2021年2月6日にTOKYO MXで放送された「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」の【ボスとブリューゲル フランドル絵画 ふたりの巨匠】の回をまとめました。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
イントロダクション
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
ベルギーとオランダにまたがるフランドル地方。
ここでは中世以来、毛織物業が栄えてきました。
またこの地は、ヤン・ファン・エイクをはじめとする数多くの画家を輩出しました。
今回はルネサンス期のフランドルが生んだ2人の巨匠についてまとめていきます。
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
一人はヒエロニムス・ボス(1450年頃~1516)です。
現存する資料が少なく、謎の多い画家として知られています。
模写も数多く確認されており、真作は全部で30作以下といわれています。
彼はそのユニークな幻想性から、”シュルレアリスムの先駆者”とも呼ばれます。
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
そしてもう1人はピーテル・ブリューゲル(父)(1525/30年頃~1569)です。
ボス《快楽の園》
《快楽の園》1490-1500年
ヒエロニムス・ボス
プラド美術館蔵
豊かな想像力で、独自の世界観に満ち溢れた作品を残したヒエロニムス・ボス。
中世からルネサンスへと移り変わる時代に、キリスト教社会や人間の行いを冷静に観察した画家です。
そんな彼の代表作といえば、プラド美術館所蔵の《快楽の園》でしょう。
縦2メートル以上、横幅は4メートル近い大きさで、3枚のパネルから構成された祭壇画です。
それでは左→右→中央の順番で見てまいりましょう。
一番左に描かれているのは、『創世記』のエデンの園です。
落ち着いた色調で、穏やかな風景が広がっています。
画面下部には3人の人間の姿が。
左からアダム、神、そしてイヴです。
イヴにそそのかされたアダムは禁断の実を口にしたために、楽園を追放されてしまいます。以降、人間は原罪を背負う定めとなりました。
この《快楽の園》で描かれているのは、禁断の実を口にする前の2人の姿。その周囲には動物や鳥が集い、まさに楽園そのものです。
左の「エデンの園」と対となるのが、右側のパネルです。
ここには地獄の光景が描かれています。
全体的に暗く沈んだ色調の中に描かれているのは、残酷な拷問から逃げ惑う人々です。
画面上部では火事が起こっています。
その下では、人間を丸のみにする鳥の頭の怪物が。
全体的にどこかユーモラスでありながらも、不気味さが漂う、そんな一枚です。
祭壇画において左右の作品は、いわばサブ作品です。
この《快楽の園》でも主となるのが真ん中のパネルです。
裸姿の男女が乱痴気騒ぎを繰り広げています。
ここは禁断の実を食べ、快楽を覚えた人間が生きる世界なのです。
堕落した聖職者や欲情に溺れる者たち。
ボスはこの絵で人間の罪、そして愚かさを告発しているのです。
その後ここに描かれている人々は、右パネルの地獄の世界へと落ちる事になるのです。
この作品が描かれた頃、ヨーロッパでは戦火が絶えず、また疫病や飢饉も蔓延していました。
ボスはそんな不安な時代を生きていた人々の、心のざわめきを視覚化したのかもしれません。
ブリューゲル(父)《農民の結婚式》
ヒエロニムス・ボスが亡くなって十数年後、その想像力を受け継いだ画家が同じフランドルに誕生しました。
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
それがピーテル・ブリューゲル(父)です。
ブリューゲルは宗教画から風俗画まで幅広いジャンルの作品を描きました。
教養豊かな都会人だったブリューゲル。
彼は自然と共に生きる農民の姿を温かな共感を込めて描き、”農民画家”と呼ばれました。
それではブリューゲルの農民の姿を描いた作品を見てみましょう。
《農民の結婚式》1568/69年頃
ピーテル・ブリューゲル(父)
ウィーン美術史美術館蔵
こちらは農村の結婚式を描いた一枚です。
たくさんの人が描かれ、その賑わいが伝わってくるようです。
会場となっているのは農家の納屋です。
主役の一人、花嫁は緑色の幕の前に座っています。
しかしもう一人の主役である花婿の姿が見えません。
じつは当時の結婚式では、来客をもてなすのが花婿の仕事でした。
ですのでこちらの黒い服を着て、飲み物を注いでいる男性が花婿ではないか?という説があります。
こちらは来客用のタルトを運ぶ男性たち。
よく見るとタルトを載せる台は、外した扉を使っています。
注意深く運ぶ姿がリアルです。
そのすぐ後ろでは子供が地面に座り込んで、皿に残ったタルトを指で舐めています。
無邪気な姿が微笑みを誘います。
テーブルの端の方では何やらひそひそ話をする二人の男性がいます。
彼らは修道士と村の領主です。
彼らは立場上、宴会の最中でもその賑わいからは少々身を引いているのです。
ブリューゲルは人々をそれぞれ個性的に描き分けています。
彼の優れた観察眼も賜物です。
ブリューゲルが生きた時代もまたボスの頃と同じく混迷を極めていました。
そんな時代の中でも逞しく生きる農民に、人間の理想の姿を重ねていたのかもしれません。
ブリューゲル(父)《バベルの塔》
ブリューゲルを語る上で外せない作品といえば、《バベルの塔》でしょう。
旧約聖書『創世記』に取材した作品です。
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
気が遠くなる程細かいところまで描き込まれています。
縦114センチ×横155センチの画面の中には1400人もの人が描かれています。
数えた人もすごいですが!
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
画面手前にはこの塔の建設を指示したといわれるニムロデ王も描かれています。
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
その横には港が描かれています。
ここはブリューゲルが活動していたアントワープの港がモデルになっているといわれています。
ボスもブリューゲルも空高く、”鳥の目線”から描いた作品が多いのが特徴ですが、この《バベルの塔》もその一枚です。
人間の思い上がりをいさめた傑作です。
画像出展元:テレビ番組「アート・ステージ~画家たちの美の饗宴~」より
生まれた年が正確には分かっていないブリューゲル(父)ですが、40代の前半で亡くなったといわれています。
しかし彼の子供や孫も画家として活躍し、さらにはひ孫や玄孫の代までも画家となります。
ブリューゲル(父)からおよそ150年に渡る”画家一族”が活躍するのです。
今回の記事はここまでになります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。