2026年5月3日にNHKで放送された「日曜美術館アートシーン」の展覧会紹介の内容をまとめました。
*画像出展元:テレビ番組「日曜美術館 アートシーン」より
チュルリョーニス展 内なる星図 @国立西洋美術館

海岸と大海原を背景にピラミッド状の建物が屹立しています。
周囲には太陽や騎士の姿。
高みへと至る精神の象徴か、世界の根源的な姿か。
解釈は見る者に委ねられています。

謎めいた作品で人々を魅了するリトアニアの芸術家チュルリョーニス。
35年の短い生涯に残した珠玉の作品が来日しています。

チュルリョーニスは1875年、バルト三国の一つであるリトアニアにオルガン奏者の子として生まれました。
幼い頃から音楽の才を示し、作曲家となります。

やがて絵画への思いが募り、28歳で美術学校へ入学します。

その絵画世界は初めから独特。
現実とも空想ともつかぬ風景画です。

モミの木の立ち並ぶ湖畔。
「フーガ」は1つの旋律を模倣しながら追いかける音楽形式です。

水面の反射をよく見ると、現実とは異なっています。
それぞれが独自のリズムを刻むフーガ形式のよう。
絵画空間に音楽の時間性を取り込む、チュルリョーニスならではの世界です。

「19世紀末から20世紀初頭というのは、他の画家も音楽と絵画の融合というのは様々試みてはいるんですけれども、色彩で音楽・音を表現するというのが、比較的よく見られた取り組みですけれども、チュルリョーニスが特異だったのは、彼自身が職業的な作曲家で、音楽の構造というものを非常によく理解して絵画に取り入れたのが際立つ点かなと思います」(国立西洋美術館 研究員 朝倉南氏)

うねる銀河、ちらばる惑星。
「アレグロ(軽快に)」という題名のとおり、各モチーフが軽やかに連なります。

左右に走る銀河の波は幾重にも重ねられ、画面を構成します。
それは複数の独立した旋律が調和しながら全体を奏でる音楽形式「ポリフォニー」を想起させます。

従来の線的な遠近法の空間とは異なる多層的な空間です。

上空を駆けていく騎士。
かつて栄華を誇ったリトアニア大公国の紋章です。
しかし当時はロシア帝国に支配され、言語も宗教も弾圧を受けました。
晩年のチュルリョーニスは絵画に民族復興の思いを託します。

古来、さまざまな祈りを受け止めてきたリトアニアの十字架は、独立の象徴でもあります。
画家はその姿に詩的な画面を刻みました。

しかし旺盛な製作が心と体をむしばみます。
画家として活動を始めて僅か6年。
チュルリョーニスは35歳でこの世を去りました。

音楽と絵画の二刀流芸術家。
東京・上野の国立西洋美術館で2026年6月14日まで開催です。
生誕150周年 アルベール・マルケ展 @ひろしま美術館

柔らかな光に包まれたセーヌ川沿いの街。
フランスの画家アルベール・マルケは、ニュアンスに富む中間色を用いた、心地よい水辺の光景で知られています。

実はチュルリョーニスと同い年。
日本では約35年振りとなるマルケの個展が開催されています。
マルケはマティスの盟友で、出発点はフォービズムにありました。
見たままに描くのではなく、強烈な色彩で感性を画面に投影します。

やがて目にした光景を色調を抑え、平明な構図の中に描く独自のスタイルにたどりつきました。
簡潔ながらも対象を的確に捉えるマルケ独特の線描を、マティスは「北斎のように素晴らしい」と称えました。

この展覧会は広島市のひろしま美術館で2026年5月31日まで。
その後、久留米市美術館、三重県立美術館、東京のSOMPO美術館に巡回します。
葛飾北斎の展覧会 @北斎館(長野・小布施町)
葛飾北斎に関する展覧会が2026年6月7日まで、長野県小布施町で開かれています。

晩年の北斎が小布施に残した傑作《怒濤図(どとうず)》。
世界の根源を表すかのような、迫力ある「男浪(おなみ)」と「女波(めなみ)」です。

小布施町の岩松院(がんしょういん)には、北斎が関わったとされる鳳凰の天井絵があります。
若冲、琳派、京の美術 – きらめきの細見コレクション – @九州国立博物館

実業家の細見(ほそみ)家が三代80年に渡って収集した名品が九州に集います。

若冲は細見コレクションの中核。
1960年代、世間の注目を集めるその前から収集されました。

若冲初期の名作《糸瓜群虫図(へちまぐんちゅうず)》。
立派に育った糸瓜の周りに集まるさまざまな虫たち。
緻密に描かれたその姿、枯れた葉の表現、くるりと丸まった蔓。
若冲ならではの形態感覚です。

こちらの真正面から描かれた金魚は、愛嬌のある表情をしています。

じつは軒先につるされたガラス容器、金魚玉の中にいるのです。
近代京都の琳派、神坂雪佳(かみさかせっか)の作品。

朱が乾かぬうちに金泥をにじませ、水にゆらぐ様を表現しています。

この展覧会は福岡県・太宰府市の九州国立博物館で2026年6月14日まで。
特別展 北野天神 @京都国立博物館

京都・北野天満宮。
学問の神様として知られる天神様。

その天神信仰発祥の地で、全国の天神社・天満宮を代表する存在です。

祭神は菅原道真。
平安時代前期を代表する学者・政治家で、波乱の生涯の後、神として祭られました。

北野天満宮を中心に全国の天神ゆかりの文化財が集結。
学問の神様だけではない、多彩な信仰の形を紐解きます。

北野天満宮の至宝《北野天満縁起絵巻》。
道真の生涯と死後の出来事が描かれます。

最古の天神縁起絵巻で、ことば書きに「承久元年」とあることから「承久本」と呼ばれます。

その特徴は画面の大きさ。
縦52センチは現存絵巻最大級で、普通とは異なり紙を縦長につなぎ合わせています。

絵師は画面いっぱいにさまざまなモチーフを描きます。
とりわけ多彩な人々の姿や表情が魅力。

冒頭、人々でにぎわう菅原家。
やがて道真は衝撃的な登場をします。

父と対面する幼い道真。
縁起によると、道真はどこからともなく現れ、「あなたの子にしてほしい」と告げました。
道真が人知を超えた存在だと示しています。

学才を発揮した道真はやがて朝廷で重く用いられ、学者としては異例の右大臣に出世します。
しかし、これが嫉妬の種となります。

ついには無実の罪で太宰府に左遷されてしまいます。
荒れ果てた住まいで、道真は京に戻ることなくこの世を去るのです。

その後、京では道真のたたりだと囁かれる災難が重なります。
その一つが朝廷の中心・清涼殿の落雷事件です。
大暴れする雷神は道真の使い。
怨霊と化した道真を恐れた人々は、その怒りを鎮めるために神として祭ることにしました。
こうして北野の地に社が建てられることになったのです。

展覧会では《北野天神縁起絵巻(承久本)》を会期中巻き替えを行いながら、史上初めて9巻全てを公開します。

天神信仰には「武神」としての側面もあることが注目されています。

この南北朝時代の刀には、天神の尊称「天満大自在天神」の文字。

そして裏には「八幡大菩薩」の銘があります。

天神は八幡神という最も名高い武の神と、時に肩を並べるほど武神として信仰されていたのです。

国宝『十一面観音立像』。
かつて北野社の境内にあったお堂に伝わりました。
じつは天神は十一面観音の化身とされていました。
あらゆる苦しみを取り除く観音の慈悲は、道真の悲劇的な生涯と重ねられ信仰されました。

この展覧会は京都国立博物館で2026年6月14日まで開催です。
今回の記事は以上になります。
