2021年5月9日にNHKで放送された「日曜美術館」の【孤高の花鳥画家 渡辺省亭】の回をまとめました。
今回の記事はパート2になります。
前回のパート1はこちら☚からご覧いただけます。
番組内容に沿って、+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
展覧会「渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-」
東京藝術大学大学美術館で2021年3月27日(土)から5月23日(日)まで開催の展覧会「渡辺省亭-欧米を魅了した花鳥画-」。
この展覧会を企画した古田亮氏によると、3年ほど前から本格的に準備が始まったといいます。
その頃はまだ作品が揃うのかどうか、というくらいで、作品数も100点から150点と少なかったといいます。
そこから様々情報を集め、個人コレクターの存在を知ったりして、今では500点ほど作品が確認できるようになったと言います。
《十二ヶ月花鳥図》
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
省亭の花鳥画の集大成ともいうべき作品《十二ヶ月花鳥図》。
四季の花々と鳥を組み合わせて、12の月それぞれを表しています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらは『三月』の作品。
散りゆく桜の花が叙情的に表現されています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
桜の下には悠然と歩む雉の姿。
緻密に描かれたその姿からは、体温までも伝わってくるようです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらは『六月』の作品。
雨は刷毛を使って薄く描かれており、その湿った空気感までも伝わってくるようです。
アジサイの青色もかすかにくすんだ表現になっています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ツバメその身を縮め、雨に耐える姿が描かれています。
省亭は平面の燕を描くために、立体で、いわば3Dで観察しているのです。
「表面はどういう質感で、中はどういう構造になっているのか?」
そこまでを観察した上で、単純化して描く事で、まさにそこにいるような存在感を放つのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
冬の寒さが厳しい『十二月』。
蓮の花は枯れ、残った葉も朽ち落ちています。
水上には3羽の鴨の姿が。
省亭はこのように入念に仕上げた12枚の作品を描き分けたのです。
鳥類学者 高橋雅雄氏の分析
鳥類学者の高橋雅雄氏は「省亭を見て思ったのは、非常に鳥が好きなのはその通りなのですが、その中でも熱狂的にこの人は(鳥が)好きなんだろうな」と言います。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらはトラフズクという、ミミズクの仲間のはく製です。
フクロウ類は、夜、視覚と聴覚を駆使して獲物を捕まえるので、目が正面についていて立体視できるようになっています。
耳は目の脇についており、丸い顔の形がパラボラアンテナの役割を果たす事で、音を集約して微かな音も聞き逃さないようにしているのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こういった顔の構造なので、フクロウを描く際には正面からだと平面的で描きやすいのですが、横からだとまるでお皿を横から描くようなもので、非常に難しくなります。
ですので、大半の画家がフクロウ類は真正面から描きます。
省亭は「じゃあ、俺は横から描くぞ」と、フクロウを横から描いて見せるのです。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そしてこちらが省亭の描いた横向きのフクロウです。
《十二ヶ月花鳥図》、9月の一枚です。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
「でも横から見ると、全くこうお皿っぽくなく、本当はちらっと目やくちばしが見えます。くちばしの上のところの羽毛が盛り上がっています」(高橋氏)
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
また目の周りの毛も他の部分とは質感が異なっています。
省亭は本物をしっかりと観察し、構造を理解して描いているのです。
「省亭は他の画家を相当意識していたのでは?(従来)描かなかったもの、描けなかったものを俺は描けるぞ。そういった挑戦状のように作品を残していったのでは?」と高橋氏は言います。
古田亮氏の解説
また、番組解説の古田亮氏は、省亭の記憶について言及しています。
現代の私たちの感覚でいうと、絵画というのは写真を撮るのと同様で、カメラで一瞬を捉える、という発想になります。
「(しかし)そうではないんですよね」と古田氏は言います。
すなわち鳥は常に動いており、それを無理やり一瞬で捉えるのではなく、省亭は全部の動きを観察したのです。
その観察の上で、「じゃあ絵にするときにどうしようか」という事で、その観察の記憶、動き回る鳥の記憶を使って描いたのです。
ですので、前からも描けるし、後ろからも描ける、となっていくのです。
省亭 パリへ
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
1878年、パリでは万国博覧会が開催され、日本も参加しました。
この時省亭もパリ万博参加の為に渡仏しています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
そんな中、パリの日本美術愛好家が集まった席で省亭は絵を描く事になりました。
即興的に描かれた作品に、その場に居合わせた参加者たち皆が驚きました。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
その時の様子を、フランスの作家で美術評論家のエドモン・ド・ゴンクールがこのように記しています。
省亭この時28歳。彼こそ日本画家として初めてヨーロッパに渡った人でした。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この時に描いた作品の一枚がこちらです。
素早い筆さばきで2羽の小鳥が描かれています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
この絵はあの有名な印象派の画家に送られた一枚でした。
画面左下には、「ドガース君 省亭」と書かれています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
ドガースとは、あの踊り子の作品で有名なエドガー・ドガの事です。
ドガは省亭の筆を借りて、自ら墨絵を描いたとも言われており、この《鳥図》も生涯手元に置いていたといいます。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
こちらの《群鳩浴水盤ノ図(ぐんきゅうよくすいばんのず)》という作品。
省亭はパリ万博にこの作品を出品し、銅杯を受賞しました。
描かれているのは、浅草・浅草寺の境内の水盤に集まる鳩の群れです。
パリに渡る前年、27歳の時の作品です。
特筆すべきは鳩の描写です。
折り重ねるように集まった鳩を、輪郭線を用いることなく、見事に描き分けています。
印象派の父、マネの弟子であるイタリア人画家ジュゼッペ・デ・ニッティス(1846~1884)がこの《群鳩浴水盤ノ図》を購入。研究しようと模写を試みましたが、その圧倒的な技術力を前に模写する事を断念したという逸話が残っています。
この作品は現在アメリカのフリーア美術館に所蔵されています。
この美術館の作品は、コレクションを築いたトーマス・フリーアの遺言によって、他館への貸し出しが行われておらず、門外不出の作品になっています。
画像出展元:テレビ番組「日曜美術館」より
省亭が帰国した後も、ロンドンで2度個展が開かれるなど、海外で高い評価を得るのです。
今回の記事は一旦ここまでになります。
この続きはパート3にて。
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