2021年1月26日にBS日テレにて放送された「ぶらぶら美術・博物館」の【#367 東京ステーションギャラリー「河鍋暁斎の底力」〜画鬼・暁斎の知られざる直筆!妥協を知らない天才の力〜】の回をまとめました。
今回の記事はパート4になります。
前回のパート3はこちら☚からご覧頂けます。
番組内容に沿って、それだけでなく+α(美術検定で得た知識など)をベースに、自分へのメモとして記事を書いていこうと思います。
見逃した方やもう一度内容を確認されたい方は是非ご覧になって下さい(^^♪
《米国砂漠原野の場 下絵》
こちらの作品はパート3でご紹介した『漂流奇譚西洋劇』の別場面の下絵になります。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
今度の舞台はアメリカの砂漠です。
蒸気機関車がネイティブアメリカンに襲撃され、乗っていた三保蔵と若葉も襲われているという場面です。
ネイティブアメリカンはこん棒を振りかざし、まるで仁王様のように描かれています。
暁斎はネイティブアメリカンを見た事がないので、想像で描いたと考えられます。
こちらの作品はあくまで当時の劇の一場面として描かれたものです。
《漂流奇譚西洋劇 米国砂漠原野之図》
河鍋暁斎
ビティヒハイム市立美術館蔵
*こちらの作品は『河鍋暁斎の底力』の出展作品ではありません
《米国砂漠原野之図》の本画はドイツのビティヒハイム市立美術館に収蔵されています。
暁斎は『漂流奇譚西洋劇』の行灯絵を全部で5枚描いていますが、内2枚だけが現存します。
(もう一枚はパート3で紹介した《パリス劇場表掛りの場》です)
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この下絵は裏側にも別の下絵が描かれており、今回の展覧会では立てて置くことで、両面が見られるようになっていました。
《西洋劇の場 下絵》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらも同じ『漂流奇譚西洋劇』の別場面です。
この歌舞伎には劇中劇として、外国人出演者が踊る場面がありました。
当時は実際に西洋の劇団も来日公演していたそうですが、文明開化して間もない日本人には前衛的過ぎて、あまり受け入れられなかったそうです。
《女人群像 下絵》
《女人群像 下絵》制作年不詳
河鍋暁斎
河鍋暁斎記念美術館蔵
こちらも本画の下絵になります。
今見ると、かなり”密”な状態の作品です。
描かれている女性たちは服装や髪形から、様々な時代や身分の人が描かれているのが分かります。
こちらの女性は唐輪髷(からわまげ)という髪型をしています。
画面下部には江戸の女性の姿が見えます。
こちらは平安・鎌倉期に見られた市女笠(いちめがさ)の女性です。
このように様々な女性を一つの画面にまとめて描いているのです。
きっと壮大で優美な一枚になっていたと考えられますが、こちらも本画は見つかっていません。
実際に完成したのか、もしかしたら海外のどこかにあるのか。
はたまた日本に存在したが、戦争や震災で焼失してしまったのか。
もし本画があればかなりの力作になっていたことでしょうね。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この下絵をよく見ると、上から紙を貼って細かく直しているのがわかります。
紙を貼って直し、さらには修正液のようなもので直してと、暁斎の試行錯誤のあとが見てとれる、貴重な下絵です。
このように継ぎはぎされている紙の数は全体で50枚以上になりますが、発見当初はその50枚の紙もバラバラの状態でした。
その紙片を繋ぎ合わせる作業があって、この下絵が今の状態になったのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この辺なんてもうパズルみたいな感じですよね。
これらの下絵は暁斎の子孫が戦時中に桐箱に入れて疎開させていました。
そのような状態の中でのりが剥がれてしまい、ばらばらになったのです。
それらを暁斎のひ孫にあたる河鍋楠美さんが整理し、ファイリングしました。
さらに修復師の大柳久栄氏との出会いにより修復作業が進み、今回の展覧会に至ったのです。
修復作業は今も継続して行われているといいます。
《鳥獣戯画 猫又と狸 下絵》
《鳥獣戯画 猫又と狸 下絵》制作年不詳
河鍋暁斎
河鍋暁斎記念美術館蔵
こちらの作品は、2019年にサントリー美術館で開催された『河鍋暁斎 その手に描けぬものなし』のメインビジュアルにもなっていました。
そちらでご覧になった方も多いのではないでしょうか?
こちらも下絵だったのですね!当時は完成作とばっかり思ってました!
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
じつはこちらの赤い部分、上から3分の1の所が近年発見され、今回の展覧会で初公開されました。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
矢印で示したネズミの手の部分があった事から、上の部分との繋がりが判明したのです。
狸と猫又(ネコの妖怪)が踊る絵だと考えられていましたが、じつはネズミが上からスポットライト代わりのロウソクで、踊る2匹を照らしているのがこの発見で分かったのです。
こちらの作品も本画の存在が確認されていません。
《鳥獣戯画 梟と狸の祭礼行列 下絵》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらも同じ鳥獣戯画で、梟(ふくろう)とオオカミとおぼしき獣にまたがる狸、そして蛙などが描かれています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
獣の頭の上にはガイコツが描かれています。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
梟も非常に表情豊かに描かれています。
下絵という事ですが、もうこれが本画でも全然良いように思える、素晴らしい出来栄えです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
この作品も《鳥獣戯画 猫又と狸 下絵》のように上の部分が、今後もしかすると見つかるかもしれません。
確かに唐突な切れ方してますもんね。
晩年の暁斎
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
河鍋暁斎は、団扇の下絵や、レストランのメニューや西洋料理の本の挿絵、硯(すずり)や銅像のデザインまで幅広い仕事をこなしました。
この『河鍋暁斎の底力』展では、それら暁斎のデザイン下絵も数多く展示されていました。
学芸員の田中晴子さんは「(暁斎は)デザインだけで展覧会ができるだろう」と言っています。
それだけ多くの仕事を手掛けた暁斎ですが、晩年は本画の注文をしても”10年待ち”の状態だったといいます。
300点近い注文がたまっており、「死ぬまでに終えられるかどうかわからない」と暁斎自身も言っていたとか。
《動物図鑑》
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
こちらは暁斎が弟子たちのために描いた”絵手本”です。
ここに描かれているのは麒麟や白澤(はくたく)、サイなどの霊獣です。
弟子たちが霊獣のリクエストを受けた時に、この《動物図鑑》を参照する事で、彼らが描けるようにと暁斎が残したのです。
画像出展元:テレビ番組「ぶらぶら美術・博物館」より
絵手本ですが、もう本画の作品といっても差し支えない完成度の高さです。
今回の「河鍋暁斎の底力」の特集記事は以上になります。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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