【日曜美術館】ヤン・ファン・エイク④【美術番組まとめ】

2020年2月16日にNHKで放送された「日曜美術館」の【光の探求者ヤン・ファン・エイク よみがえる“ヘントの祭壇画”】の回をまとめました。

番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
前回のパート3はこちらからご覧いただけます☟☟
【日曜美術館】ヤン・ファン・エイク③【美術番組まとめ】

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ヤン・ファン・エイクの驚異の技

パート4ではヤン・ファン・エイクが用いた驚異の技法の数々を見ていきたいと思います。

彼の革新性は、「直接」「反射」「屈折」の3つの視覚表現を絵画に取り込んだことです。
それでは一つずつ見ていきましょう。

直接

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

「直接」とは空間をありのままに捉える技のことです。

ここでは遠くの山がかすんで描かれています。
これは空気遠近法と呼ばれる技法で、遠くのものは霞んで青く見えるというものです。
レオナル・ド・ダヴィンチが用いた事で知られる技法ですが、ヤン・ファン・エイクはそれよりも80年以上前にその技法を用いています。

反射

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

次に「反射」について見てみましょう。
騎士の甲冑にはその手に持つ赤い槍が描かれています。

普通、ここまで描かないですよね(*_*)

その他にも「合唱の天使」の胸元にあるわずか2センチの宝石の中に、反射する教会のステンドグラスが描かれています。

屈折

そして最後の「屈折」では、水やガラスなど透明なものを通る光の描写です。

画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より

こちらは受胎告知の場面の奥に描かれているガラス瓶です。

外から差し込む光は、ガラス瓶の中の水によって屈折し、柔らかな光の表現になっています。

トリノ=ミラノ時祷書の挿絵

彼がどのようにしてこれらの驚異的な技法を身につけていったのか。
謎とされてきた彼の経歴が近年の調査で、少しずつ明らかになっているといいます。

こちらは14世紀の末に制作が始まったとされる「トリノ=ミラノ時祷書」です。
この中の挿絵の一部が、ヤン・ファン・エイクによって描かれたものだと判明しました。

洗礼者ヨハネの誕生》と題されたこの挿絵には、幅20センチの画面に《ヘントの祭壇画》につながる彼の驚異の技法が見て取れます。

小さい画面なので分かりにくいですが、机の上に置かれた金色の容器には、隣の女性の青い服やベッドの赤い布がかすかに映り込んでいます。

画面下の湖畔を描いた所では、奥側の景観がすでに空気遠近法で表現されているのが分かります。

小さいものを描写すると点は、描く範囲が広くなっても引き継がれました。
《ヘントの祭壇画》ではこれでもかという細かい所まで描いたヤン・ファン・エイク
それは「小さい所に固執する」という、この挿絵のような細密画が彼ののルーツなのかもしれません。

ヤン・ファン・エイクと油彩画

ヤン・ファン・エイクの作品に特徴的なのは、油を塗り重ねる技法だといいます。
透明な絵具の層が光を通すことで、絵の内側から深みが生まれるのです。

またヤンの油絵具を使いこなす描き方も特徴的です。
緻密に描かれている彼の作品は、一筆で描かれています。
ここでやり直して、何度も描いてしまうと、どんどんよどんでしまい、結果として絵の説得力や透明感がなくなってしまいます。

一般に油絵というのは、それまでのフレスコ画やテンペラ画と比べると描き直しや融通が利くと言われますが、それでも一発で描くことに越したことはないという事になります。

絵画修復家の森直義氏によると、油絵というものがやり直しが可能である認識されたのはごく最近の事だと言います。
そしてヤン・ファン・エイクそういった認識ではなかったのだろうと。
油絵がここから始まったのではなく、ここに完成形があり、その前の積み重ねがあったのだろうと述べています。

またヤンは科学にも通じていたといいます。
これまで見てきた光の表現や反射、屈折などの技法を使いこなせた背景には、視覚論や光学論の知識を持っていたのではないかと言われているそうです。

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