【アート・ステージ】アダム・エルスハイマー①【美術番組まとめ】

アート・ステージ

2019年10月5日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【アダム・エルスハイマー】の回をまとめました。

番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。

見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい。

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イントロダクション

アダム・エルスハイマー(1578-1610)

皆さまは、「キャビネット画」というのはご存知でしょうか?
小さな部屋を飾るのに丁度良いサイズの、小さな絵画の事を言います。

今回取り上げる画家、アダム・エルスハイマー(Adam Elsheimer)はそういった小さな作品を描いた、17世紀初頭のローマで活躍した画家です。

エルスハイマーの現存する作品の数は僅か40点ほど
「小さいサイズならもっと描けたんじゃないか?」と思われる方もいるかと思いますが、完全主義と憂鬱症の影響でそう多くは描けなかったと言われています。

彼の作品は細やかな描写に優れ、その出来栄えは目を見張らされるものです。

《聖家族のエジプトへの逃避》


《聖家族のエジプトへの逃避》1609年
アダム・エルスハイマー
アルテ・ピナコテーク蔵
こちらはエルスハイマーの最高傑作とも言われている作品です。夜空一面に広がる星と、闇に沈む森。
静かな詩情溢れる夜景です。
これは『新約聖書』のエピソードを描いています。
登場する人物は、イエスと聖母マリア、そして養父ヨセフ聖家族と呼ばれる三人です。
その三人が迫害を逃れて、エジプトへと逃れている場面です。

この場面は「エジプト逃避」と呼ばれ、ブリューゲル(父)カラヴァッジョなど数多くの画家が描いており、宗教画の定番のテーマと言えます。
エルスハイマーは登場人物を細かく丁寧に描いていますが、その存在は物語の主人公としてではなく、風景の一部のように描かれています

彼はこの作品のメインを人物ではなく、夜の風景をメインにしています。

この作品の大きさは、高さが31センチ・横幅が41センチとなっており、A3サイズとほぼ同じ大きさになっています。

そんな小さな画面にもかかわらず、(画像だと分かりにくいですが)夜空に描かれている星の数はなんと1200以上だと言います。

それを数えた人がいるんですね・・・

そこからもエルスハイマーがこの作品で何を最も描きたかったのかが分かります。
夜空にはその星々と共に、輝く満月と天の川も描かれています。
これらの配置は天文学的に正確に描かれており、1609年6月16日の夜空である事が研究により分かっているほどです。

しかし、どうしてエルスハイマーはこれほどまで正確に夜空を描くことができたのでしょう?
エルスハイマーの生きた時代は、地動説を唱えて異端審問にかけられたガリレオ・ガリレイが生きた時代でもありました。
そして地動説の立役者となった望遠鏡が発明されたのも、この作品が描かれる一年前、1608年の事でした。

また、エルスハイマーは科学アカデミーにも在籍していましたので、きっといち早く望遠鏡で夜空を眺める事が出来たのかもしれません。

エルスハイマーが与えた影響

エルスハイマー1578年、現在のドイツ・フランクフルトに生まれました。

14歳で画家の道に進み、22歳の時にローマを訪れます。
そして32歳の若さで亡くなるまで、生涯をローマで過ごしました。
今となっては知る人ぞ知る存在ですが、当時は高い名声を得ていました。

ピーテル・パウル・ルーベンス(1577-1640)

王の画家にして画家の王」と呼ばれたルーベンスも彼の才能を認めた一人です。

ローマを訪れた際にエルスハイマーと仲良くなったルーベンスは、中々作品が完成しない彼を励まし続けたと言います。
そしてエルスハイマーが32歳の若さで亡くなると、その友人を偲んで以下のように言いました。

この偉大なる画家の喪失によって。絵画そのものが喪に服さなければならない」と。


《アポロとコロニス》1606-08年
アダム・エルスハイマー

エルスハイマーの作品は小さいサイズからも分かるように、プライベートな部屋に飾られるのがほとんどでした。
ですので多くの人の目に触れる事がなく、段々と忘れ去られていきました。

しかし、彼の弟子たちによって銅版画版が造られ、多くの国や地域、また時代も超えてその影響は広まっていきました。


《自画像》1640年
レンブラント・ファン・レイン
ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵

オランダを代表する巨匠、レンブラント
彼も銅版画版を通じてエルスハイマーを知り、その影響を受けました。


《聖ステパノの石打ち》1625年
レンブラント・ファン・レイン

レンブラントのデビュー作である《聖ステパノの石打ち》は、エルスハイマーの作品を意識したものだと言われています。


《聖ステパノの石打ち》1603年
アダム・エルスハイマー

こちらがエルスハイマーの描いた同じ主題、《聖ステパノの石打ち》です。
登場人物の配置や、アングルなど似ている箇所が見受けられます。

彼らの他にも、風景画で人気を博したクロード・ロランエルスハイマーから影響を受けた画家の一人です。
彼の得意とした「風景と人物」の画風には、その影響が色濃く感じられます。

クロード・ロラン(1600年代-1682)

パート1はいったんここまでです。
パート2へと続きます。
【アート・ステージ】アダム・エルスハイマー②【美術番組まとめ】

コメント

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