【ぶらぶら美術・博物館】小村雪岱スタイル③【三井記念美術館】

ぶらぶら美術・博物館

2021年3月9日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#372 三井記念美術館「小村雪岱スタイル 江戸の粋から東京モダンへ」〜歴史に埋もれた“和モダン”の天才が今、復活!山下裕二先生の徹底解説で〜】の回をまとめました。

今回の記事はパート3になります。
前回のパート2はこちら☚からご覧いただけます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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「小村雪岱」傑作三部作!

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらは雪岱の代表作《青柳》《落葉》、そして《雪の朝》の三枚です。
今回の展覧会では、これら3枚が並んで展示されています。

埼玉県立美術館に《青柳》が所蔵されていますが、そちらは絹に描いた肉筆画です。
今回の3作品はすべて版画になりますが、どれも非常に良い出来の版画だといいます。

雪岱亡き後、弟子の山本武夫氏が中心となり「雪岱会」という会が結成されます。
会員には鏑木清方邦枝完二等、雪岱にゆかりの深い人々が名を連ねています。

その山本武夫氏の監修の下、この三作の版画が限定300部で発行されました。
当時は戦時下という事で、「雪岱の作品がなくなってはいけない」という思いから出版されたといいます。
防空壕の中で試し摺りをした」という逸話も残るほど、切迫した状況だったのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

この三部作はどれも雪岱が愛した”日本橋の風景”を描いています。
雪岱自身も日本橋・檜物町(現在の八重洲一丁目)に住んでいました。

《青柳》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

青柳》では柳が芽吹く、春の風景を描いています。


畳や縁側に見られる直線、そして柳の曲線のリズムが見事です。
抑えられた色数の中で、鼓と右下の朱色の部分が作品の中でアクセントになっています。


画面中央には三味線と鼓だけが、ぽつんと置かれています。
この状況はお稽古の前なのか?後なのか?
これから人が来るのか?それとも人が帰った後なのか?
と色々と想像することができるのがこの絵の魅力です。

人は描かれていませんが、人の気配を感じさせるこういった絵を「留守模様(るすもよう)」といいます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

また上から見下ろすような構図は「吹抜屋台(ふきぬけやたい)」と呼ばれ、古い日本の絵巻物などに見られる表現です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

雪岱は國華社に勤務している時に、日本の古典美術の模写などを手掛けていましたので、そういった経験がこの作品にも生きているのです。

《落葉》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらも同じく吹抜屋台の構図で描かれています。
青柳》は春でしたが、ここでは秋の情景が描かれています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

地面には落ち葉が敷き詰められていますが、その中に白とピンクの花びらも確認できます。
という事は、この近くに描かれてはいませんが、この花びらを咲かせた木がある、というのを表しているのです。


画面上部から垂れる枝は、非常に細く薄く描かれています。
雪岱は必要最低限のものしか画面には描かなかったのです。

《雪の朝》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

最後は冬の情景を描いた《雪の朝》です。


画面を斜めに横切る雪の線の大胆さが見事です。
まるで抽象画のような作品です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

障子越しの灯りのともった感じの表現が見事です。
まるで室内の温かさが伝わってくるようです。

これだけシンプルな線と形と色で、見事に「雪の朝」の情緒を表しています。

「夏」を描いた作品は?

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

ここまで「春」「秋」「冬」の情景を描いた三部作をみてきました。

山田五郎さんは今回の展覧会の隠し玉として、山下先生が「夏」の作品を発表するのでは?と考えていたそう。
しかし残念ながら、「夏」は今の所まだみつかっていません
(山下先生は「夏の作品もあったはず」と言います)

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

「夏」の作品がどんなだったか想像するヒントがあるといいます。
それがパート1でご紹介した泉鏡花日本橋』で描かれた四季です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

中でも「春」はモチーフが共通していて、とてもよく似ています。
「冬」もどことなく雰囲気は近しいですが、「秋」はかなり違っています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

「夏」は建物の直線が効いた構図に、大胆な遠近法、そして空に浮かんだ月がポイントです。

もしかしたら何年か後に「夏」の作品も発見されるかもしれませんね!

今回の記事はここまでです。
次のパート4でラスト!
雪岱の貴重な肉筆画作品についてまとめていきます。
こちら☚からご覧いただけます。

コメント

  1. […] 今回の記事はここまでになります。 続くパート3では、雪岱の代表作《青柳》《落葉》そして《冬の朝》についてまとめていきます。 こちら☚からご覧いただけます。 […]

  2. […] 今回の記事はパート4、小村雪岱の舞台美術・肉筆画作品についてまとめていきます。 前回のパート3はこちら☚からご覧いただけます。 […]

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