【ぶらぶら美術・博物館】小村雪岱スタイル④【三井記念美術館】

ぶらぶら美術・博物館

2021年3月9日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#372 三井記念美術館「小村雪岱スタイル 江戸の粋から東京モダンへ」〜歴史に埋もれた“和モダン”の天才が今、復活!山下裕二先生の徹底解説で〜】の回をまとめました。

今回の記事はパート4、小村雪岱舞台美術・肉筆画作品についてまとめていきます。
前回のパート3はこちら☚からご覧いただけます。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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雪岱の手掛けた舞台美術

本の装幀や挿絵で大忙しの雪岱ですが、舞台美術の仕事も手掛けました。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

山下先生曰く「設計図のようなもの」との事で、雪岱の描いた絵を元に大道具さんや小道具さんが舞台をつくり上げていったのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

雪岱直筆の細かい指示が随所に書かれています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらは川口松太郎の『お江戸みやげ』の舞台美術です。
川口松太郎は小説家・劇作家で、『風流深川唄』では第一回直木賞も受賞している人物です。

雪岱は依頼された仕事には100パーセントの力を出して、その期待に応えていたのです。

小村雪岱の肉筆画作品

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

本の装幀や挿絵、舞台美術など幅広い仕事を手掛けた雪岱ですが、彼の”肉筆画”は非常に数が少ないといいます。
その理由はズバリ「忙しかったから」

雪岱の元には本の装幀から挿絵、舞台美術など様々な仕事の依頼が舞い込んでいました。
オファーがひっきりなしにくるので、腰をすえて肉筆画を描く時間がなかったのです。

しかし画壇という所では、肉筆画を描かなければ評価はされません。
画壇の中で評価されたい」などという考えは雪岱には更々なく、顧客から依頼された仕事を一つ一つ丁寧にこなす事を大事にしたのです。

今回の展覧会では貴重な肉筆画作品が展示されています。

《赤とんぼ》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらの《赤とんぼ》という作品。
暖簾から女性が顔を覗かせており、その視線の先には赤とんぼが。

一見すると、なんだか布から首だけ出ていてどういう状況なのか分からない作品です。
暖簾をよける指などが描かれていれば、もっと分かり易い気がしますが、雪岱はあえて余計なものは描かないという方法を取ったのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらの女性の髪の表現(特に鬢(びん))が独特です。

雪岱は”昭和の春信”と呼ばれましたが、春信というよりも歌川国貞の影響が強いと山下先生はいいます。
実際に雪岱自身も「私は江戸末期の浮世絵の顔では、国貞の描く女の顔を最も好みます」という事をエッセイの中で書いています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

女性の顔の描き方や少々やんちゃな魅力を含んでいる点も、春信より国貞の方に近いといいます。

《月に美人》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらは元々は団扇に描かれていたものだと考えられており、それを表装し直し、作品化しました。

表装も浴衣地で洒落たデザインになっています。

橋の欄干にもたれかかった女性が何かを見ているようです。
何を見ているかというと…

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

うっすらと浮かぶ月を見ているのです。
紺一色のこの空間が水面なのか、空なのか分かりません。
しかしここには果てしなく、そして深い空間の広がりが表されています。

《こぼれ松葉》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

女性が上を見ながらたたずんでいます。
タイトルからも分かるように、上から落ちてくる松葉を見上げているのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

今まさに落ちてきている、ただ一つの松葉を見つめています。
その松葉の描き方も、落ちている動きがみえるかのように絶妙です。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

構図的に上の余白をかなり大きく取っています。
これにより、かなり大きな松の木がある事を伺わせます。

雪岱はあえてその松の巨木を描かず、余白で存在を表しているのです。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

山下先生は地面に落ちている松葉の描き方や配置も絶妙だといいます。
特に膝の横に描かれている松葉、この一つが絵に奥行きを与えているのです。

雪岱ならではの無駄のない構成、見事な構図、そして線の美しさを堪能できる傑作です。

《柳橋》

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

こちらの《柳橋》という作品は、雪岱の肉筆画作品の中でも最大級のものです。

橋の上に二人の女性、下を通る船にも二人の女性が描かれています。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

画面左側の柳の表現が圧巻です。
雨に煙った表現で、すごく湿度の高い感じを伝えてきます。

画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より

橋の下を通る舟の屋根の高さがぎりぎりになっています。
おそらく長雨で水かさが増しているのです。

上の女性はもしかすると下の舟の女性に「大丈夫?通れる?」と心配して話しかけているのかもしれませんね。

いかがでしたでしょうか。
三井記念美術館小村雪岱スタイル』の特集記事は以上になります。

最後までお読みいただきありがとうございました!

コメント

  1. […] 今回の記事はここまでです。 次のパート4でラスト! 雪岱の貴重な肉筆画作品についてまとめていきます。 こちら☚からご覧いただけます。 […]

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