた孔雀図です。
芦雪応挙の画風と技を余すことなく吸収しています。

応挙の弟子は当時1000人以上いたといわれていますが、その中でも芦雪一、二を争う実力だったといいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

しかし『蘆雪物語』には、芦雪応挙の教えに窮屈さを感じ度々対立。その結果三度も破門されたと書かれています。

芦雪、和歌山へ

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

芦雪は33歳のときに人生の転機を迎えます。
応挙に命じられて出向いた和歌山でのことです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

多忙な応挙の代役として、芦雪は再建されて間もない寺の襖絵の制作を手掛けます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

師匠から離れて羽を伸ばすことができた芦雪は、自らの画風をこの和歌山で手に入れたと考えられてきました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

しかし芦雪研究の第一人者の岡田秀之さんは「たくさん弟子がいた中で、なぜ芦雪を派遣したのか考える必要がある」といいます。

そこには対立ではなく、師を敬い、師の教えを信奉する弟子の姿があったのでは?と岡田さんは言います。

《西施浣紗図》と《西王母図》

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらはそれぞれ応挙芦雪の作品で、どちらも古代中国の伝説の美女を描いています。

この作品から芦雪がどのように師匠・応挙と向き合っていたかを見ることができるといいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

中国の絵画を勉強した応挙はこの作品で”理想的な美しさ”を描いています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

人物だけでなく、画面下部の水の流れや岩の表現までしっかりと描かれています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

ただ着物を描くのではなく、着物の中に体があるような描き方しているのが応挙の特徴です。

応挙の技が隅々までみなぎっています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

一方こちらは芦雪の描いた美人図《西王母図》。
芦雪作品では珍しい、描いた時の年齢が分かる作品で29歳の時の作だと分かっています。
芦雪がまだ和歌山に向かう以前です。

一見応挙と同じような写実的な美人図に見えますが、細部に芦雪らしさが込められています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

着物のしわの部分ですが擦れさせたり、また非常に鋭い綺麗な線で引かれているのが特徴です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

髪の毛の表現も一本一本繊細に描かれています。
まつげも細い線できれいに描いています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

その一方で、女性の後方の松の木は墨だけで描かれており、枝もどこから生えてきているのは分からず、背景と化しています。

このことから描こうとしている対象が人物に集中しているのが分かるのです。
その結果、応挙の女性像よりも色っぽい仕上がりになっています。

すべてをしっかり描いて全体的に完成度を高めるのではなく、女性をいかに美しく描くかというところに芦雪は感心があるのです。

《布袋・雀・犬図》

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

芦雪応挙の技術を会得する一方で、独自の表現も模作していました
こちらの《布袋・雀・犬図》は芦雪が和歌山に向かう直前に描かれた作品です。

この作品では応挙とはまた違ったリアリティーが表現されています。
まずは何が描かれているのか見ていきましょう。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

まず中央。
ここでは布袋が操り人形で遊んでいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

その隣、左側では戯れる犬の姿が。
そのうちの一匹は布袋さんが遊んでいる人形を見ています。

その下の踏み台にされた犬は「何をしてるんだ⁈」というような顔をしています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

一方その反対側では布袋の袋から木の実がこぼれ落ち、そこに雀が集まってきています。
その中の一羽、尻尾を上げている雀は上を飛んでいる別の雀に呼び掛けているようです。

解説の岡田秀之氏はこの芦雪の作品について「まるで動画の一部のようで、流れている動画の一瞬をストップしたような絵」と話します。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

一方、応挙の作品は「スタジオでタレント犬を撮っているような作品」になっているといいます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

同じ写実でも芦雪の作品は声や風など、描く対象以外のリアリティーも捉えようとしているのです。

おそらくこう自由に描いているのは、まあ応挙先生は分かっていたと思いますね」(岡田秀之氏)

和歌山に派遣した理由

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

しかしそんな応挙も若い頃は師の教えを学びつつ独創性を追い求めた絵師でした。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

応挙はかつて江戸時代の最大流派である狩野派で絵を学びました

狩野派で求められたのはそれまでの伝統をしっかりと踏襲することで、絵師自身の個性を発揮すること全くといっていいほど求められませんでした

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

しかし応挙は狩野派の伝統にはない、独自の写実的な画風を確立しました。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

師匠と弟子の関係、そして絵をどのように学ぶべきなのか。
それについて応挙の言葉が残っています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

師の手本を写さず
自分勝手に何でも描くことは
正さなければならない

ただ 手本を写すだけの
教え方はよろしくない

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

絵を学ぶ者は
法を捨てるべきではない
ただ同時に
法にとらわれすぎてはいけない

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

応挙自身「自分の個性を持って描かないといけない」という考え方をもっていたのです。

そこで応挙はしっかりと自分の個性を出せる弟子・芦雪を選んで、和歌山のお寺に派遣したと考えられるのです。
そこで何か雷が落ちるようなインパクトが芦雪にあれば、大きく化けるかも?と応挙は考えたのかもしれないのです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

芦雪が和歌山に行ったのは33歳の時でしたが、応挙が狩野派の方から脱却して、新しいスタイルの作品を描き始めたのも同じくらいの歳の頃でした。

もしかすると応挙は若かりし日の自分を、新たな画風に挑戦する芦雪に重ねていたのかもしれません。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

師匠の期待通り、芦雪は和歌山でその才能を開花させます。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらの《唐獅子図襖》は「獅子の子落とし」と呼ばれる物語を絵画化したものです。

親獅子は生まれたばかりの子獅子を谷から落とし、そこをよじ登ってきた強い子獅子だけを育てるというストーリーです。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

親獅子は毛を逆立て牙をむき出して、迫力満点の姿で描かれています。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

傍らには親獅子に駆け寄る子獅子の姿が。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

”獅子の子落とし”は、我が子にあえて苦しい道を歩ませ、その器量を試すことの例えとしても使われます。
この絵はもしかすると、師応挙と弟子である芦雪との関係性を写しているのかもしれません。

今回の記事はここまでになります。
パート3に続きます。
【日曜美術館】シン・芦雪伝③【美術番組まとめ】

コメント

  1. […] 今回の記事はパート3になります。 前回のパート2はこちらからご覧ください。 ⇒【日曜美術館】シン・芦雪伝②【美術番組まとめ】 […]

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