ヘントの祭壇画に広がる細密描写と色彩の世界

日曜美術館

2020年2月16日にNHKで放送された「日曜美術館」の【光の探求者ヤン・ファン・エイク よみがえる“ヘントの祭壇画”】の回をまとめました。

番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
前回のパート2はこちらからご覧いただけます☟☟
【日曜美術館】ヤン・ファン・エイク②【美術番組まとめ】

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祭壇画が開かれた状態

祭壇画はミサが行われる際に開かれました。
そこには鮮やかな色彩の世界が広がります。

ここでも描かれている人物を順番に見ていきましょう。

上段

まず上段の中央から見ていきます。
上段に描かれているのは「天上の世界」です。
キリストを中心に、聖母マリアと聖ヨハネ、そして天使が描かれています。

左から、
聖母マリア
父なる神(玉座のキリスト)
洗礼者聖ヨハネ

ここでは、最後の審判で聖母マリアと洗礼者聖ヨハネが信者に代わって神に願いを伝える姿が描かれています。

祝福のポーズをとるキリストの頭上の冠には、無数の宝石が北方ルネサンス特有の細密描写で描かれています。

キリストの背景の織物の表現は、「ブロカー・アプリケ」と呼ばれる技法が用いられています。
ブロカー・アプリケ」とは、織物の質感を表すために表面に凹凸を作り彩色した工芸技法です。
ここでは先ず板を彫り、そこにすずと金箔を貼りつけています。
つまり描かれたものではなく、箔が貼ってあるという状態なのです。

聖母マリアの冠には、純潔を表す白百合と愛の象徴の赤いバラが。
聖ヨハネは豪華なマントを纏った姿で描かれています。

聖ヨハネの格好には、当時の社会の豊かさの部分も表れています。
それは貴金属や衣服の下に着ている毛皮です。
イタリアで洗礼者ヨハネが描かれる際には、野蛮な人物のように描かれるのがほとんどだといいます。
それが《ヘントの祭壇画》では貴金属を身に着け、毛皮も纏っています。
このような所に当時の市民社会の豊かさが表象されているのです。

特に聖ヨハネの顔をアップで見ますと、小さい歯と舌が見えています。
その表情はまるで話している最中のようにも見え、ヤン・ファン・エイクの技量の高さが伺えます。

三人の両脇には、左側が「合唱の天使」。
右側に「奏楽の天使」が描かれています。
天使たちは、神を礼賛するための音楽を奏でています。

さらに天使の両脇には楽園を追放されたアダムとイヴが描かれています。
左側がアダムで、右側がイヴです。

下段

父なる神の真下の一枚は、「神秘の子羊」とも呼ばれています。

画面中央、祭壇の上で血を流す子羊は人類を救うために犠牲となったキリストを象徴しています。

その真上に見える鳩は聖霊です。
そこから子羊を挟んで、下部には噴水が描かれています。
この噴水が「生命の泉」で、やがて地上に訪れる楽園を意味しています。

アダムの子孫である人類は、アダムとイヴの犯した罪(原罪)を背負って生まれてきました。
それがキリストの犠牲によって救われ、約束された楽園が現れる。
そのことを祈りを捧げる者たちの目の前に表して見せたのです。

本来の子羊の顔

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

祭壇の上で血を流す子羊は、こちらを直視しています。
それはキリストが人類を救うための犠牲になったことを、祭壇画を見る人に伝える役割を果たしていると考えられます。

キリスト教の救済論では、最後の審判が行われるときまでに、人間が悔い改めてイエスのように敬虔な信仰の生活を送れば救われるとされています。
この祭壇画はその時の光景を描いていますが、聖パウロの手紙によると最後の審判のあとに救済が訪れると、人間は神と対面するとされています。

つまりこの子羊の顔も、こちらを向いているというのはこの「フェイス・トゥー・フェイス」、神と向かい合っている状態を表しているのです。

キリスト教では「神は光なり」という言葉があるように、この光あふれる祭壇画の前で鑑賞者は神と向き合い、その光を浴びているということになります。
これを「至福直観」と呼びます。

ちなみに漫画のヤマザキマリ氏によると、この本来の子羊の顔が現れた時にSNS上で「大変なことが起きたぞ」と騒ぎになったそうです。
修復前の方が羊らしかったのに、修復後は人面羊になったと(笑)

パート3はここまでです。
次のパート4でラスト、3月9日公開予定です。

コメント

  1. […] それではパート2はここまでで。 パート3へ続きます。 【日曜美術館】ヤン・ファン・エイク③【美術番組まとめ】 […]

  2. […] 見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪ 前回のパート3はこちらからご覧いただけます☟☟ 【日曜美術館】ヤン・ファン・エイク③【美術番組まとめ】 […]

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