2018年7月1日にNHKで放送された「日曜美術館」の【熱烈!傑作ダンギ アンリ・ルソー】の回をまとめました。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
イントロダクション
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの画家、アンリ・ルソー(1844~1910)。
彼の作品総数は二百数十点といわれており、その希少価値からも高い関心を集めています。
《人形を持つ子ども》1892年
アンリ・ルソー
オランジュリー美術館蔵
独自の画風、雰囲気に満ちたルソー作品。
そのどれもが、見る人を引きつけてやまない、謎めいた魅力にあふれています。
ルソーは40代の頃から仕事の傍ら、いわゆる日曜画家として作品を制作しました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
その純真無垢な作風は、20世紀最大の画家といわれるピカソも魅了しました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
世界中の人に愛されるルソーの作品。
ここ日本でも根強い人気があり、30点以上の作品が日本国内にあります。
中にはルソー作品をコレクションの中心に据える美術館もあるほど。
東京の世田谷美術館には4点のルソー作品が所蔵されています。
番組ゲストで同館の学芸員の遠藤望さんはルソーについて次のように語ります。
「ルソーは色々と調べれば調べるほど謎が謎を呼び、だんだん分からなくなってくる。技術的に上手いところは最後まで上手いし、じつは下手なところは最初から最後まで下手っていうか。
ちょっと技術的にはどうなのかしらと思う、すごく不思議な作家です」
ルソーの生い立ち~初期の風景画作品
《眠るジプシー女》1897年
アンリ・ルソー
ニューヨーク近代美術館蔵
こちらはルソー、50代の頃の作品です。
月夜の晩に眠りにつく女性。
そのそばを一頭のライオンがうろついています。
シチュエーション的にはドキッとする場面ですが、どこかかわいらしく、まるでおとぎ話の一場面のようです。
このような不思議な世界観で知られるルソーの作品。
ここではその彼の生い立ちから初期の作品までを見ていきます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
フランス西北部の町ラヴァル。ルソーはこの町で1844年に生まれました。
父親はブリキ職人の傍ら、不動産業を営んでいました。
ルソーは子どもの頃から画家になる夢を持っていたといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ところが、親の事業が失敗。
借金取りに追い立てられるなど生活は困窮し、画家の夢もあきらめざるを得ませんでした。
地元の高等中学に進むも中退、その後は弁護士事務所、軍隊への入隊を経て、24歳の時にパリに出ます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
パリに出た翌年、クレマンスという女性と結婚。
妻のいとこの世話で、パリ市の税関の仕事に就きます。
仕事内容はパリへ運ばれてくる物資の監視をする門番のようなものでした。
ルソーはこの仕事で出世をする気はさらさらなかったといいます。
税関の仕事をしながらも、ルソーの中には「画家」への憧れが残っていました。
40歳になると、知り合いの画家を通じて、ルーヴル美術館の作品を模写する許可を得ます。
こうして、ルソーは独学で絵を描き始めるのです。
《カーニバルの夜》1886年
アンリ・ルソー
フィラデルフィア美術館蔵
こちらはルソーが42歳の時に描いた初期の風景画です。
深い森の中、男女がスポットライトに照らされているかのように佇んでいます。
森のその先は赤く染まる夕刻なのに対して、空は満月が輝く夜空になっています。
夕暮れと月夜が同居する摩訶不思議な風景画です。
この《カーニバルの夜》のような、ルソー初期の風景画は、現存する作品数が少なく極めて貴重です。
ハーモ美術館のルソー作品
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
長野県諏訪湖のほとりにあるハーモ美術館では、貴重なルソーの風景画作品を見ることができます。
所蔵するルソー作品は9点で、日本最多です。
1990年に開館して以来、”独学で絵を描いた画家”の作品を主にコレクションしてきました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この美術館では、所蔵するルソー作品9点が一つの部屋に常設展示されています。
そのほとんどが風景画作品です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらは《釣り人のいる風景》という作品。
前にご紹介した《カーニバルの夜》と同じ頃に描かれた作品です。
この絵でも、色々とおかしな部分が見られます。
画面中央には、池に小舟を浮かべて釣りをする男性。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
釣り人の周りには木々が描かれています。
陰影の表現から左側から日の光が当たっているのが分かります。
ところが、木そのものの影は地面に描かれていないのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
木だけでなく、道行く人々にも影は描かれていないのです。
ルソーさんは影が好きじゃないんですかね…
「影を描かなかった理由に関しては色々に解釈できる問題だ」
そう話すのは、世田谷美術館学芸員の遠藤望さん。
この時代、物に影をつけない描き方が流行ったというのもその理由の一つとして考えられます。
その背景にあるのが日本の浮世絵です。
影が描かれていない浮世絵を見た当時の画家たちが、その手法を取り入れていきます。
もしかすると、ルソーも影のない浮世絵を参考にしていたのかもしれません(あくまで推定ですが)。
《果樹園》1886年
アンリ・ルソー
ハーモ美術館蔵
こちらはルソーの風景画作品の中でも、傑作の呼び声が高い作品、《果樹園》。
パリ郊外の秋の風景を描いています。
《果樹園》という題でありながら、果物は一切描かれていない、不思議な作品です。
画面上部に描かれている雲と山並みは、右側から目で追っていくと、いつしか繋がって一体化してしまっています。
ルソーはこの作品で画面を3部分に分けて描いています。
画面下段には、黒く影のような木々。
中段部分には、秋の紅葉と建物。
そして上段は空と雲と山並みです。
平面的な画面構成により、不思議な遠近感が作られているのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そんなルソーの作品をこよなく愛したのが、あのピカソでした。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ルソーが亡くなった後、この《果樹園》が売却された際には、ピカソ自ら「これは本物のルソー作品だ」というサインまで残しています。
《エッフェル塔とトロカデロ宮殿の眺望》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
神奈川県の箱根にあるポーラ美術館。
ここにちょっと不思議なルソーの風景画作品があるといいます。
《エッフェル塔とトロカデロ宮殿の眺望》1896-1898年
アンリ・ルソー
ポーラ美術館蔵
中心には空高くそびえるエッフェル塔。
この当時、パリ万博のために建てられた、完成して間もない姿です。
パッと見ですと普通の風景画ですが、よくよく見ていくとおかしな点に気が付きます。
空は茜色に染まり、夕焼けの場面を描いているように見えます。
しかし、太陽らしきものはまだ高い位置に描かれているのです。
またこの丸い物体は「月ではないか?」という考えもあります。
しかし、満月であれば太陽と同じ方向にあるのもおかしいのです。
番組ゲストの鶴田真由さんは「ルソーは好きなものは全部、絵の中に入れたいのでは?」と言います。
「現実的な事はどうでもよくて、自分の心象に残っている事とか、自分の意識にある事は絵の中に入れたいっていう」(鶴田真由さん)
今回の記事はここまでになります。
続くパート2では、ルソーが描いた肖像画作品について見ていきます。
【日曜美術館】アンリ・ルソー②【美術番組まとめ】
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[…] 今回の記事はパート2になります。 前回のパート1はこちら☚からご覧ください。 […]