【アートステージ】ウィリアム・ブレイク【美術番組まとめ】

2020年6月6日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【ウィリアム・ブレイク イギリス最大の幻想画家】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪

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イントロダクション:ウィリアム・ブレイク

ウィリアム・ブレイク

ウィリアム・ブレイク(1757-1827)はイギリスで18世紀から19世紀にかけて活躍した詩人であり、画家であり、銅版画も制作した人物です。

預言者」とも呼ばれた彼の作品は、幻想的なスタイルがその特徴です。

独創的な作風で、生前はなかなか評価されませんでしたが、死後、その創造力や作品に込められた意味が再評価され、今では数々の文学や映画にインスピレーションを与えています。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

2002年にイギリスBBCの調査、”最も偉大な英国人トップ100”では38位にランクインしています。

またイギリスで国家のように親しまれている「エルサレム」という歌がありますが、この曲の作詞を手掛けたのも、ブレイクでした。

今回は絵画と詩の両方で、偉大な足跡を残したウィリアム・ブレイクについてまとめていきます。

ブレイク《ニュートン》


《ニュートン》1795-1805年頃
ウィリアム・ブレイク
テート・ブリテン蔵

薄暗い海の底で、男性が腰かけています。
一見すると神話や小説の登場人物のようです。

じつはこの人、タイトルにもある通り、「万有引力」を発見したあのアイザック・ニュートンです。
真剣なまなざしでコンパスを手に、何か図形を調べているようです。
肉体はミケランジェロを彷彿とさせる筋肉質な姿をしています。

ブレイクはこの作品でニュートンの偉業を褒め称えようとしたのでしょうか?

アイザック・ニュートン

木から落ちるリンゴを見て、万有引力を発見した科学者、アイザック・ニュートン(1642-1727)。
ブレイクより100年ほど前に生きた人物です。

ニュートンがもたらした数々の科学的な発見によって、17世紀は自然科学に革命が起きました。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

しかし、それはやがて”盲目的な科学信仰”となっていきます。

ブレイクの生きた18世紀末になると、”科学万能の世界観”に対して疑問視する風潮が生まれてきます。


ブレイクの描いた《ニュートン》も、そんな時代の流れの中で、化学一辺倒の世相に異議を唱えるべく描かれたのです。

しかしこの作品は単なる”世相批判”にとどまらない魅力を放っています。

例えば、複雑な色合いの岩肌の表現や背景の深い青など。ブレイクの特徴である幻想的な色彩感覚にあふれています。


作品をよく見てみると、左足の部分はまるで岩に同化するように描かれています。
これには一体どういう意味が込められているのでしょう。

画家ウィリアム・ブレイク

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

イギリス最大の幻想画家”と呼ばれるウィリアム・ブレイク

彼は1757年ロンドンに生まれました。早くから絵に才能を発揮したブレイクは10歳の時に画学校に入学。その後は銅版画家に弟子入りし、修行を積みます。
やがて独り立ちし、雑誌の挿絵などを描いて生計を立てていたブレイクに転機が訪れます

仲の良かった弟を結核で亡くしたのです。この時ブレイクは30歳でした。
ブレイクは、弟の魂が天に昇っていく幻想を見たと言います。
そして以降の彼の画風は、そのビジョンに導かれるように、幻想的なものになっていくのです。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

ブレイク彩色印刷(さいしょくいんさつ)と呼ばれる、全く新しい銅版画の技法を発明しました。
この技法により、詩とイメージを融合させた新しい表現を獲得するのです。

以降、ブレイクはこの彩色印刷を使って、次々と傑作を生みだしていきます。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

燃えるような色彩と炎のようにうねる線。ブレイクは宗教的な感情と幻想的なビジョンを独自の感覚で表現しています

ブレイク『無垢と経験の歌』

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

幻想的な作風のブレイクですが、決して浮世離れした芸術家ではありません
当時の社会情勢を風刺した作品や、社会的に弱い立場にある人(貧しい人々や女性)への共感を込めた作品も残しています。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

こちらの作品は煙突掃除の子』という詩と、そのイメージを描いたものです。

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

当時、大人では入る事のできない狭い煙突の中の掃除は、小さな子どもが行っていました。
貧しい家では、親が煙突掃除にと、自分の子どもを売り飛ばす事もあったといいます。

この詩の主人公であるトムも同じ境遇です。

詩の部分は以下のような内容です。
ある夜、彼は夢を見ます。
そこでは天使が現れて、仲間たちと一緒に緑の牧場へと連れていってくれます。
目覚めたトムはいつものように煙突掃除に出かけます。
しかし彼の心には希望の光がともされていました。
自分の務めを果たしていれば、恐れるものは何もない

画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より

画面下には煙突から解放された子どもたちが、楽園で楽しそうに過ごす姿が描かれています。

その姿からは、ブレイクの子どもたちへの哀れみ、そして祈りが込められているようです。

ブレイク《恋人たちの旋風―ダンテ『神曲』の挿絵》


《恋人たちの旋風―ダンテ『神曲』の挿絵》1826-27年
ウィリアム・ブレイク
バーミンガム美術館蔵

ブレイクは晩年になると、長く愛読してきたダンテの『神曲(しんきょく)』の挿絵に取り組みます。
こちらはその一枚、『恋人たちの旋風(つむじかぜ)』です。

無数の人々が渦巻く風に飲み込まれていっています。
ここに描かれているのは、愛欲に溺れた者が落ちる地獄の光景です。

人々は”暴風に永久に翻弄される”という罰を受けているのです。


地面に横たわっているのは詩人のダンテです。
友人のパオロとフランチェスカの地獄での姿を見て、哀れみのあまり気絶してしまっています

苦しい時に幸せだった時を思うほど、つらいことはない
パオロとフランチェスカはそう言い残して、ダンテの元から立ち上るように風にのまれていきます。


神曲』の挿絵に心血を注いだ晩年のブレイク
しかし、完成を待つことなく1827年にこの世を去ります。

寒色と暖色の混ざり合った色彩や、目眩を引き起こすような幻視性など、まさに画家ブレイクの集大成といえる一枚です。

今回の記事はここまでになります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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